Mrs. GREEN APPLE、なぜ歌詞に“愛”を多く使うのか? 現代のリスナーに枯渇している自己愛を歌う意味

 昨年公開の映画『サイレントラブ』の主題歌として書き下ろされた「ナハトムジーク」で、Mrs. GREEN APPLEは〈愛されたいのに いつも通り/間違いばかりの今日をまず愛そうか〉と歌う。「他者に愛されたい/認められたい」と願うのは、いわゆる承認欲求としてどんな人間も抱く感情である。一方で、たとえ過ちや失敗ばかりだとしても自分自身を愛せない人間は、きっと他者からも愛されないだろう。人に愛されるためにはまず今日を生きる自分自身を愛し、肯定する。それが大事なことなのだと、Mrs. GREEN APPLEは我々に語りかけている。

Mrs. GREEN APPLE「ナハトムジーク」Official Music Video

 この「ナハトムジーク」には、〈無茶苦茶なこの世界を愛そうか〉というフレーズも登場する。自分自身を肯定した次は、自分自身、そしてさまざまな他者や理不尽さも内包している〈無茶苦茶なこの世界〉を肯定することで〈「愛されたい」は報われる〉――。誰かに愛されたいのならば、まずは自分自身を愛し、そして他者を愛そうというMrs. GREEN APPLEからの力強いメッセージが沁みわたる一曲だ。

 ここまで紹介してきた通り、Mrs. GREEN APPLEの歌詞フレーズにおける〈愛〉には、自己愛という思考が貫かれているように感じる。それは、この日本社会において不足している要素だ。日本人の自己肯定感に関する調査では、「自分自身に満足しているか」という質問に対して肯定的に回答した人の人口における割合がアメリカが約70%、中国が約50%だったに対し、日本は約30%だったという結果が出ている(※2)。この国に住む人の多くが、自分の存在や価値を肯定できていないのだ。

 そんな現代においてMrs. GREEN APPLEが世代を超えて今日本で最も聴かれるアーティストの一組となったのは、リスナーそれぞれの自己愛を肯定し、そして高めてくれるメッセージが込められているからなのではないだろうか。

 Mrs. GREEN APPLEの音楽がこの国で生きる人々の自己肯定感を高めるきっかけになっているのだとしたら、それはとても素敵で幸せなことだと私は思う。

※1:https://www.billboard-japan.com/charts/detail/?a=hot100_year
※2:https://www.sentankyo.jp/articles/c7f02d19-f946-49e2-9e28-24c51ecf0208

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