TETORA×炙りなタウン、盟友ならではの熱いツーマン 女性限定ライブで叫んだ“カッコいい”を貫く理由
炙りなタウン「女の子が心を解放できるライブハウスを作りたい」
まだ熱気の残るステージに登場した炙りなタウンは、ゆきなり(Gt/Vo)の弾き語りから始まる「MARRY」を1曲目に選択。冒頭はバラード調だが、テンポアップとともに曲調が変化する構成の曲で、躍動感溢れるバンドサウンドがフロアに届けられた。ゆきなりが「fromガラガラのライブハウス、岡山、炙りなタウン、始めます!」という挨拶を添え、この曲を自己紹介に変えた3人は、その後「プルースター」を披露。ゆきなりによるドスの効いた歌い出し、しおきち(Ba/Vo)、めぐぞう(Dr/Cho)によるタイトなキメに、観客は拳を上げて反応した。「そんなことより、女の子だけのライブハウス、大事件すぎる!」というこの日ならではの歌詞替えも最高。天を叩く観客の拳は力強く、興奮や喜びが伝わってきた。
さらに、ゆきなりの「バカになる準備はできてんのか!」という煽りからの「馬鹿」、3人で声を合わせながらの〈行け 行くしかないだろう〉〈やれ やるしかないだろう〉という歌い出しが強烈な「狼煙をあげろ」といったパンクナンバーが、本能を解放しろと観客の心を直接叩きまくる。MCでは、ゆきなりが「今日はマジで女の子しかいないから。『汗かいて臭いかな?』とか『眉毛(のメイクが)落ちてないかな?』とか気にしなくていいと思うし、ギャーって言って引かれる心配もありません」と女性目線で語りながら、「おめでとうございます!」という言葉を贈った。「イェーイ!」と声を上げて喜ぶ3人と観客。微笑ましい光景だ。
続けて、ゆきなりは「みんな、パンクロックって知ってる?」と観客に尋ねながら、自分にとってパンクロックとは音楽のジャンルではなく魂の名前だとし、「わしにとって、はゆねえ(TETORAの上野羽有音)はパンクロッカーなの」と語った。その上で「今日、女の子だけのPHASEでそれをやりたい」と宣言。「あんたの魂の名前を教えてください」というロマンティックな言葉とともに、次の曲「パンクな彼女」が鳴らされた。観客にさらけ出すことを求めたからには、まずは自分からさらけ出すのが炙りなタウンの流儀であり、ゆきなりはギターを置いてフロアへダイブ。観客に囲まれながら、何にも遮られない魂のコミュニケーションを図る。
「一緒に墓に入るくらい好きになるやつ、たった一人で十分なんじゃ!」という言葉から始まった「初恋」のように、炙りなタウンには恋心を歌っている曲も多い。彼女たちの歌う恋は泥臭く、“切ない”とか“甘酸っぱい”という印象からは遠いが、人は誰かを好きになると心を乱されたりするし、世に溢れるラブソングのように小綺麗な私ではいられないはずだ。だからこそ、炙りなタウンの歌う新しい恋の歌に、今共感が集まっているのだろう。この日初めて披露された新曲「ワレワレハオンナノコ」は、2023年12月にSpotify O-Crestで行われたTHE NINTH APOLLO主催の女性限定ライブがきっかけで生まれた曲だという。同曲で炙りなタウンは、フロアの女性たちにも心当たりがあるであろう〈どうして胡坐かいちゃいけないの?〉といった疑問や、〈綺麗な言葉を使いなさいと言われる〉といった閉塞感を歌いつつ、モヤモヤとした感情を爆裂サウンドで解放。どんな状態でも女の子は女の子だと認める眼差し、愛に満ちた楽曲だった。
ライブ中盤のMCでは、ゆきなりが「わしはずっと、女の子に生まれたことが悔しくて」と語り始めた。いわく、鋭い目つきをしていることから、学生時代は周りの女子からなかなか話しかけてもらえず、クラス替えが憂鬱だったと。パンクロックを好きになり、バンドを組んでライブハウスに出るようになってからも、「女がパンクロックなんて」「もっと愛想よくしろ」と言われ、元恋人からは「俺の元カノはパンクロッカー(笑)」と嘲笑されたと。その上でゆきなりは「だから、わしは確かめに行こうと思って」と前を向く。「女がパンクロック好きで何が悪い? カッコいい女を目指して何が悪い? って。クソみたいな意見を覆すために、炙りなタウンをやってます。女の子が思いっきり叫んだり、心を解放できる。そういう時代を作りたいし、そういうライブハウスを作りたい」という彼女の言葉は、観客の心に深く刺さったことだろう。
「わしの人生賭けた行き先、一緒に確かめに行くやつ、拳をくれ!」とゆきなりが投げかけると、観客が強い意志とともに拳を上げる。本当に後ろの方まで拳が上がっている。その状態で炸裂する「63円」「1998」「ろくでなしの唄」といったキラーチューンの数々。理不尽な世界に対してブチギレながらも、望んでいないのに生きづらさを感じざるを得なかった人たちをギュッと抱きしめるサウンドだ。「ルナ」では鼓動を思わせるドラムのキックが響くなか、ゆきなりが〈君の心臓に/せめて絆創膏を貼って/強く強く/抱きしめられたら〉と切実な想いを歌う。
約1時間のライブ中にも覚醒を重ね、汗を流しながら走り切った3人は、「TETORAがぐっちゃぐちゃの汗だくで戻ってきたけど、わしらも大概やな」と笑顔。ラストのMCでは、ゆきなりが、ファンから受け取る手紙の9.5割は女性が書いてくれたものであること、それを嬉しく思っていることや「女の子が楽しくなってきた」という最近の実感を明かし、次の新曲へと繋げた。弱虫な自分でも、もらった手紙をお守りにして、“これさえあれば大丈夫”という気持ちで生きているのだと歌った新曲だ。フロアの一人ひとりへ、これからも共に生きていこうと伝える真摯なエンディング。その後、炙りなタウンのステージはアンコールまで続き、ライブは熱狂のうちに幕を閉じた。
◾️ツアー情報
『TETORA×炙りなタウン クレイジー&リアル ツアー』
4/12(土)八戸 ROXX ※女性客限定 / 2マン
4/13(日)盛岡 the five morioka GUEST:FUNNY THINK
4/25(金)広島 4.14 ※2マン
5/15(木)東京 Zepp Shinjuku (TOKYO) ※対バンあり
5/23(金)福岡 OP's ※2マン
5/27(火)名古屋 HUCK FINN ※2マン
5/31(土)金沢 REDSUN ※対バンあり
6/3(火)仙台 enn 2nd ※2マン
6/5(木)札幌 BESSIE HALL ※対バンあり
and more tour.
チケット:¥3,500(税別) / 東京のみ ¥4,000(税別)
【TICKET INFO】
・4/12 青森〜4/25 広島:先着発売中
・5/15 東京〜6/5 北海道:二次抽選先行受付中(3月9日23:59まで):https://eplus.jp/aburinatetora