THE BACK HORN、結成25周年の先で辿り着いた“光と影” 山田将司と菅波栄純が『親愛なるあなたへ』を語る
バンドのイメージを覆す“ちゃんと明るいスカ”ナンバー
ーー次が岡峰さんが詞曲の「SUN GOES DOWN」。軽快でありつつホッとする曲です。
菅波：ある意味、THE BACK HORNのイメージからすると一番びっくりするような曲だと思うんですよね。スカで明るい。ちゃんと明るいスカってこれまでなかったから、聴いたらびっくりするんじゃないかな。光舟の曲をみんな楽しみにしてると思うんで。ホーンの人にも光舟が考えたメロディを吹いてもらってるんで、光舟らしいメロディセンスが全編にある。
ーー確かにTHE BACK HORNはデビュー曲「サニー」をはじめスカナンバーは何曲かありましたけど、こういう雰囲気の曲はなかったかも。ホーンも入って雰囲気が出てますね。歌ってても楽しいのでは？
山田：ロングトーンが多いんですけど、ロングトーンは難しい。細かい方に慣れすぎちゃったのかな。光舟は好みがちゃんと伝わってくる感じ、景色も浮かぶね。アルバムの中では特殊な、逆に自由というか縛りのない曲だなっていう良さがある。
菅波：ドラムは難しいんだよね。光舟もスカを研究してデモを作って、マツもそれを研究して忠実にやってるんだけど、グルーヴを出すのが難しかったりすげえ大変だったって。ライブで乞うご期待ですね。
ーー「月夜のブルース」は松田さんの歌詞で山田さんの曲。ブルースというタイトルほどにはブルースではない気もしますが、ピアノも入っていてこれも雰囲気がある曲ですね。
山田：アルバムを作る時に、こういう曲欲しいよね、みたいな話をしてたんだけど、栄純が全体を見てバラードが欲しいって言ってきて。で、泣かせにいくような曲調じゃないバラードを書いてみよう、ってことになったんだよね。
ーー「タイムラプス」も「月夜のブルース」同様に、松田さんの詞で曲は山田さん。シングル第3弾でしたが、このタイトルが意味するのは映像の時短処理的なものですよね。
山田：マツの中では、もう会えなくなった人とかの思い出、約束、記憶とかを持ちながら自分は前を向いて生きていく、みたいな。そいつの記憶の断片があって、それが一緒に繋ぎ合わされて、「タイムラプス」という言葉と記憶の断片のイメージが繋がる。
菅波：「タイムラプス」って映像の表現で、長い時間をギュッとするヤツだから、そういう歌詞を表してるよね。
山田：これは曲が先で、Aメロとサビのメロが近くてコテコテしてない感じ。THE BACK HORNとしてはこういう曲は意外となかったかなと思う。アルバムの最後の曲っぽくて、ドカーン！ とメジャーコードで終わってく、みたいなのを個人的には作りたいと思って。
「明日世界が終わるとしても」制作秘話
ーー最後は「明日世界が終わるとしても」。これも菅波さんらしい曲ですけど、ちょっと複雑な感情を呼び起こしますね。
菅波：この曲は、2つの気持ちが混ざってるんですよ。書き始めた時はバンドとして、というか自分が作曲家として、明日世界が終わるとしても、終わるとわかっても、もう1曲、名曲を作って誰かに聴かせたい、みたいな欲を持つんじゃないか、希望を持つんじゃないかって。「最後に残るもの」へのアンサーソングじゃないけど、それに通じるようなものを書こうと思って書き始めました。ただ、書いている途中でうちの事務所で働いていたスタッフさんが亡くなってしまって……知ったのが緩和ケアに移った頃で。「明日世界が終わるとしても」という言葉が、その方が亡くなってしまうのかなっていう気持ちと、自分の頭の中でごちゃごちゃに混ざってしまった。この曲はエイトビートで痛快に始まって2分ぐらいで終わる予定だったんですけど、書いてる途中にそういうことがあったから、そのスタッフさんへの想いとかも膨らんで、気づいたらすごい長い曲になって。最後の方は、全部そういう想いに埋め尽くされてしまったんですけどね。
ーーこの曲を聴いて「美しい名前」を連想したんです。漠然とした終末論ではなく、1人の人の世界が終わることの哀しさが歌われているのかなというところが通じる気がしました。そうした人間としての感情がリアルに歌いこまれていることがこの曲の強みだと思いますが、最後の〈光の中で幸せになれ〉という一言が、この作品を通じてTHE BACK HORNが示したい決意表明かと思いました。
菅波：〈世界が変わるとしても〉という言葉が出てくるんですけど、今までだったら世界が変わるということを俺らは肯定的に表現してきたはずで、そういうふうに書きたくて出てくる言葉だった。だけど、この曲に限っては、変わるというのは悲しいことだったり、というニュアンスが入ってるのが今までと違うなって改めて思う。
ーー“世界が変わる”と歌う時、大抵は“変えてやる”みたいな意思があるけれど、これはそうではないんですね。
菅波：誰かの命が終わっていくことを、止められないものとしての〈変わる〉という表現。変わってしまうんだ、みたいな。だからこそ今この状況で書けた歌詞だなと思う。
ーー山田さんはそうした背景を知って歌ったんですか？
山田：歌のレコーディング前に自分で歌詞の意味を読み取った時に、自分もお見舞いに行った時の景色が浮かんで。そしたら歌ってる時にその景色が頭から離れなくなって、スタジオで歌ってる途中で続けられなくなって。エンジニアの人に「止めて」って。エンジニアの人も、そのスタッフさんのこと知ってたから。後日栄純に歌詞に込めた想いを聞いたら、その人のことがきっかけで歌詞がこう変わったと。
ーーそうしたことを伺うと、この曲がさらに重要なものに感じます。菅波さんの歌詞の、抽象的なようでいて具体的な感情を呼び起こす説得力を強く感じます。さて、結成25年を超えて2年9カ月ぶりにリリースする『親愛なるあなたへ』は、想定したことを表現できたという手応えがあるかと思いますが。
菅波：そうですね。でも、やっぱりまずは単純にライブでやらないと。今度のツアーで完成するのかな。早くライブ、やりたいですね。
■リリース情報
『親愛なるあなたへ』
2025年1月29日（水）リリース
【初回盤（CD＋BD）】7,700円（税込）
VIZL-2404（VICL-66030 / VIXY-313）
【CD】※収録予定曲・曲順未定
修羅場
ジャンクワーカー
タイムラプス
光とシナジー
透明人間
最後に残るもの
親愛なるあなたへ
月夜のブルース
SUN GOES DOWN
Mayday
明日世界が終わるとしても
【Blu-ray】
『THE BACK HORN 25th Anniversary 「KYO-MEI SPECIAL LIVE」～共命祝祭～』
2024年3月23日（土）パシフィコ横浜国立大ホール
OPENING SE 〜喝采と祝祭〜
01. 冬のミルク
02. サニー
03. その先へ
04. 閉ざされた世界
05. 罠
06. シリウス
07. 心臓が止まるまでは
08. 悪人
09. コワレモノ
10. 舞姫
11. アカイヤミ
12. Days
13. あなたが待ってる
14. 未来
15. 世界中に花束を
16. 涙がこぼれたら
17. Running Away
18. 希望を鳴らせ
19. コバルトブルー
20. 太陽の花
＜アンコール＞
21. 最後に残るもの
22. 泣いている人
23. 親愛なるあなたへ
24. 刃
■ライブ情報
『THE BACK HORN「KYO-MEIワンマンツアー」〜Dear Moment〜』
2月15日（土）水戸LIGHT HOUSE［open17:30 / start18:00］
2月22日（土）京都磔磔［open17:30 / start18:00］
2月24日（月・祝）和歌山CLUB GATE［open16:30 / start17:00］
3月1日（土）郡山HIP SHOT JAPAN［open17:30 / start18:00］
3月7日（金）LiveHouse浜松窓枠［open18:30 / start19:00］
3月9日（日）長野CLUB JUNK BOX［open16:30 / start17:00］
3月16日（日）恵比寿LIQUIDROOM［open16:00 / start17:00］
3月20日（木・祝）広島CLUB QUATTRO［open16:15 / start17:00］
3月22日（土）米子AZTiC laughs［open17:30 / start18:00］
3月29日（土）金沢AZ［open17:30 / start18:00］
4月6日（日）札幌PENNY LANE24［open16:30 / start17:00］
4月11日（金）高松DIME［open18:30 / start19:00］
4月13日（日）高知X-pt.［open16:30 / start17:00］
4月18日（金）HEAVEN'S ROCK UTSUNOMIYA VJ-2［open18:30 / start19:00］
4月20日（日）名古屋DIAMOND HALL［open16:00 / start17:00］
5月9日（金）長崎DRUM Be-7［open18:30 / start19:00］
5月11日（日）福岡DRUM LOGOS［open16:00 / start17:00］
5月17日（土）大阪BIGCAT［open17:15 / start18:00］
5月24日（土）仙台Rensa［open17:15 / start18:00］
6月8日（日）Zepp Shinjuku［open16:00 / start17:00］
＜チケット＞
￥6,000（税込・D代別）※整理番号付
【U-18キャッシュバック】
公演当日、4歳以上18歳以下は会場にて身分証提示で￥2,000キャッシュバック。
※身分証は、コピー及び、写真データは不可。有効期限内の現物持参が必要。
※キャッシュバックは公演当日のみ、会場に来場された者に限る。
■関連リンク
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