vistlip、18年の旅を経て掴んだ“今”と“未来”を映し出すシングル『BET』――メンバー全員で語る!
vistlipがニューシングル『BET』をリリースした。今作には、全3曲が収録。表題曲の「BET」、そして「OUROBOROS」と「アメフラシ」の3曲である。今年1月のアルバムリリースから約半年で届いたこの作品は、vistlipが今見つめるもののすべてが詰め込まれている。7月7日に行われた結成記念日ライヴ『Bet On The Ouroboros』についてを皮切りに、『BET』がどのようにして誕生したのか、メンバー全員に話を聞いた。(編集部)
今のvistlipを見せるライヴとして成功だった(Yuh)
――先立っての結成日である七夕にZeppDiverCity(TOKYO)での18周年記念ライヴ『Bet On The Ouroboros』を開催しましたが、内容としては恒例のアニバーサリーライヴとしての意味を持っていたのと同時に、ニューシングル『BET』の収録曲たちをいち早く披露する場ともなっていましたね。終盤でのメンバーMCではTohyaさんが感極まるような一幕もありそれも印象的でした。
Tohya:去年の7月7日はひとりずつ喋る時間がなかったのもあり、今年は久しぶりだから事前に何を言おうかちゃんと準備して、いろいろ考えてはいたんですけどね。でも、いざあの場になると、話してるうちに「あんなこともこんなこともあったなあ〜」といろいろなことが次々に思い浮かんできて、感極まっちゃって、「あれ?!」って。だから、もともと言おうと思ってたことは結局あんまり言えなかったですね(笑)。
――だとしても、Tohyaさんの“想い”はあの場にいた方々にきっと届いたはずですよ。
Tohya:ここまでの18年を経てきての今があるんだなということをあらためて感じた時、あのステージに立てたことの素晴らしさを噛みしめたのがまさにあの瞬間でした。
Yuh:今回は『BET』の3曲もやれたし、全体的にシリアスな雰囲気もありつつ、今のvistlipを見せるライヴとして成功だったな思います。ただ、またいつかのタイミングでは最初から最後までハッピーな雰囲気で周年のお祝いをするライヴもやりたいな、って感じたところも個人的にはありました。今年は今年でよかったし、次にやりたいことも見つかった感じですね。
智:うん。よかったと思いますよ。七夕は一年ごとにやる自分たちの集大成という感じなので、この一年でやってきたことが実ったんじゃないかなと。
――「“TOXIC”」で智さんが小道具として使った銃が不発だったこと以外は完璧なライヴでしたもんね。
智:あれ、火薬がダメになっちゃってたんですよ。ここずっと湿度の高い日が続いてたし、たぶん倉庫のなかで湿気っちゃったんじゃないかなあ(笑)。
瑠伊:それあるかもー(笑)。
海:僕からすると、不発だったところも込みで今回は大成功だったなと思ってるんです。あの瞬間、それまでずっと緊張感が漂っていた場の雰囲気が緩んだじゃないですか。あのちょっと抜けた感じが逆によかったというか、やっぱり智って持ってるなと再確認しましたもん(笑)。ここぞっていうところで外さないって、本当にすごいですよ。決めるところは決めつつも、かっこつけすぎないでああいう自然な隙を見せられるっていうのは、この子の圧倒的な強みだと思います。
――たしかに、いい意味で忘れられない一場面になったことは間違いありません。
海:だから、そういう意味ではやろうと思ったことはちゃんと100%やりきることができたライヴになりましたね。特効で使った銀風吹を、あえてLEDの画面に“掃除中”と出しながら片付けるといった場面も含めて(笑)、うまく緩急をつけたライヴになりましたから。もちろん、それを実現できたのはスタッフだったりお客さんたちのおかげでもあるわけで、そのこともあらためて認識することができたライヴでしたね。
――瑠伊さんは『Bet On The Ouroboros』を終えてみて、今どのようなことを感じていらっしゃるのでしょう。
瑠伊:今回はオトナっぽいというか、色気のあるライヴができたかなって思います。映像演出とかも入れつつ、客観視しながら、セットリストの組み方も含めて今までよりも垢抜けた内容にできた気がします。
――18周年ともなりますと、人間で言えば今やvistlipは“成人”にあたるわけですしね。大人っぽさが出てきたというのも、ある意味で当然のことなのかもしれません。ちなみに、『Bet On The Ouroboros』というライヴタイトルを考えたのはいつ頃だったんですか?
智:『BET』ができてからでした。今回のシングルを作ってから、ライヴのタイトルを決めた感じですね。
――今年1月に発表されたフルアルバム『THESEUS』を経ての新音源であることを踏まえた時に、今回の『BET』についてはバンド内でどのような方向性の作品にしていきたいという話をしていたんですか?
Tohya:『THESEUS』を作り終わったあとに、次は夏あたりに何かリリースしようという話が出ていたなかで、智から「こんな感じの曲がほしい」というリクエストを受けたんです。それに応えて作ったのが、表題曲の「BET」でした。テイスト的には重すぎずに、ポップでキャッチー、サビも覚えやすくて、広がった感じの曲がほしい、というようなことを言われた気がします。
智:どの会場でやっても、どういうイベントでやっても、みんなで一緒に歌えるような曲がほしかったんです。vistlipとして、今まで以上にポップなところに行きたかったんですけど、それは途中で諦めました(笑)。
――えっ?! でも、この曲はメロディはとてもキャッチーですし、vistlipとしての王道的な部分も詰まった楽曲に仕上がっているじゃないですか。
智:曲としてはそうなんですけど、自分の歌詞と歌を乗せた時に「思い描いていたところまで行くのは無理だな」って感じちゃったんです。それで、俺は「これを自分の色として受け止めよう」って思ったわけです。
海:とはいえ、「BET」って全然ちゃんと口ずさめる曲になってるけどねえ。ウチにしてはだいぶ“狙った”曲になってはいるんですよ。だけど、智としてはこれよりもっと突き抜けたかったっていうことなんだと思います。
――「BET」には、七夕のライブのタイトルともつながる〈黙って蹲った姿はウロボロスを象る。〉という一節があり、最後は〈なぁ、君は僕に賭ける?〉というフレーズで締めくくられています。それだけに、これは明確な意思をもって書かれたことがわかりますよね。
智:いちばん最初に書いたのが、その最後のところだったんですよ。そこから七夕のライヴのことにもつなげていった感じでした。
――往々して“賭ける”という行為にはリスクが伴うことを思うと、この詞は揺るぎない自信という名の裏付けがあってのものだと受け取れます。
智:そうですね。以前からそのうち詞にしたいなと思っていたウロボロスをモチーフとして連動させて。あと、「BET」とは別に「OUROBOROS」という曲も作りました。意味合いとして、「BET」は恋愛的に受け取ってもらえるようには仕上げて、“再生する”ということを描いてます。
――Tohyaさんはドラマーとして考えた時に、この曲の魅力を引き出すために必要なアプローチというのはどのようなものでしたか。
Tohya:曲を覚えやすくする/聴きやすくするという意味で、特にサビはすごくシンプルなリズムパターンを使うようにました。「Mary Celeste」を作った時の経験が活かせたところでもあって、今回はシンプルでストレートな生音と打ち込みのフレーズを合わせることによって、聴いた感じは複雑にも感じられるんですけど、土台の音をしっかり聴かせることを意識しました。普段だったらもっと細かいことをやりがちなんですが、余計なフィルとかは思い切って捨てました。
――なかなか潔いスタンスですね。
Tohya:そのぶん、「OUROBOROS」でドラマーとして遊ばせてもらってます。この2曲は、そのあたりがとても対照的です。
――瑠伊さんは「BET」の制作では、ベーシストとしてどのようなことを重視されましたか。
瑠伊:デモを聴いた段階で、メロディの立ってる曲だなと感じたので、メロを際立たせるために極力ベースをシンプルにしたつもりです。アウトロは、一旦データを送ったあとに「もっと好きにやっちゃって!」というオーダーをいただいたので、そこだけは自由に遊ばせてもらいました(笑)。
――Yuhさんと海さんは、「BET」とどのように向き合いましたか。
Yuh:曲頭のクリーントーンで音の広がりを出すために、普段はそんなに使わないダブラーっていうプラグインを使ってみました。以前ちょっと遊びで試したことはあって、『THESEUS』の時にもギターソロで使ったりしていたんですけど、ちょうどこの曲にダブラーの響きがハマりそうだなと思ったんですよね。実際にやってみたらいいエア感を出しながら広がりのある空間を生み出すことができたので良かったです。
海:Yuhも言っていた曲の頭で鳴ってるアルペジオのクリーンは、もともとTohyaのデモにも入ってたものだったんです。でも、だからって普通のギターで普通にクリーンで弾くのは違うよなと思って、僕も珍しくエフェクターをいろいろイジりながら音を作っていきました。あとはサビ前のキメ。いかに気持ちよく、いかに心地好く聴かせるかが自分としては大きなポイントでした。フレーズ的にも、弾き方の面でも、聴き手の耳に変に引っかからないように心がけていて、あのキメで切り替わって、一気にサビで広がる流れを作りたかったんです。
――まさに、音による場面転換がなされているのはそのためだったんですね。
海:音が変化することで曲の湿度がガラっと変わるというのは、自分でも感じていて。「BET」は、一曲のなかでコロコロ湿度が変わるので、そこをギターで表現できればいいなと思っていたんですよね。