こうした点やSM ENTERTAINMENTという事務所の特色を踏まえると、2つのポイントが浮かんでくる。

　1つは、多様なコンセプトを表現していくため、“イメージの固定化”を防ぐという狙いが考えられる。奇数メンバーで構成されたグループの場合、フォーメーションのバランスの観点からすると、センターの圧倒的な個性がグループの方向性を決定づけ、強烈なインパクトに繋がることもあるが、一方で固定のイメージに縛られてしまうという可能性もある。Hearts2Heartsは、あえてセンターを置かないことを基盤にすることで、“グループとしての魅せ方”を重要視したのかもしれない。

　もう1つは、SM ENTERTAINMENTに偶数グループをプロデュースしていくノウハウが備わっているという点だ。脱退などで結果的にという側面もあるものの、SM ENTERTAINMENTには東方神起、SUPER JUNIOR、少女時代といったグループが所属しており、長きにわたって偶数のメンバー数で活動を続けている。そのため、一朝一夕では獲得できない多くのノウハウが蓄積されてると言っても過言ではない。それが活かされていると考えられるだろう。

　総合して考えると、Hearts2Heartsの8人という編成には、長年のノウハウを注ぎ込みながら「グループ全体で魅せるスタイル」を強化する事務所の意図が感じられるのではないだろうか。彼女たちのデビュー曲「The Chase」のMVなどを観る限り、神秘的かつ幻想的な世界観を構築しているようにも映るため、ここからどのような広がりを見せていくのかに期待したい。

　SM ENTERTAINMENTのこうした“全員主役”の偶数メンバー構成の路線は、ファンダムの広がりやライブ演出においても、独自の強みを発揮するだろう。K-POPの歴史を第一線で築いてきた同社の手法は、奇数メンバーによる構成のグループが台頭する今のK-POPシーンにおいて、また新たなトレンドになり得るかもしれない。