「ひとつの言葉で判断できない曲ができたらいい」（吉岡）

――吉岡さんが懐かしい景色を思い浮かべながら書いたというこの曲ですが、皆さんそれぞれが「懐かしい景色」と聞いて思い浮かべるのはどんな場所ですか。

水野：僕は吉岡と同じ景色を見てきた感じではあると思うんですけど。大山もそうだし、意外と富士山が見えたりする地域なんですよ。海老名や厚木のいいところって、駅前は結構開発されていて、最新の映画とかも観れるんですが、ちょっと離れると田んぼが広がっていて通学路に牛がいたりする、かなりの田舎。そのどっちもあるバランスの中で10代を過ごせたのはよかったのかなって思いますし、同じような景色を見てきた人とグループを組めたので、それもラッキーだったなと思います。

佐野：私もちょっと行くと田んぼがあるようなところで子供時代を過ごしていました。近くに納豆工場があって、朝その前を通ると豆を炊いているいい匂いがしてっていうのが懐かしい景色です。これは良成とも共通しているところなんですけど、通っていた小学校が近所ではなかったので、学校から帰ってきてもひとりぼっちだったんですよ。周りの子たちは友達がいるけど、公園に行っても誰も知り合いがいないから入れなくて。そうしているうちに公園にも行かなくなって、家でずっとテレビを観ていたり、絵を描いたり、だから懐かしい景色の中にはいつもひとりぼっちな寂しい感じがあります。

佐藤：そうだね。遊穂は団地で、私も元祖タワマンみたいなところで育ったので、同世代の子供はすっごいいるんだけど、みんな自分とは違う同じ小学校に行ってて、自分だけちょっと離れたところの小学校に行ってたから、寂しかったですね。

佐野：みんなは近所に友達がいていいなっていうのが、もう当たり前になっちゃってましたね。私の人生で近所に友達がいることは永遠の憧れなんです。

佐藤：今はすごくご近所の友達付き合いを大事にしてるもんね（笑）。だから同じ景色ではないんだけど、僕たちは似たような環境の中で子供時代を過ごしたんだと思います。

ーーそうなんですね。それはハンバート ハンバートの音楽の中にあるノスタルジックな切なさに繋がっているのかもしれないですね。「夕焼けが生まれる街」では〈私はひとり 街を出た〉というフレーズも印象的ですが、吉岡さんがこの歌詞に込めた想いはどういうものですか。

吉岡：これも自然と出てきたフレーズなんですけど、自分の足で歩いていきたいという決意表明なんですよね。私自身、地元から東京に出てきて今を過ごしていて。その夕焼けを見た時に子供の頃の自分を思ったのと同時に、大人になった今の自分も感じていました。子供の頃に小さなことに傷ついていた自分がいたとしても、今は自分の足で歩いていくことができるというポジティブさを最後に入れたかったのかもしれないです。いろんな想いをした子供時代があったから今があるよねって、自分をもう1回受け止めるような意味もあるのかな。小さかった自分と今の自分が交差してるんですけど、今の自分はここに立ってるぞという誇らしい気持ちも曲に詰め込めたんじゃないかなと思いました。

佐野：うん、故郷に後ろ髪を引かれているような想いも、そしてこの背中を見送ってる人の寂しさも入っているような感じがしますよね。

佐藤：でも、こうして自分で作った曲を自分で言葉にするのって難しいですよね！　僕も曲を作る時に、すごく無意識で出てきちゃってることが多いので。聖恵さんもきっとそうなんだろうなと今、お話を聞きながら思いました。僕と一緒だなって（笑）。

吉岡：いや本当そうなんです（笑）。どこをどうやってこういう曲になったのか自分でもよくわからないことが多いですし、ひとつの言葉では断定できないような揺らぐ気持ちがあって。特にこのアルバムって、黒とか白とかってはっきりと物事を分けたり考えたりするんじゃなくて、その中間のグレーもあるよねっていうのがひとつのテーマとしてあったんです。なので私もこの曲を作る時に暗いとか軽いとかひとつの言葉で判断できないような曲ができたらいいなと思っていました。

――割り切れない気持ちはアルバムのテーマにも繋がっていくんですね。

水野：そうですね。例えば、Aの意見の人、Bの意見の人って、はっきりしすぎているからぶつかり合う。どっちかわからないことを許さないみたいな風潮が辛いよね、“あそび”がないねって感じていて。そこで今回の『あそび』というタイトルが決まった時に、チームのみんなにも黒と白だけじゃないし、明るい曲とか暗い曲とかどっちとも取れないことだって大事だよねって話をしたんです。

吉岡：だからこの「夕焼けが生まれる街」のことを佐藤さんにお伝えする時も、「ただただ温かい曲だとも言い切れないんです」みたいなことをお伝えしたんです。

佐藤：そうでしたね。明るいような前向きなような、でもそれだけじゃない。それが聴く方にも感じる幅を持たせてくれるんだと思います。

男女ユニットならではのコミュニケーション

――では最後に、いきものがかりとハンバート ハンバートはどちらも男女2人からなるユニットですが、お互いを尊重しながら音楽活動をするために「やること／やらないこと」だったり心がけていることは何かありますか。

佐藤：僕らは夫婦でもあるので役割分担みたいなものは決まっています。毎日コーヒーを淹れるのは決まって僕なんです。

佐野：私はコーヒーの淹れ方がわかんないです（笑）。

佐藤：お湯注ぐだけじゃんとか思うんですけど。

水野：あはははは。急に夫婦に見えてきました（笑）。生活と音楽が地続きってどういう感じですか？

佐野：歌でも演奏でも、すぐ練習できるところはいいところかもしれないですね。でも遠慮してる時もあるよね、「曲聴いてほしいんだけど、今、忙しい？」みたいに（笑）。

水野：うちもお二人と同じく役割分担は、はっきりしてるかなと思いますね。この場ではこの人が一番に尊重されるべきだ、みたいなのがはっきり分かれていて。歌の部分ではもちろん吉岡だし、曲作りにおいては僕だし。ライブのパフォーマンスでも、なんとなく全体の構成とか考えるのは僕なんだけど、実際にパフォーマンスをどうするかは吉岡がこうしたいと言えば、じゃあみんなでそれをどう実現しようかって動いていくし。その都度、主役を切り分けている感じはします。

吉岡：得意分野が違うから、自然とそうなりますね。私ができることは少ないなと思ったりするんですけど、歌はしっかり担当するよみたいな感じで。あとは「すごいな」と思ったら「すごいです」ってちゃんと伝えるようにはしています。

――言葉で伝え合うのが大事だと。

水野：そうですね。最近は褒め合うようになってきましたね。お互いにちょっと大人になってきたのかもしれない。

吉岡：送られてきた曲を聴いて、よかったらすぐに「この曲すごくいいよ！」とか送るようにしています。

水野：どのスタッフより早く返信来ますから。僕も歌入れの時に「歌上手いね！」って言いますよ。

吉岡：あはははは。2人になったことで余計に、1人が言ったことに対して1人が反応するという、“コミュニケーションしてこそ前に進んでいく”というのがより顕著になったので、それも今の新しい形なのかなと思います。

佐藤：そこは僕らにも通じてるところがありますね。

◾️いきものがかり リリース情報
11th アルバム『あそび』
4月30日（水）発売
配信中：https://erj.lnk.to/UVr2ng

●初回生産限定盤（CD＋Blu-ray）
購入：https://erj.lnk.to/asobi_CD1
品番：ESCL-6087〜6088、POS：4547366735031
価格：¥6,050（税込）
スリーブケース仕様、いきものカード071/072封入
●通常盤（CD）
購入：https://erj.lnk.to/asobi_CD2
品番：ESCL-6089　POS：4547366735048
価格：¥3,520（税込）
いきものカード071封入(初回仕様)

【CD収録内容】
M1 彩り
M2 ドラマティックおいでよ
M3 晴々！
M4 会いたい
M5 自画像meets あそび ゆう　
M6 運命ちゃん
M7 あの日のことmeets 蓮見翔　
M8 夕焼けが生まれる街 meets ハンバート ハンバート
M9 青のなかで
M10 Challenger
M11 うきうきぱんだmeets fox capture plan　
M12 遠くへいけるよmeets 松下奈緒
[Bonus Track]
M13 コイスルオトメ – From THE FIRST TAKE
M14 気まぐれロマンティック – From THE FIRST TAKE

【初回生産限定盤 Blu-ray 収録内容】
「彩り」Music Video＆Behind The Scenes
「運命ちゃん」Music Video＆Behind The Scenes
「青のなかで」Music Video＆Behind The Scenes
「晴々！」Music Video＆Behind The Scenes
「ドラマティックおいでよ」Music Video＆Behind The Scenes
「会いたい」Music Video
「Challenger」Music Video                             
『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 in HITACHINAKA』
ブルーバード / 気まぐれロマンティック / キミがいる / 風が吹いている / うるわしきひと / じょいふる / コイスルオトメ

◾️いきものがかり ライブ情報
『いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! 2025 〜ASOBI〜』
6月7日（土）［東京］有明アリーナ ※sold out
6月8日（日）［東京］有明アリーナ
6月28日（土）［愛知］Aichi Sky Expo
6月29日（日）［愛知］Aichi Sky Expo
7月9日（水）［大阪］大阪城ホール ※sold out
7月10日（木）［大阪］大阪城ホール
7月19日（土）［神奈川］横浜アリーナ
7月20日（日）［神奈川］横浜アリーナ sold out
詳細：https://ikimonogakari.com/tour2025/

◾️ハンバート ハンバート ライブ情報
『秋の野音公演「ハンバート家の秋祭り2025」』
9月6日（土）東京・日比谷野外大音楽堂　開場17:00/開演18:00
10月12日（日）大阪・大阪城音楽堂　開場16:00/開演17:00
詳細：https://humberthumbert.net/live

いきものがかり 公式サイト
ハンバート ハンバート 公式サイト

＜いきものがかり衣装クレジット＞
水野良樹
・ジャケット／SARTO（シアン PR 03-6662-5525）
・シャツ／meagratia（PR.ARTOS 03-6805-0258）
・パンツ／CINOH（モールド 03-6805-1449）
吉岡聖恵
・ワンピース、スカート／n'OrLABEL（シアン PR 03-6662-5525）
・ビスチェ／meagratia（ティーニー ランチ 03-6812-9341）
・イヤリング／Tzumei handmade accessory：https://tzumei.base.shop/4
・2連のリング／yuu：https://selectyuu.thebase.in
・リング／éclat douceur（@eclatdouceur）：https://minne.com