「夏色えがおで1,2,Jump!」「Marine Border Parasol」……『ラブライブ!シリーズ』“夏曲”の魅力とは?

 アイドルにとって夏曲は“王道中の王道”だ。不可侵の透明感を持つアイドルが紡ぐ歌声、気温がもたらす解放感と高揚感、この季節ならではの恋模様を聴くたびに「夏がきた」と痛感する。そのため、筆者はアイドルと夏は非常に相性がいい組み合わせだと感じているのだが、中でも特にスクールアイドルと夏曲の親和性は目を引くものがあると思う。それは、等身大の少女たちが抱える熱や、スクールアイドルの限られた時間の中で生きる刹那性を、夏の暑さと過ぎ去る季節の儚さに投影しやすいという点も大きいだろう。

 『ラブライブ!』シリーズの夏曲を野外で聴けたら最高――そんな願いを叶えてくれるであろうライブ『U-NEXT MUSIC FES LoveLive! Series EXPO 2025 STAGE 〜Right now!〜』が、8月14日に『EXPO 2025 大阪・関西万博』にて開催される。夏の野外ライブということで、各シリーズが持つ夏曲披露への期待も高まっている人も多いだろう。そこで、本稿ではあらためて『ラブライブ!シリーズ』の夏曲が持つ魅力に迫ってみようと思う。

 特に注目したいのは、『ラブライブ!シリーズ』の夏曲が描く、少女を突き動かす熱と季節の関係性だ。これを語る上で、2011年にμ'sがリリースした3rdシングル『夏色えがおで1,2,Jump!』は欠かせない。どこまでも遠い青空、気温とともに上がる熱と高揚感、空へ羽ばたいてしまえそうな衝動。そんな喜びを歌った煌びやかなタイトル曲「夏色えがおで1,2,Jump!」と、カップリング曲には、フラメンコ調のサウンドに乗せ、寄せては引く波のごとき情熱的な恋の駆け引きと、その熱が冷めることへの恐ろしさを静かに宿した「Mermaid festa vol.1」を収録。コンテンツが始まって間もない時期にリリースされたにもかかわらず、早くも少女たちが過ごす夏に宿る二面性にアプローチしていた、傑作シングルだ。

【MV Full】 µ's 3rdシングル「夏色えがおで1,2,Jump!」【スクスタリリース記念!】

 本作から一貫して感じるのは、夏は熱を与えてくれる季節であるとともに、「どこから熱がきているのか?」ということをわかりにくくする季節だということ。たとえば冬であれば気温が寒いからこそ、他者から伝わる温もりや自身の内側の熱さなど、熱の出所がわかりやすい。一方で、夏は誰に触れるまでもなく、どこもかしこも熱いため、感じるその熱が自分の内から生まれたものか、外からもたらされたものかを曖昧にするのだ。

 だからこそ、夏の高揚感には、喪失の恐ろしさも秘められている。理由もわからず胸が昂り、それが冷めるのも季節任せ。夏に感じる熱は一過性で、過ぎ去れば終わってしまうかもしれない。そんな夏と熱の関係は、スクールアイドルの曲では、青春という限られた時間や夢見る日々がくれる情熱に投影される。夢に向かって脇目も振らずに走る青春も、いつかは必ず終わる。それは彼女たちが限りある時間を生きる存在である以上、訪れる必然であり事実でしかない。そして、全力で駆け抜ける熱い日々が遠ざかっていく様は、まるで夏が過ぎ去りいつの間にか訪れる秋のようでもある。だからこそ少女たちは夏の高揚と同時に季節の終わりを恐れ、人気のない冷えた砂浜の景色に寂しさを覚えるのだろう。「Mermaid festa vol.1」の、〈あなたから 熱くなれ〉という一節からは、熱をくれる季節が過ぎ去っても、熱い想いだけは途切れないでほしいという切実な願いが感じられる。

【ラブライブ!】「Mermaid festa vol.1」(3rdシングルc/w曲)試聴動画

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