新たなヴィジュアル系の祭典『MASKED』開催 “美学”に共鳴する全36組が作り出した混沌と熱狂
ダンサブルな4つ打ちビートで会場を揺らしたコドモドラゴンに続いて、7月に同ゾーンでの主催フェス『バグサミ2025』を控えるBugLugがスタンバイ。フェスを通してシーンを盛り上げ続けてきた彼らだからこその想いもあるのだろう。「ひとりごと。」のポエトリーリーディングで始まるという意表を突いたオープニングで一気に引き込むと、気合十分のエネルギッシュな楽曲を畳みかけていく。ボーカロイドをフィーチャーした「寄生Kiss」、疾走ナンバー「排水溝で一気して」など新曲群の威力も抜群。振り付けが印象的な初期曲「しこたま」で大暴れしたあと、一聖は「物足りねえなー! また遊びに来てください、待ってます!」と笑顔を見せた。
その後、結成18周年を迎える摩天楼オペラが壮大なスケールで会場の色を塗り替え、全員軍服風衣装でキメたRAZORがさらに濃密な世界を作り上げる。いずれも絶対的ライブバンドの矜持を示し、会場全体の温度が上がっていくのをひしひしと感じた。
登場BGMを遮って「さっさと始めさせろー!」とステージに踊り出た甘い暴力は、コールやヘドバン、ジャンプを巻き起こすキャッチーな楽曲を次々投下。一切勢いを緩めず、フェス終盤戦への火付け役を担ってみせた。
ふと気づいたのは、多彩なバンドが並び立つ会場の空気が、フェスというよりむしろ“対バン”に近いということ。出演バンドは全員「俺たちがいちばんだ」というオーラを漂わせ、ほかのバンドが会場を盛り上げるたびに闘争心を燃やしていたのではないだろうか。すでに大規模なワンマンライブを成功させているバンドたちも、いつもとは違う気合が漲っていたように思う。
今年、日本武道館公演を経験したキズも例外ではない。傘をさして現れた来夢を中心に、メンバー全員がオリジナリティ溢れるヴィジュアルでフロアを威嚇。自身のルーツを刻んだ意欲的な新曲「R/E/D/」を1曲目に、リアルな血が通った歌と演奏でオーディエンスを圧倒していった。「地獄」「傷痕」「ELISE」とキラーチューンを連発し、フロアは文字通りの“地獄絵図”と言うべき狂騒状態へ。脅威的なヘヴィネスとともに来夢ののびやかなハイトーンが圧巻で、未発表曲のバラード「My Bitch」の切ないメロディも胸に深く沁みる。来夢が「これが俺たちのヴィジュアルロックだ!」と宣誓した「鬼」のあと、その想いに応えるように「リトルガールは病んでいる。」でのシンガロングが力強く響きわたった。
数々の熱演を経て、O-EASTの大トリを務めるのはΛrlequiΩ。積極的にフェスやイベント出演を重ねている彼らにとっても、この1日で受けた刺激は特別に大きかったはずだ。いきなり最新曲「血ヲ通ワセロ、ソノ命全テニ。」の硬質なビートを解き放ち、中央の演説台に君臨する暁(Vo)が「『MASKED』、かかってこい!!」と焚きつける。
アグレッシブに突き進む「墓穴」から、メロディアスな「消えていくオレンジの空へ」など幅広い楽曲を届けつつ、そこに共通するのは、苦しみ迷いながらも自分の足で歩いていく生き様。暁自ら「『MASKED』を作ってくれた全員に拍手したい」と提案して感謝を述べる場面もΛrlequiΩらしく、続くバラード「白紙の手紙」がひときわ優しく響いた。鉄板の「ダメ人間」を挟み、暁が「一緒に行こう!」と贈ったラストナンバー「Eclipse」に渾身の想いを込め、堂々フェスを締め括った。
オープニングからエンディングまで、客席はもちろんステージ上にもヴィジュアル系への愛と誇りが溢れていた『MASKED』。終演後には、10月12~14日渋谷ストリームホールでの『MASKED ハロウィン』、さらに2026年5月22~23日の『MASKED 2026』開催までもが発表され、大歓声が湧いた。ヴィジュアル系の歴史に加わった新たな1ページとして、この場所で生まれた熱がさまざまなかたちで伝播していくことを願ってやまない。
■公演情報
『MASKED ハロウィン』
日程:2025年10月12日(日)、13日(月・祝)、14日(火)
場所:渋谷ストリームホール
『MASKED 2026』
日程:2026年5月22日(金)、23日(土)
■関連サイト
オフィシャルサイト:http://www.masked-v.com/
YouTube:https://www.youtube.com/@masked-vkei
TikTok:https://www.tiktok.com/@masked_vkei
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