映画『国宝』原摩利彦 feat. 井口理「Luminance」バイラル急上昇 主題歌にとどまらない静かで力強いバラード

Viral Chart Focus

 Spotifyの「Daily Viral Songs(Japan)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top Songs」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたランキング。同チャートの6月25日付のTOP10は以下の通り(※1)。

1位:REN「DAYBREAK」
2位:原摩利彦 feat. 井口理「Luminance」
3位:吉本おじさん/雨衣「お返事まだカナ?おじさん構文!」
4位:えぶホスPlayers「えぶりでいホスト」
5位:Forrest Frank「YOUR WAY'S BETTER」
6位:IMP.「Cheek to Cheek」
7位:闻人听書_「一笑江湖 - DJ弹鼓版」
8位:INI「DOMINANCE」
9位:SHOSEI「Melak」
10位:TM NETWORK「BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて)」

 6月第4週のトップ10には、世代もジャンルも異なる楽曲がランクイン。JO1の川尻蓮(REN)によるソロプロジェクト楽曲「DAYBREAK」が先週に続いて1位をキープしている。繊細な感情と洗練されたダンスパフォーマンスが支持を集め、安定した人気を維持しているようだ。そして今週、最も注目すべき動きを見せたのが2位に初登場した「Luminance」だ。原摩利彦による作曲、坂本美雨の作詞、そしてKing Gnuの井口理によるボーカル。映画『国宝』の主題歌であるこの楽曲は、映画の話題性とともに急速にバイラルチャート上位へと躍り出た。

『国宝』本予告【6月6日(金)公開】|主題歌「Luminance」原摩利彦 feat. 井口 理

 映画『国宝』は、架空の歌舞伎俳優・立花喜久雄の波乱の生涯を描いた作品である。吉沢亮演じる主人公の美学と孤独、そして芸への献身が、多くの観客の胸を打っている。『第78回カンヌ国際映画祭』の「監督週間部門」にも選出され、国内外から高い評価を受けるなかで、主題歌「Luminance」もまた、作品とともにその存在感を放っている。

 作曲を担当した原はこれまでも映画音楽やアートプロジェクトを手がけてきた音楽家であるが、「Luminance」ではとりわけ情感と静寂を大切にした音作りを行っている。ミニマルなピアノのフレーズ、浮遊するストリングス、そして空間を感じさせるフィールドレコーディング音。それらの上に乗る井口の声は、まさに唯一無二の存在である。

 井口のボーカルは、息遣いすらも表現の一部として響く。音の隙間を繊細に埋めながら、語りかけるように、あるいは祈るように言葉を紡いでいく。冒頭の〈ああ ここは/痛みも恐れもない〉というフレーズには、舞台上の主人公が悟りの境地に達したかのような静寂が宿っている。そして〈あなたとひとつに/そう 永遠に〉という終盤のフレーズでは、喜久雄という存在が舞台を超え、芸の中に生き続ける存在へと昇華されていく様が暗示されている。

 楽曲全体に流れるのは、“光”である。タイトルの「Luminance」は“輝度”を意味し、舞台のスポットライトを象徴していると同時に、主人公が放つ内的な輝きとも解釈できる。原はこの曲についてサントラリリース時のコメントで「喜久雄が浴びたスポットライトと彼が放ち続ける光の量です」(※2)と語っているが、それは単なる美しさではなく、孤独や苦悩を乗り越えてなお、人々の記憶に残る芸の真髄である。また、作詞を手がけた坂本は「主人公の喜久雄が幸せだったらいいなと思った」とコメントしており、詞には救済と祝福のニュアンスが込められているのだろう。舞台という孤独な場所でただ一人、芸と向き合ってきた男への優しいまなざしがそこにはある。

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