ヘルニア、米津玄師らへの憧れ 五十嵐ハル、“元警察官”がネガティブを武器に切り開く音楽キャリア
米津玄師、RADWIMPS、B'zら五十嵐ハルを形成した音楽作品
ーーではここからは、五十嵐さんにお持ちいただいたルーツアイテムについてお聞きしたいと思います。まず先ほどお名前があがったヘルニアの『BLOOM』。
五十嵐:ヘルニアさんはVOCALOIDを使ったボカロ曲を作る人なんですけど、ほとんどが、「こんな自分、生きてても何もないけど頑張るか」みたいな曲で。機動隊にいる頃は特にこのアルバムが支えになってて、いつも泣きながら聴いてました。
ーー米津玄師さんの『diorama』については?
五十嵐:VOCALOID時代(ハチ名義)は知らなかったので、米津さんのことは、米津玄師名義になってニコニコ動画で公開された「ゴーゴー幽霊船」で初めて知りました。一体誰なのか、どんな人なのか何もわからないけど、とりあえず神曲生んでいる人いるなと思って気になったんですよね。で、次に公開された「vivi」という曲に衝撃を受けて、今でもよく聴いてます。その2曲も入っているこのアルバムは、しんどかった警察官の時はもちろんですけど、いろんな時期に聴いて支えられてました。
ーーこの2アーティストの存在は、五十嵐さんの心を支えてくれただけでなく、その後の創作活動にも刺激を与えたのではと思いますがいかがですか。
五十嵐:ヘルニアさんと米津さんだけじゃなくて、今回持ってきた4つのアルバムとかアーティストからはすごく影響を受けてると思います。しんどいなあってことを歌うヘルニアさんの歌詞には、そういう曲の作り方もあるんだなって影響を受けて自分なりのしんどさを形にすることにも繋がったし、米津さんも結構しんどいみたいな歌詞とか書かれてたりしますからね。失恋系の歌詞を書くことも多いんですけど、それはたぶんB'zを聴きまくっていたからだろうなって思います。ハッピーな曲より、ちょっとマイナスの部分を持っている曲の方に惹かれることが多かったんですよね。
ーーB'zは『The Best Treasure』をお持ちいただきましたが、これはご自分で購入されたものなんですか?
五十嵐:これはたぶん、もともと親が持っていたものだと思います。自分でもB'zのCDは買ってましたけど、このベストアルバムをひたすら聴いていたので今回はこれを持ってきました。
ーーそしてRADWIMPSのライブ映像作品『青とメメメ』。
五十嵐:RADWIMPSは、最初のアルバムから全部聴き倒してます。たぶん一番聴きまくってるアーティストだと思いますね。しんどい時の曲も失恋の曲も、自分の欲しい音楽が大体RADWIMPSには揃っているので。
ーーたくさんの作品がある中で、この作品を選んだ理由を聞かせてください。
五十嵐:このライブに行ったんです。これは震災の2年後に宮城で行われた野外ライブなんですけど、自分も地元が福島でいろんな影響を受けてましたから、このライブを生で見て感動したんですよね。すごかったんですよ。ライブが始まる直前に土砂降りだった雨が止んだんですけど、(野田)洋次郎さんがMCで、さっきの雨はここに来たくても来れなかった人たちが雨になって来たんじゃないかと思うっていうようなことを言ってて、泣きました。セトリもめちゃくちゃよくて、この映像は特別だなって思いますね。この場所に居れてよかったなって思ってます。
ーーこういう規模の野外ライブをやってみたいというお気持ちもありますか?
五十嵐:あります。当時の自分は見る側でしかなかったんですけど、今はやってみたいなって思います。ドームとかアリーナとかでやるのもすごく憧れてますけど、こういう野外もぜひやってみたいなって。目標はいっぱいあるので、一つずつ達成できたらなと思ってます。
ーーそういうライブをイメージすることで、作る楽曲にも変化が生まれたりするのかなと思うのですが。
五十嵐:確かにライブで映えるというか、盛り上がるような曲も作りたいなっていうのはありますね。「センチメンタルヒーロー」という曲の最後はちょっとそんな感じですけど、コール&レスポンスがめちゃめちゃ目立つような曲なんかもいつか作ってみたいなとは思ってます。
ーーちなみに、最近何か曲作りにおいて変化を感じるような出来事はありました?
五十嵐:曲作りの変化というか、生活の変化というか。ちゃんと寝て、運動とか筋トレとかすればポジティブな気持ちになれるのはわかってるんですけど、自分は生きていても恋愛していても、しんどいなと感じた時に歌詞が浮かんでくるから、あえてそれをしないようにしてるんです。最近は昼夜が逆転してて朝6時ぐらいに寝てるんですけど、やっぱり夜中に起きてるとちょっと変な感覚というか、自律神経が乱れて「はぁ……」みたいになるんですよ。もともとネガティブですけど、ネガティブな感情になりやすい環境に自分を置くようにしてるんですよね。
ーー職業病じゃないですか。
五十嵐:音楽やってなかったら絶対朝ちゃんと起きて散歩してとかの生活の方がいいんでしょうけど、自分の仕事的には、悪いことだけではないっていう謎のメリットも生まれているというか。