「きょういくばんぐみのテーマ」バイラルヒット 無邪気さと鋭さを持つ楽曲は「はいよろこんで」に続く?
やみの おねえさんの「きょういくばんぐみのテーマ」が多くのリスナーの関心を引いた理由のひとつは、その歌詞が現代社会の生きづらさをリアルに描いている点にある。表面的には教育番組風の楽しい雰囲気をまとっているが、実際には自己評価の低さや社会への適応困難といったテーマが色濃く表現されている。〈いきるのつらい/しぬのものこわい/もう おどるしかない(ぱーりない)〉というフレーズは、やけくそのようにも聞こえるが、それこそが現代の若者が抱える感情のひとつなのかもしれない。
この楽曲がふと思い起こさせるのが、こっちのけんとの「はいよろこんで」じゃないだろうか。同曲もまた、明るく無邪気なメロディの裏に、社会に対する鋭いメッセージを隠していた。「きょういくばんぐみのテーマ」も同様に、教育番組という無垢なモチーフを用いながら、その実、現代社会の閉塞感を浮き彫りにしているのだ。人々がこのような楽曲に共感を覚えるのは、音楽を単なるエンタメとして楽しむだけでなく、そこに自身の感情を投影できるからではないだろうか。
また、この楽曲がTikTokで流行した理由のひとつには、視覚的な要素も挙げられる。MVでは架空の教育番組のような演出が施されており、ポップな色彩やキャラクターが一見すると楽しい世界観を演出している。しかし、そこにはどこか不気味な違和感が漂い、単なる子供向け楽曲とは異なる独特の空気感を醸し出している。このギャップこそが、多くのリスナーを惹きつける要因となったのだろう。
そして、やみの おねえさんの透き通った歌声もまた、楽曲の持つ二面性を際立たせている。うたのおねえさんのような優しく明るい声が、不穏な歌詞と組み合わさることで、より強いインパクトを生んでいる。〈いきるのつらい/しぬのものこわい〉というフレーズをあまりにも素直な声で歌い上げることによって、かえってその深刻さが際立つのだ。
結果として「きょういくばんぐみのテーマ」は単なるバイラルヒットにとどまらず、現代社会を映し出す鏡のような存在になったと言えるだろう。教育番組という純粋なイメージを借りながらも、その内容は決して子ども向けのものではない。この楽曲が今後どのように受け取られていくのか、そしてやみの おねえさんが次にどのような楽曲を届けてくれるのか、引き続き注目したい。
※1:https://charts.spotify.com/charts/view/viral-jp-daily/2025-01-29