ぜったくん×木暮栄一(the band apart)、“アスパラガス”を歌う! コラボの真意とヒップホップを語り尽くす
木暮さんのラップを聴いて「やっぱりラップはこうだよな」と思った(ぜったくん)
――この曲で味わえるお互いの持ち味について、どう感じますか?
ぜったくん:木暮さんはやっぱりラップがいちばん持ち味が出ていると思います。木暮さんは「どうかな?」って言いますけど、本当に超いいですから。
木暮:ヒップホップが好きだから、昔から今までのいろんな人のラップを聴いてきたわけだけど、そのなかにはA-THUGみたいに味で魅せる系の人もいて。今回は僕もそっち系がいいだろうなと思ってやったんだよね。A-THUGとはちょっとベクトルは違うけど。
ぜったくん:自分の持ち味で言うとやっぱりメロディですよね。特にサビの〈アスパラッパッパ~〉は荒井さんにも歌ってもらったんですけど、思いついてもやらないレベルのことを繰り返しているので(笑)。
木暮:それは自分でも自覚しているの?
ぜったくん:はい。「味噌つけてキュウリ食べたい」っていう曲もありますし、これまでもほかの人が思いついたとしても曲にしないであろうことを曲にしてきたので(笑)。
木暮:今は歌詞を直接的に受け取る時代だからアリだけど、これが20年前だったら、「“アスパラ”には何か別の隠された意味があるのでは?」って思う人も多かっただろうね。
ぜったくん:たしかに。でも、そのまんまですからね(笑)。
木暮:それくらいストレートなところがいいんだよね。僕も見習いたい部分ですよ。
――木暮さんは、今回のコラボで新鮮さを感じた部分はありますか?
木暮:自分がB-BOYだった90年代を振り返ると、宇田川町のB-BOYは他人を簡単に認めなくて、性格が悪い奴ばかりだったんですよ(笑)。あの頃は、ドクター・ドレーやスヌープ・ドッグのほうがはるかに売れているのに、宇田川町ではなぜかディギン・イン・ザ・クレイツ(D.I.T.C.)というNYのクルーのほうが全然人気があって、日本は変な偏りがあったんですよね。上下迷彩柄を着て、枝をくわえていないと認められない感じ。今、その恰好でチャリに乗っている人が前からきたら、普通は「何なの?」ってなりますよね(笑)。
――たしかに(笑)。
木暮:でも、それが僕の思春期だったし、バンドのことに関しては技術も精神面も更新されているけど、ヒップホップに関してはいちリスナーとして触れていただけなので、そういう90年代の古い価値観にとらわれていたところがあって。でも、今回ぜったくんと一緒にやることで、そういう意識はなくなりましたね。これはぜったくんに限らず、若い世代の人たちに感じることですけど、いい意味で肩の力が抜けているから、風通しのいい音楽を作れているんだろうなと思って。自分のなかのこだわりを「それは本当にこだわりなのか?」と再確認する機会になったし、今後の自分の制作にもきっと影響があると思います。
ぜったくん:自分も木暮さんのラップを聴いて「やっぱりラップはこうだよな」と思ったんですよね。いわゆるヒップホップマナーに則っていて、韻の固さがあるし、〈ラジオ〉〈カシオ〉〈探そう〉としっかりと韻を踏んでいる。僕もラップの入り口はRHYMESTERさんだったし、韻を踏むことは好きなんですけど、最近はフロウや言っている内容を重視して、「2、3文字踏んでおけばいい」みたいなところがあったんです。でも、やっぱりマナーに則ることもめちゃくちゃかっこいいことをあらためて感じました。
――最近の音楽シーンに対する所感を踏まえたうえで、今回の楽曲がどんなふうに届けばいいと思いますか?
ぜったくん:最近は若者を中心に、SNSで音楽の一部分だけを切り取って消費する文化があるじゃないですか。それはそれで悪くないと思うし、自分もそういう聴き方でも良く聴こえるように意識して、ふと思い出しやすそうなサビの〈アスパラッパッパ~〉のフックを作ったりしているんですけど、その一方で楽曲の展開や通しで聴いたうえでの聴こえ方も大切にしていて。木暮さんのラップもめちゃかっこいいし、生楽器やブラスも入っていて展開としても面白いと感じてもらえるようにしているので、全部しっかりと聴いてほしい気持ちがあります。
木暮:そういえば今回、Sped Upバージョンも同時に出すんだよね。僕は最近そういうのが流行っているのを知らなかったので、「へえ!」と思って。うちの子も動画を1.5倍で観てたりするし、なるほどなあと思いました。速回しだから声のトーンが全体的に上がっていて。
ぜったくん:Sped Upは「短い時間で聴きたい」とか「踊りやすい」というニーズを受けて流行ったと思うんですけど、僕的に面白さを感じるのは、ピッチが上がったことでそれまで意識していなかった部分が聴こえてくるところなんですよね。
木暮:なるほど。それまで注目してなかったところが聴こえるということか。やっぱりTikTokとかもチェックしないとダメなのかなあ。
ぜったくん:ちなみに僕は全然チェックできていないです(笑)。
ぜったくんの曲をバンドでカバーして、そのトラックでラップしたら面白そう(木暮)
――木暮さんはリアルサウンドでヒップホップの連載「HIPHOP Memories to Go」を持っていますが、最近の音楽シーンの印象はいかがですか?
木暮:更新が滞りまくっていてすみません(笑)。最近は自分の好きなものばっかり聴いてしまっているので、あまりわからないんですよね。グレゴリオ聖歌みたいな、平均律ができる前に作られたものを聴いたり、対位法で作られたクラシックの楽曲の構造を意識して聴いたりしています。徐々にそういうものを制作に頑張って反映できたらと思っていて。さっきの喩えで言うと、うちのバンドは蕎麦屋がイタリアンに憧れたようなイタリア風のことをやってますけど、イタリア料理のことを何も知らないから独特のものになっているというか。でも、それを25年もやっていると「じゃあ自分たちのやっていることは何だろう?」と思うこともあって(笑)。
ぜったくん:それを「うまい!」と言って食べている人はたくさんいると思いますけどね。
木暮:塩を入れるにしても「何グラム入れるのか」、みたいなところに今は興味がありますね。でも、ラップのチャートだけは今もチェックしていますよ。このあいだもISSUGIの新曲を聴いて「おっ!」と思ったりしたけど、ぜったくんと制作してからメロディアス指向のラップのよさもわかってきて。最近のラッパーは歌詞が面白いよね。抽象的なことを全然言わないから。
ぜったくん:言わないですね。自分の身のまわりで起きたこと、本当に小さな範囲のことを歌っているので。洗濯物を干した、とか(笑)。ちなみに僕もISSUGIさん、好きです。
木暮:彼のリリックは抽象的だよね。
ぜったくん:でも、芯を食ったことをずっと言っていますから。
――やはり趣味は合うんですね。最後に、もしまたコラボする機会があるとしたら、次はどんなことをやってみたいですか?
ぜったくん:速い曲をやりたいです。バンアパで言うと「I love you Wasted Junks & Greens」みたいな感じ、ちょっとドラムンベースみたいな曲をやってみたいですね。
木暮:なるほどね。自分は、ぜったくんの曲をうちのバンドでカバーして、そのトラックでラップしたら面白そうだなと思っていて。昔、Brand New Heaviesというバンドが、当時売れているラッパーをたくさんフィーチャーしたアルバム(1992年リリース『Heavy Rhyme Experience Vol.1』)で、The Pharcydeの楽曲「Soul Flower」を生楽器で演奏して、そのうえで実際にThe Pharcydeのメンバーがラップするということをやっていて。それと同じようなことをやってみたいですね。
ぜったくん:すごくいいですね! その時は、木暮さんのラップのニューシットも聴きたいです。
木暮:それは頑張らないとね。グレゴリオ聖歌を聴いて寝落ちしてる場合じゃない(笑)。
■リリース情報
Digital Single『アスパラfeat. 木暮栄一 (the band apart)』
配信中
配信URL:https://zettakun.lnk.to/asparaPR
<収録曲>
01. アスパラfeat. 木暮栄一 (the band apart)
02. アスパラfeat. 木暮栄一 (the band apart)(Sped Up)
ぜったくん アーティストページ:https://www.universal-music.co.jp/zettakun
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the band apart オフィシャルサイト:https://asiangothic.net/
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