ベンソン・ブーンは“ポップスター”の理想像 圧倒的な歌唱力&肉体美で会場を掌握した初来日公演
そうした演奏の充実ぶりを最も象徴していたのが、終盤にサプライズとして披露された未発表の新曲「Young American Heart」だ。力強いギターリフと包容力のあるメロディが牽引する、80年代のハードロックを彷彿とさせるような同楽曲は、これまでのヒット曲のように配信やラジオを起点としたヒットというよりも、まさにスタジアムのような巨大な会場で爆音で鳴り響く光景がよく似合う。近年のポップシーンでは、Harry StylesやOlivia Rodrigoのように、充実したバンドメンバーとともに何度も公演を重ねることによって、確かなパフォーマーとしての評判を獲得するアーティストが増えているように感じられるが、Booneもこうした「ライブ重視」タイプの一人なのだろう。この日のパフォーマンスにおいても、新曲であるにも関わらず、演奏中に何度も拍手や歓声が沸き起こるほどの盛大な熱狂を会場にもたらしていた。
こうした見事なライブパフォーマンスによって、ヒット曲だけが盛り上がるのではなく、最初から最後まで常に熱狂のピークを更新し続けていくという、あまりにも理想的かつ充足感に満ちたステージを披露してくれたBoone。だからこそ、最後に披露された「Beautiful Things」の盛り上がりは、もしかしたら早くも今年のベスト候補なのでは?と思ってしまうくらいに凄まじいものだった。Boone自身も演奏前に「この曲が人生を変えた」と語っていた同楽曲だが、サビで響き渡る全身全霊のシャウトは、まさに聞き手の人生そのものを揺るがさんほどの圧倒的なエネルギーに満ちており、(満を持してベストを脱ぎ捨て、鮮やかな肉体を露わにするという最高のファンサービス精神も相まって)とてつもないカタルシスを会場全体にもたらしていた。終演後、帰路につく観客のほとんどが充足感に満ちた表情を浮かべ、口々に「すごかった」と語る光景が、何よりもBooneの凄さを表していたように思う。
昨年は見事なブレイクイヤーを駆け抜けたBenson Booneだが、今年もCoachella Valley Music and Arts Festivalのサブヘッドラインや、The Governors Ballを筆頭とした各地のフェスティバルにおけるヘッドライナー出演など、その勢いはとどまるところを知らない。それが単なる話題性によるものではなく、卓越した歌唱力とパフォーマンススキルという確かな実力に裏打ちされたものであり、今まさに新たなスターが誕生しようとしているのだということを、この日の観客は間違いなく確信したのではないだろうか。