Jay Park、世界を駆け巡る中で日本の活動に懸ける想い レーベル経営やコラボワークまで広がるビジョン

韓国系アメリカ人としてシアトルで育ち、祖国である韓国はもとより、欧米、オセアニア、アジアと世界を舞台に活躍するJay Parkがキャリアで初めてとなる日本語シングル曲「Whenever」をリリースした。今回の楽曲は日本人プロデューサーのNAKKIDと共作。メロウなトラックの上で持ち前の甘やかな歌声が小気味よく跳ねるラブソングとなっている。なぜこのタイミングで彼は日本語シングルを制作したのか。先日、日本公演が行われたワールドツアー『Serenades & Body Rolls』の開催意図や、昨年リリースした8年ぶりのR&Bアルバム『THE ONE YOU WANTED』(アルバムとしては5年半ぶり)の制作経緯、Ty Dolla $ignやAwichらとのコラボエピソードや、新しく立ち上げたレーベル「MORE VISION」の展望など、多岐にわたって活動するJay Parkの“今のモード”を語ってもらった。(猪又孝)
NAKKIDとのコライトで表現した深い愛情
――「Whenever」はデビューから17年のキャリアで初めての日本語シングルとなります。まずは日本語でシングルを作ることになった経緯から教えてください。
Jay Park:たくさんの韓国の歌手が日本で活動していますが、僕は今までそういう機会があまりなかったんです。ただ、2023年に開かれた『WATERBOMB JAPAN』という夏フェスにヘッドライナーとして出たときに、日本のファンの方たちが僕の出演を喜んでくれたり、曲を一緒に歌ってくれる姿を見て、どうして今まで日本で活動してこなかったんだろうと考えるようになって。日本で作品を出したら日本のファンの皆さんがきっと喜んでくれるんじゃないかと思って、今回の曲を作ったんです。

――いつ頃、制作された曲なんですか?
Jay Park:去年の3〜4月頃です。東京に滞在していたときに日本のソングライターやプロデューサーの方たちとお会いしてコライト作業をしたんです。そのときにいろいろと遊びながら作った中のひとつが「Whenever」なんです。
――ということは、まだストックがあるということですか?
Jay Park:たくさんあります。本当はアルバムを作りたかったんですけど、ツアーの準備などで忙しくて完成できなかったんです。たくさん作った日本語の曲の中から周りのスタッフたちも良いと言ってくれた「Whenever」を最初にリリースして、今後は残っている曲も出していければいいなと思っています。
――「Whenever」は日本のプロデューサー NAKKIDがトラックを作っていますが、コライト作業はどのように進めたんですか?
Jay Park:NAKKIDさんとは初対面だったんですけど、音楽の好みが似ているというところからいろいろ話し始めていきました。NAKKIDさんがたくさんトラックを持っていたので、「このトラックがいいんじゃないか」「こういうメロディがいいんじゃないか」っていうふうにアイデアを出しながら作っていったんです。そのとき、僕が先に英語で書いたデモがあったので、それを日本語に変えていきながら曲を作っていきました。
――トラックには2010年代初頭のオルタナティブR&Bを想起させる耽美な雰囲気がありながら、トラップのリズミカルな要素もあったりします。今回はどんな曲調を目指したんですか?
Jay Park:僕は曲を作るときに、こういうジャンルで作ろうとか、こういう曲調にしようというのは決めずに、そのときの自分が感じるままに作っていくんです。今回は日本の皆さんに喜んでもらえる曲を作りたかったし、そのために日本のプロデューサーと作ることにしたので、僕の長所とプロデューサーの長所を掛け合わせて作ろうということだけ考えていました。
――歌詞はラブソングになっていて、困難な状況でも相手のために駆けつける強い愛情を歌っています。どのようなことを考えて歌詞を書いたんでしょうか。
Jay Park:最初に英語でガイドを作ったときに、サビの〈Whenever whenever whenever〉というメロディが自然に出てきて、そのときにバウンシーでありながら感情を揺さぶるような歌を作りたいと思ったんです。歌詞には感動的なメッセージを込めたかったので、「電話をくれたらいつでも会いに行くよ」という内容を最初に英語で書いて、それを日本語に訳してもらったんです。
――2バース目は英語のラップになっていますが、最初に書いた英語詞を使っているんですか?
Jay Park:当初、2バース目はフィーチャリングを入れようと考えていたんです。だから空けてあったんですけど、時間的に間に合わなくてフィーチャリングを入れることができなくて。でも、もともとラップを入れようと考えていたので、僕が最初に書いた英語詞を使うことにしました。今回の歌は長いので、1番と2番で全然違う雰囲気の曲にしたかったんです。なので、シンガーの僕がラッパーの僕をフィーチャリングする感じ。「Jay Park feat. Jay Park」みたいな感じで(笑)、ラップパートを活かした構成にしたんです。
――2バース目の歌詞では舞台が宇宙にまで広がっていきます。「隕石が落ちて地球が滅びそうになっても駆けつけるよ」という内容だから、MARVEL作品のようなヒーロー映画にも合うんじゃないかと思いました。
Jay Park: 確かに(笑)。のちに『アイアンマン』とかのサントラに使われたら嬉しいですね。この歌に軽い内容は合わないと思っていたので壮大に書いてみました。

――レコーディングではどんなことを大事にしましたか?
Jay Park:今回は日本語で歌いましたが、これまでのJay Parkの音楽を知ってる人が聴いても違和感が生まれないように気をつけて、これもJay Parkの音楽なんだというところを重視して歌いました。今回の歌では深い愛情を表現したかったんですけど、それをより伝えたくて最初はピアノでゆっくり始まる構成にしたんです。あのピアノのフレーズは、NAKKIDさんとビートを決める話をしていたときに僕が遊びでピアノを弾きながら「こういうのはどう?」って即興で出たメロディラインなんですよ。
――去年10月にリリースしたニューアルバム『THE ONE YOU WANTED』は、8年ぶりとなるR&Bアルバムでした。今、R&Bモードなんですか?
Jay Park:去年出したアルバムは、リリースする、リリースすると言ってずっと延期を繰り返していたので、R&Bに最近ハマってR&Bアルバムを出したというわけじゃないんです。僕はR&Bもヒップホップも両方好きでよく聴いているし、2010年に出した最初のシングルもR&Bだったけど、それをファンの方は喜んでくれた。僕は自分のことをR&Bを歌うヒップホップ歌手だと思っているので、自然にR&Bに取り組みました。
Jay Parkの“2つの姿”を感じられるツアータイトルの意味
――今年5月からワールドツアーを開催中ですが、ツアーは6年ぶりとなるんですよね。
Jay Park:アーティストだったらツアーをやることが当たり前だと思うんですが、僕は忙しいことを理由にツアーをやらずにいたんです。その間、フェスには結構出ていたんですけど、フェスには出るのにツアーをやっていないなと感じていて。ファンの方も待っていますし、6年間に曲もたくさん出しているので、ここはきちんとスケジュールを決めて準備しようと。それで今回、6年ぶりにツアーを開催することになったんです。
――『Serenades & Body Rolls』というツアータイトルにはどんな思いを込めたんですか?
Jay Park:僕は歌も歌うし、ラップもするし、ダンスもする。歌っている僕が好きな方もいますし、ラップしてる僕や踊っている僕のことを好きな方もいらっしゃると思うので、僕に2つの姿があることを感じられるようにしたんです。今回のライブがどういう内容になっているのか、ファンの方がわかるようにこのタイトルにしたんですよね。
――「Serenades」が歌、「Body Rolls」がダンスを示しているというわけですね。
Jay Park:そうです。

――今回のワールドツアーでは、どんなことを楽しみにしていますか?
Jay Park:僕はライブを頻繁にするアーティストではないので、僕にとっても特別なツアーになりますし、ファンの方にとっても特別なツアーになるんじゃないかと思っています。いろんな国に行けることが楽しみですし、この6年間に出してきた曲でファンの皆さんの前で披露できていない曲も多いので、それを歌えることも楽しみにしています。
――日本でのライブにはどんな印象を持っていますか?
Jay Park:日本であまり活動していないにも関わらず、日本のファンの皆さんは僕の歌を一緒に歌ってくれる。そのことにいつも感動するんです。日本の方々は静かだという話を聞いていたんですけど、以前出たステージはEDMのフェスだったからか、みんなヘッドバンギングしてすごく盛り上がってくれたのが印象に残っていますね。


















