ILLIT、マカロニえんぴつ、羊文学、m-flo loves ZICO,eill、Superfly、Kis-My-Ft2……注目新譜5作をレビュー

New Releases In Focus

 毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回はILLIT「Billyeoon Goyangi (Do the Dance)」、マカロニえんぴつ「静かな海」、羊文学「春の嵐」、m-flo loves ZICO,eill「EKO EKO」、Superfly「メロディー」、Kis-My-Ft2「CHEAT」、の6作品をピックアップした。(編集部)

ILLIT「Billyeoon Goyangi (Do the Dance)」

ILLIT (아일릿) '빌려온 고양이 (Do the Dance)' Official MV

 昨年3月にデビューしたガールグループ、3rdミニアルバム『bomb』からのタイトル曲。最初に聴こえてくるオーケストラは、日本の漫画作品が原作の1989年公開のアニメ作品『ファイブスター物語』サントラから「優雅なる脱走」の一部をサンプリングしたもの。ずいぶん渋いチョイスをする作曲者は誰かと思って調べてみれば、作詞作曲に10名以上が参加していて驚く。複数名のコライトが珍しくない時代だが、ここまで長いクレジットは初めて見た。かくもポップ&キュートなフューチャーファンク風にまとめた制作陣に敬礼。英語と韓国語、フランス語までが入り混じった歌詞は魔法の呪文の連なりのようでもあり、ダンスも含めて思わず真似したくなる人が続出しそうだ。(石井)

マカロニえんぴつ「静かな海」

マカロニえんぴつ「静かな海」MV

 デビュー10周年イヤーの集大成、先週末に横浜スタジアムで行われたワンマンライブにてサプライズ発表された新曲。浮かれたところのない、静かな強さを持ったナンバーで、無駄のないバンドサウンドがじわじわと熱を帯びていく様子はかなりエモーショナル。〈救ってくれるのは あなただけだった〉〈変わっちゃいないのさ、なんにも なぁにも〉という歌詞は、メンバー4人の関係性、もしくはバンドとファンの距離だろうか。ヒット曲を連発し世の中を掻き回すのが売れっ子の宿命だとすれば、はっとり(Vo/Gt)が現在地を〈戻らないように立っている静かな海〉と表現しているのはとても興味深い。実直な人柄までが伝わってくるような一曲。(石井)

羊文学「春の嵐」

羊文学「春の嵐」

 2024年4月の横浜アリーナ公演の前後から、インタビューの場で、バンド活動に対する葛藤にも似た感情をポロッと口にすることがあった塩塚モエカ(Vo/Gt)と河西ゆりか(Ba)。新曲「春の嵐」には、そんな彼女たちの心象が包み隠すことなく表現されている。穏やかな春の風を想起させるギターフレーズ、柔らかい手触りのドラムのキック、抑制の効いたベースラインが混ざり合うアンサンブルのなかで塩塚は、〈存在の証明をどうやってしていいか/わかんないが苦しいよ〉と歌う。理想と現実とのギャップと言えば安易すぎるかもしれないが、頭のなかで思い描く“あるべき自分”に手が届くことは決してなく、それでも日々を生きていく。そんな思いを抱えたすべての人にとってこの曲は、切実な共感とともに受け止められることになるだろう。(森)

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