LUNA SEA、GLAY、PIERROT、DIR EN GREY……“食レポ”から“母親登場”まで ベテランV系がYouTubeで見せる素顔
ギャップという面でピックアップしたいのが、「キリト KIRITO officialch」と「Shinya Channel」だ。
PIERROT、Angeloのボーカリストおよびソロアーティスト・KIRITOとして活動するキリトと、DIR EN GREYのドラマーとして活動するShinya。PIERROTとDIR EN GREYと言えば、2度にわたるジョイントライブ『ANDROGYNOS』が“戦争”の異名を取るほど同年代を象徴する2大巨頭であり、両者ともに孤高のイメージが強い……のだが、YouTubeでのふたりはまったく違う顔を見せてくれる。
キリトのチャンネルで昨年多く投稿されたのが、料理動画だ。ゲストを招きつつ、基本的にキリトが料理する手元が映される。料理中は簡単なBGMのみで、キリトらしいコメントがテロップで表示され、実際にできあがる料理も唐揚げにたこ焼き、カレー、卵焼きなど肩肘を張らない素朴なもの。わざとらしい演出はなく、ゲストとまったり話しながら食べる雰囲気もいい。
2024年1月の「いま生き辛い人へ。僕は自分の為にカレーを作る」という動画で、人から悩み相談を受けるときに「美味しいご飯をお腹いっぱい食べてもらうようにする。そうすると、だいだいその人の悩みの半分ぐらいは解消されていることが多い」(※2)と話していたキリト。手料理を振る舞う名目でさりげなくゲストの悩みに答えたり、ユーモアを交えて後輩との絆を深めたりする様子からは、兄貴肌な彼の優しさが伝わってくる。さらに、実の母親が登場する動画「キリトの母に100の質問」を公開するなど、自らのことも隠さない。以前からキリトが主に文筆業で発揮していたシュールな笑いのセンスを味わえるとともに、ステージでの圧倒的オーラを裏付ける懐の深さが実感できるはずだ。
一方の「Shinya Channel」は、今回紹介したチャンネルのなかで最も更新頻度が高く、バラエティ豊かな動画が並んでいる。ライブの裏側や“叩いてみた”といった音楽的な動画から、「ちいかわチョコを作りました!」や「初めて買った週刊少年ジャンプを振り返ってみました!」「ポケカ開封!」など、YouTuberお馴染みの企画にも挑戦。後輩たちと一緒にゲームをしたり、キリトのチャンネルとコラボしてキリトとディズニーランドに行く企画も話題を集めた(カチューシャをつけて遊ぶふたりの貴重な姿は必見!)。
DIR EN GREYでは華やかなドラミングと美麗なヴィジュアルで近寄りがたい雰囲気を纏うShinyaだが、動画ではボケもツッコミもこなす関西人らしい側面が全開に。絶妙にユルい司会進行や、時折見せる天然のリアクションが面白く、独自のShinyaワールドがクセになる。DIR EN GREYでは一番年下ということでイジられポジションに回ることが多いなか、実は社交的なエンターテイナーなのだ。
いつの時代も、音楽だけでなくさまざまな才能とセンスを磨き、無二の個性を輝かせてきたヴィジュアル系シーンのバンドたち。そのメンバーが今YouTubeというフィールドに挑戦するのは当然のことであり、常に好奇心旺盛なスタンスはシーン全体の活力にも繋がるだろう。
ゲーム実況や料理動画で人気を博すlynch.の葉月(Vo)、ハイクオリティな“歌ってみた”動画が注目を集めるきっかけとなった-真天地開闢集団-ジグザグ、“日本一バズるV系バンド”としてYouTubeに力を入れてきた0.1gの誤算など、独創的なチャンネルを挙げればキリがないほど存在する。一見怖そうに見えても実はエンタメ精神に溢れ、全方位にこだわりが強いのがヴィジュアル系の美学というもの。音楽を知っている人はもちろん、知らない人も、一度彼らのチャンネルを覗いてみてはいかがだろうか。思いがけない沼が待っているかもしれない。
※1:https://www.youtube.com/watch?v=b1_u4ou3WFQ
※2:https://www.youtube.com/watch?v=on7lf4ZzoVE