インドネシアの音楽シーンが気になる 『NANO-MUGEN FES.』や「YouTube Music Night」での新たな出会い
土井コマキのアジア音楽探訪 Vol.16
今、インドネシアが気になっています。先月ご紹介(※1)した『MUSIC AWARDS JAPAN 2025』「最優秀アジア楽曲賞」にノミネートしていたジャカルタのシンガーソングライター・Bernadyaも素敵でしたし、ASIAN KUNG-FU GENERATION主催『NANO-MUGEN FES. 2025』も、横浜とインドネシアのジャカルタでの開催が計画されていました。残念ながら横浜だけの開催になったのですが、ジャカルタから2組のアーティストが来日し、横浜公演に出演しました。私は初日しか参加できなかったのですが、とてもいいバンドなので、再来日やジャカルタでの開催を祈念してピックアップしようと思います。
まずは、初日に登場したVoice Of Baceprot。バンド名は「うるさい声」という意味。Firda Marsya Kurnia(Vo/Gt)、Widi Rahmawati(Ba)、Euis Siti Aisyah(Dr)からなるガールズメタルバンドです。生で触れたパフォーマンスは、太くヘビーで痺れました。「Put The Gun Down」といったドストレートな反戦ソングなど、社会に対するまっすぐなメッセージにも心打たれます。誰もが思っているはずなのに、日本ではこういう内容をストレートに音楽にするバンドはなかなかいませんし、力強い彼女たちが眩しかったです。「ヒジャブを身に着けた若い女性が演奏するヘビーメタル」というセンセーショナルな宣伝文句でチェックする人も多いかもしれませんが、文字で見るよりも遥かにパワーがあり、平手打ちを喰らうような体験でした。世界中のヘビーロックファンが夢中になるのも当然だなと思いました。ライブの感想を誤解を恐れずに一言で言うと「Rage Against the Machineかと思った!」。
ライブの後、楽屋で会った3人は、156cmの私よりも身長が低くて、こんな小さな女子からどうやってあのパワーが……!? と、もう一度衝撃を受けたのでした。そうそう、彼女たちがまだティーンの頃にバンドは結成されたのですが、その時に先生が「うるさい声」と名付けたというのにも納得です。うるさいのは音楽性だけではなく、3人で話している様子が日本で言うところの「箸が転んでも可笑しい」状態で、かわいくてうるさかったんだろうなと想像します。以前、ASIAN KUNG-FU GENERATION(以下、アジカン)のドラムの伊地知潔さんに、普段の彼女たちの印象を尋ねたら「チャットモンチーみたいだよ」と言われたのですが、確かに! 楽しそうにおしゃべりする3人はかわいかったです。
ホームページのJOURNALのコーナーには、楽曲に関するプレスリリースもしっかり公開されていて、曲の持つメッセージをちゃんと届けたいのだとわかりますので、ぜひご覧ください(※2)。
さらに、Rage Against the MachineのTom Morelloとの対談も発見! Voice Of Baceprotの3人がキャーキャー言っててすごくかわいいし、Tom Morelloがいい話をしてるのでこちらもぜひ。
次は2日目に出演したThe Adams。見たかったなぁ。アジカンのゴッチ(後藤正文)から、私のラジオにレコメンドメッセージをもらったのですが、ゴッチが現地のレコードショップでアルバムを買ってからファンになって、出演が決まったというバンド。「アジカンと同じ頃に別の場所で、同じような音楽を聴いて、同じような活動をしていたんだな」というコメントにすごく納得のいく音楽性です。“インドネシアのWeezer”というような紹介もどこかで見たのですが、個人的には“インドネシアのアジカン”じゃないかなと思う。『SYNCHRONIZE:FEST』というジャカルタで毎年10月に開催される国民的な音楽フェスの映像を観ると、まさに日本のフェスで見るアジカン! お客さんのノリも! きっとみんな好きになると思いますよ。
メンバーはArio Hendarwan(Vo/Gt)、Saleh Husein(Vo/Gt)、Gigih Suryoprayogo(Vo/Dr)。2002年に、ジャカルタ芸術大学で結成。私生活が忙しくなり、休止していた時期もあるそうなのですが、WeezerやBloc Partyとも共演していて、フェスティバルの常連。インドネシアのインディーロックシーンの星なのでしょう! 動画を漁っていると彼らの曲をカバーしている動画も出てくるし、G-SHOCKのライブセッションシリーズを観ると、突出した再生回数です。
昔のMVを観ても、ツボを突かれるポップな仕上がりで、早く出会いたかったの一言!
『NANO-MUGEN FES. 2025』のテーマソングとしてアジカンが書き下ろした新曲「Makuake」のThe Adamsによるインドネシア語カバーバージョンもめちゃくちゃいい。この曲はゼロからというよりマイナスからの再スタートの曲だと私は思うので、結成して20年を超え、その間には休止もあって、メンバーチェンジもあって、それぞれの人生にもきっと悲喜交々あったであろうThe Adamsがカバーしていることに、胸熱なのです。絶対にいつか生でライブが観たいです。