06. Last Pages（Music Video Director：Kent Takahashi）

　恋愛アドベンチャーゲーム『ONE.』のエンディング主題歌。同作のオープニング主題歌である「永遠という光」を後に持ってきている構成や、6曲目という曲順から、おそらくこの曲はA面の締めくくり的に配置されているのだろうと推察する。fhánaのレパートリーのひとつである“轟音ギター系バラード”の最新形でもある。

　MVは2023年10月にLINE CUBE SHIBUYAで開催した『fhána 10th Anniversary SPECIALLIVE “There Is The Light”』のライブ映像。つまり楽曲を初披露した際の様子を軸に制作されており、当時の観客がエンドロールのように背景に流れる歌詞を注視しながら楽曲に聴き入っていたことを思い出させる。

07. Turing（Music Video Director：高前田 涼斗）

　「Last Pages」をA面の終わりとするならば、ドリームポップ的な打ち込み＋バンドサウンドで緩やかに温かく始まるこの曲はB面の始まりにぴったりとマッチする。A面B面の話でいえば、後半は6/8拍子で始まる「Turing」からスタートし、同じくワルツな「waltz for lily」で終わるというのもアルバムの構成として美しい。本人たちの出演はないアニメーションのみのMVだが、モーショングラフィックデザイナーでもある高前田のスキルが如何なく発揮されている。

08. Runaway World（Music Video Director：Kent Takahashi）

　TVアニメ『逃走中 グレートミッション』のオープニング主題歌として書き下ろした楽曲。サビ始まりで疾走するストリングス＆ギターとハイテンポなリズム、Bメロでの佐藤のコーラスワークやチューブラーベルのサウンドなど、fhánaが手掛ける“オープニング曲らしさ”を強く感じるが、歌詞やギターサウンドなどには新たな門出を感じることができ、レーベル移籍後初のタイアップ＆シングル表題曲としての力強さを感じることができる。

　MVは虹色に光る背景の前で演奏・歌唱をする三人の様子が映し出されており、ライブの勢いを感じるような演奏シーンに仕上がっている。なお、同曲と「Last Pages」で監督を務めたKent Takahashiは、fhánaのサポートメンバーである前田恭介が所属するandropのMVやライブ映像も手掛けている、という豆知識も加えておこう。

09. Matching Error（Music Video Director：高前田 涼斗）

　Kevin Mitsunagaがメインコンポーザーを務めた、ネオ昭和歌謡的なサウンドの楽曲。そこに引っ張られてか、歌詞もルビを振るワードが多いのに題材はマッチングアプリという、言葉・曲ともに懐かしさと新しさが入り混じった不思議な感覚を覚える。towanaの歌唱も妖艶でこれまでになかった一面を見せており、より大人になったfhánaの新境地を切り拓いた。MVは「Turing」に近いリリックビデオ形式となっているが、こちらは忙しなく文字やエフェクトが動いているような印象で、2つを見比べてみるのも面白そうだ。

10. 永遠という光（Music Video Director：福居英晃）

　恋愛アドベンチャーゲーム『ONE.』のオープニング主題歌。MVは寝室風のセットと演奏シーンが特徴的で、優しくあたたかなひだまりのような「君」に向けて書かれた楽曲。どこか2000年代のPCゲームのテーマ曲のようなベタさ、抽象度を感じたりもするが、それもそのはず。『ONE.』のリファイン元である『ONE ～輝く季節へ～』は、ビジュアルアーツ社でゲームブランド「Key」の作品を手がけた面々が作った“泣きゲー”の原点。fhánaは元々三人のコンポーザーがメイド喫茶でKey作品の『CLANNAD』を起点に盛り上がったところから結成された、という秘話と、MVの最後に三人でお茶を飲むシーンがリンクするのは筆者の深読みしすぎか。

11. 風になって（Music Video Director：からさね）

　窓から外を覗く少女の1枚画がセピア色の線画風からカラフルなアニメーション風になっていくーー世界が色付いていく過程を映し出したようなMVが印象的。金管が入るのはこの曲と前の「永遠という光」という意味でもつながりが良い。爽やかなギターリフからスタートし、小気味いいカッティングを軸に進行していく16ビートの構成が新鮮かつ巧さを感じ、fhánaの新たなポップスのパターンを確立したように感じた。また、歌詞はtowanaが手掛けており、明るくて切ないワードチョイスや〈夕焼け〉という言葉が出る前からオレンジ色が浮かんでくるような情景描写や抽象度、「Look of Life」とは似ているようで違う君と僕の視点の使い方は、彼女がこれまで筆を取ってきたfhána楽曲のリリックのなかでも出色の出来だ。

12. waltz for lily（Music Video Director：からさね）

　曲名通り、fhánaには珍しいワルツ調（3拍子～6/8拍子）で進行する壮大なバラード。歌詞の世界観も含め、アルバムのエンドロール的な楽曲ともいえる。あまりに壮大すぎて「日常」を歌うというアルバムコンセプトから逸脱し、最終的には人生讃歌のように聴こえてくるほどだ。

　MVは先述した「風になって」と同じ監督のからさねが手掛けており、同じ主人公のように描かれていることや、歌詞には出てこないが同じ夕焼けのモチーフがあることからも意図的に共通点を持たせていると推察する。曲のタイトルにもなっている「lily＝百合」は解釈にもよるが、タイトルを踏まえて歌詞をみると、どこか輪廻を描いているようにも感じられ、最後のトラック（リピート再生すると頭のトラックに戻る）としてこの曲があることで、フルアルバムとしての説得力も増しているように感じる。

　ここまで、アルバム各曲とMVの解説をお届けしてきた。要所で触れてきたが『The Look of Life』を通して感じたのは、fhánaが様々な喪失を超えながら次のステージへと向かう決意を込めたアルバムでありつつ、それをポップに昇華するバンドとしての引き出しの多さと、様々なジャンルを使い分ける巧さ。これまではもう少し狭く深いコンセプトのアルバムが多かったが、現体制は同作のようなフレキシブルなスタイルのほうがマッチしているような気もすれば、三人での深いコンセプトの作品を聴いてみたくもなる。デビュー10周年を超えてなお新たな一面を見せ、物語を紡ぎ続けるfhánaのポテンシャルを改めて感じる一枚だった。

■リリース情報
『The Look of Life』
https://fhana.lnk.to/TheLookofLife

【収録内容】
01. Introduction (life is coming back）
作曲：kevin mitsunaga、佐藤純一　編曲：kevin mitsunaga
02. Look of Life
作詞：林 英樹　作曲・編曲：佐藤純一
03. city dream city
作詞：林 英樹　作曲：佐藤純一　編曲：kevin mitsunaga、佐藤純一
04. Spiral
作詞：towana、林 英樹　作曲：佐藤純一　編曲：kevin mitsunaga、佐藤純一
05. 天使たちの歌
作詞：林 英樹　作曲・編曲：佐藤純一
06. Last Pages
作詞：林 英樹　作曲・編曲：佐藤純一
07. Turing
作詞：林 英樹　作曲・編曲：kevin mitsunaga
08. Runaway World
作詞：林 英樹　作曲・編曲：佐藤純一
09. Matching Error
作詞：林 英樹　作曲・編曲：kevin mitsunaga
10. 永遠という光
作詞：林 英樹　作曲・編曲：佐藤純一
11. 風になって
作詞：towana　作曲・編曲：佐藤純一
12. waltz for lily
作詞：林 英樹　作曲・編曲：佐藤純一

【商品形態】
・エムカード付き限定盤Type-A
【品番】COZX-2136～7
【価格】税込：￥4,400
収録全12曲のMusic Videoのダウンロードが可能なエムカードを同梱

・BD付き限定盤Type-B
【品番】COZX-2138～9
【価格】税込：￥7,700
2023年10月にLINE CUBE SHIBUYAにて開催されたfhána 10th Anniversary SPECIAL LIVE “There Is The Light”公演の模様を収録したBlu-ray Discを同梱。

・通常盤
【品番】COCX-42402
【価格】税込：￥3,300

fhána公式サイト：https://fhana.jp/