夏川りみは“歌”そのものを象徴する存在に 25周年を経て、ストイックかつ軽やかな活動で届ける驚き

 昨年歌手デビュー25周年を迎えた夏川りみが、節目を締めくくるアニバーサリーアルバム『うた』を6月18日にリリースした。このあまりにもストレートなアルバムタイトルが象徴する通り、彼女が幼い頃から変わらず愛し信じ続けてきた“歌”への強い思いが込められた、渾身の1作に仕上がっている。

 1999年のデビュー以来、25年以上にわたって実直に歌を届け続けてきた夏川。10代の頃に別名義で活動していた演歌歌手時代を含めればその年数はさらに伸び、プロのシンガーとして足かけ36年ほど活躍してきたことになる。それだけのキャリアを誇りながらも彼女の歌に対する情熱はとどまるところを知らず、近年に至ってもなお、これまでにない新たな領域へまでその活躍の場を拡大中だ。アルバムについて語る前に、最近の彼女の活動をざっと振り返ってみよう。

 直近で最も注目すべきトピックといえば、YouTube動画へのコラボ出演だろう。中でも今年3月に公開されたハラミちゃんの「本人登場ドッキリ」企画に参加した動画は300万回再生を超える反響を呼び、6月現在も400万回に迫る勢いで再生回数を伸ばし続けている。

【神回】沖縄のショッピングモールで「♪涙そうそう」を弾いてたら突然夏川りみさんご本人が乱入し生歌唱!現場騒然そして通行人が号泣の感動の結末に...【沖縄ストリートピアノ🌴】

 ほかにも、ものまねアーティスト・松浦航大の公式YouTubeチャンネルでMrs. GREEN APPLE「点描の唄 feat.井上苑子」をデュエットしたり、『しらスタ【歌唱力向上委員会】』の公式YouTubeチャンネルにゲスト出演して懇切丁寧な「涙そうそう」の歌唱法解説をしたりと、「夏川りみって、こういう場に出てくる人なんだ?」という新鮮な驚きを大衆に提供した。

『点描の唄』夏川りみさんと歌ってみたら最高のハーモニーに...!!!
「涙そうそう」の歌い方を”夏川りみ”さんご本人と一緒に解説する神回。

 今年3月から5月にかけては、全国8カ所のショッピングモールを巡る自身初のモールライブツアー『詩、歌、唄』を開催。ショッピングモールという日常空間に夏川の奇跡的な歌声がこだまする非日常的な光景は、買い物客らを想定外の夢見心地に導いたことだろう。また、近年に限った話ではないが夏川は精力的な海外公演も継続的に行っており、現在開催中のライブツアー『夏川りみ コンサートツアー“たびぐくる” 2025』は、中国・成都公演からスタートを切った大規模なワールドツアーとなっている。

 上記のモールツアーのように、そもそもこのキャリアで「自身初」の枕詞がつく活動を当たり前のように行っていること自体が驚くべきことである。昨年の『FUJI ROCK FESTIVAL』初出演などもそうだが、前述したYouTube出演なども含めて「歌を届けられるのならどこへでも」という彼女のストイックさとフットワークの軽さを至るところから感じ取ることができる。

 そんな彼女のニューアルバム『うた』は、新曲3曲、カバー曲3曲、ライブ音源4曲の全10曲を収録。必ずしも書き下ろしのオリジナル曲にこだわらない姿勢には「歌は歌い継がれていく(べき)もの」という強い信念が見て取れるほか、過去の代表曲の多くをカバー曲が占める夏川のアーティスト性を象徴した内容でもある。それもこれも歌の力を信じているからにほかならず、この構成自体がすでにアルバムタイトルをよく表しているとも言えそうだ。

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