乃木坂46 井上和、『MTV VMAJ』ソロ出演を叶えたグループの新歌姫 繊細かつ力強い無二のボーカル
その成長がさらに見られたのが、昨年3月に4日間にわたって開催された『12th YEAR BIRTHDAY LIVE』(以下、『バスラ』)で披露した 「きっかけ」だ。メンバー一人ひとりが歌い繋いでいくライブ恒例の楽曲構成の中、井上はこのライブでラストのサビへ繋がる重要なパートを任された。〈自分のこと/自分で決められず/背中を押すもの/欲しいんだ/きっかけ〉のフレーズは、乃木坂46を代表する歌姫たちがこれまで代々受け継いできただけではなく、メンバーが歌い継いできた思いを歌に乗せる重要なポジション。1期生の生田絵梨花が卒業してからは、3期生の久保史緒里がそのポジションを担ってきたわけだが、この『バスラ』では井上が久保からバトンを受け継いで、力強い歌声を響かせた。また、『真夏の全国ツアー2024』では齋藤飛鳥がセンターを務めた「ここにはないもの」を、オーケストラをバックに堂々とソロ歌唱しており、井上の唯一無二の歌声はグループの武器となっていることを強く感じた。本来であればグループとして歌うはずの同曲をひとりで歌う、それだけのことを成し遂げた井上の度胸には脱帽だが、曲の持つ意味を噛み締めながら歌う姿はとても感動的だった。
乃木坂46にはかつての生田や伊藤純奈、現在は久保や賀喜遥香、柴田柚菜、林瑠奈といった歌を強みに活躍するメンバーがいるが、井上はその誰とも違う歌声がある。それは歌がうまいという尺度だけでは測ることはできない、感情に訴えかけてくる繊細かつ力強い歌声。井上のボーカルは音楽が元来持っている感動を呼び起こしてくれる。だからこそ、彼女の歌声に惹きつけられるのかもしれない。
『MTV VMAJ』は井上の歌唱力を多くの人に知ってもらえる絶好の場になるだろう。乃木坂46の新たな歌姫が、どのような歌声を届けてくれるのか。グループの未来を展望するうえでも、大切な一夜となりそうだ。