サカナクション、なぜ3年ぶり新曲で異例のヒットを生んだ? 「怪獣」が秀逸なアニメ主題歌である理由
サカナクションの新曲「怪獣」が大きな反響を呼んでいる。
同曲は、2月26日公開のBillboard JAPANのダウンロードソングチャート「Download Songs」で首位を獲得(※1)。また、Spotifyにおいては配信リリース日での再生記録としては国内歴代1位の記録を達成(※2)。さらに、リリース初日から3日間連続でSpotify Japan「デイリーチャート」で50万を超える再生回数を記録するなど、国内記録を塗り替える異例の好スタートを見せている。
前作「ショック!」以来約3年ぶりとなるこの曲は、昨年より放送中のTVアニメ『チ。 ―地球の運動について―』(NHK総合)のオープニング主題歌。いよいよフルサイズ解禁となったこの楽曲は、あらゆる面で完成度が高い。
サカナクションの持ち味のひとつである、強力なメロディは今作でも健在。ぐいぐいと上へ昇っていく旋律は一発で耳に残るパンチ力があり、聴いていると心の底から力が湧いてくるような生命力を感じる。演奏面においても、サビを境に歩調を合わせて一斉に奏でる緩急のつけ方が見事。全体的にパワフルかつ繊細で、勢いのあるサカナクションがまた戻ってきたという印象を受けた。
歌詞もいい。何よりサビ頭の〈この世界は好都合に未完成/だから知りたいんだ〉のフレーズが前向きだ。この世界が未完成であることを認識しつつも、その不完全さを肯定し、だからこそまだまだ知るべきことややるべきことはあるのだという、ある種、生きることそのものを楽しむような姿勢を歌う。そしてそうした楽曲を今のサカナクションが歌うということには、大きな意義があるだろう。
山口一郎(Vo/Gt)は、2022年7月に体調不良のため一定期間休養することを発表。その後、うつ病であることを公表した。長い闘病期間の末、先日になってようやく自身のInstagramで「僕は多分、もう大丈夫です」と綴っていたが、そんな山口が今、前進することへの強い意欲を感じさせるような楽曲を世に放ったこと、そしてそれを力強く叫んでいることに、心を動かされずにはいられない。