The Ravensが示すロックバンドの存在意義 『Ghost Notes』に宿る生の鼓動、ライブハウスで紡がれた“歓び”

 ゴーストノートとは演奏する中で鳴らされる、譜面に表すことができないほど小さくて不確かな音のことだ。それ自体は意味を成さないし、その存在が省みられることもない。だが、ゴーストノートは演奏のニュアンスやグルーヴを表現する上では欠かせないものであり、それがたくさん集まることで音楽は豊かになり、色を帯び、誰かの心に届くものになる。それは人間も、バンドも同じだ、とこのアルバムは言う。一人ひとりは日々の中で簡単に打ちのめされそうな小さな存在であっても、1つに集まり、同じ感情を共有することで、あらゆるネガティブをひっくり返すようなエネルギーを生み出すことができる。その作用や意味にひたすらに自覚的に、真摯に向き合って生まれたのがこのアルバムなのだろう。

 後半、「Pest Control」の壮絶で大胆なアンサンブルやラウド&ハードに突っ走る「Red Pill」ではスキルフルなメンバー5人の音のぶつかり合いがとんでもない熱を生み出していく中、アルバムはクライマックスに突入していく。「Come As U Are」と「ミルフィーユ」。とても美しく優しいラスト2曲で歌われるのは、オーディエンスの人生を励まし、救うまっすぐなメッセージだ。〈ここで逢う時は 君の声で歌って〉という「Come As U Are」でも、〈遊べ 泣きじゃくれ 抱き合って/歌声を惜しみなく上げて〉と歌う「ミルフィーユ」でも、The Ravensはすべてを受け止めた上で今ここにある“生”を全力で肯定する。アルバムを通して「ミルフィーユ」に辿り着いた時の感情が溢れてくる感じは、何度聴いても色褪せない。それぐらい、この曲に詰め込まれたものが普遍的で強靭だということだ。

The Ravens - ミルフィーユ -【Official Music Video】

 再び4月17日のライブ。序盤、「Nimby」を歌い終えたKjは大合唱するフロアを前にこう宣言した。「皆さんの暗い胸が晴れますように。皆さんを1時間半、喜びで満たせますように」。それがThe Ravensの、いや、ロックバンドの存在意義だと言わんばかりに。気を抜けば見逃してしまう“ゴーストノート”に懸命に耳を傾け、それをかき集めて、「それこそが美しいんだ」と思えるように音楽を紡ぐ。そんなふうにしてアルバムは作られた。今のThe Ravensはステージに立ち、自らその思いを実践するように全力で音楽を楽しんでいる。これが希望でなくて何だと言うのだろうか。アルバムを聴きながら、僕はあらためて、今この時代にThe Ravensがいてくれてよかったと心から思っている。

『Ghost Notes』

■リリース情報
3rd アルバム
『Ghost Notes』
3月26日配信リリース

配信リンク:https://theravens.lnk.to/GhostNotes

01.Ghost Notes
02.共鳴夜光
03.ボマー
04.D・U・H
05.Sympathy
06.生活
07.Pest Control
08.Red Pill
09.Come As U Are
10.ミルフィーユ

■関連リンク
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