Vaundy、小袋成彬、優里、INI、幾田りら、[Alexandros]……注目新譜6作をレビュー
INI「Make It Count」
TVアニメ『どうせ、恋してしまうんだ。』(TBS、BS11ほか)オープニング主題歌となる新曲。作曲はJay Hong、Tea Muの手によるもので、音数を控えめに展開するトラックは現代的。しかしトレンドをゴリ押しする貪欲さよりも、聴きやすさ、透明感、さりげない品の良さを際立たせたもの。メロディにもポップスとしての耐久性が光る。またLauren Kaoriによる歌詞は、性別を感じさせる言い回しをあえて避けているようで、INI楽曲として成立するが、アニメの主人公・西野水帆の想いと重なるフレーズも多数散りばめられている。いわゆるラブソングとは似て非なる内容は、儚い青春の空気そのものを指しているのだろう。キラキラした残像がいつまでも残る一曲だ。(石井)
幾田りら「百花繚乱」
バウンシーなベースラインと精密なリズムアレンジ、そして、〈ゆらゆらり/はらはらり〉という雅な響きをたたえたリリック。洋楽的なトラックメイクと日本のポップスに根ざしたメロディが共存した「百花繚乱」は、TVアニメ『薬屋のひとりごと』(日本テレビ系ほか)第2期オープニングテーマとして書き下ろされた楽曲だ。サビで“これぞJ-POP!”なキャッチーな旋律を響かせたと思えば、意外性に溢れた転調・展開でリスナーを奇想天外な世界へと導く。このセンスと技術もまた、リスナーを惹きつける力、何度もリピートしたくなる中毒性になっている。YOASOBIでの活動を通して得たものがシンガーソングライターとしての音楽性の向上につながる。今の彼女は、そんな豊かな循環のなかにいるようだ。(森)
[Alexandros]「金字塔」
ドラマ『プライベートバンカー』(テレビ朝日系)主題歌となる書き下ろし新曲。ドラムソロかと思うほど手数の多いドラムフレーズから始まり、イントロは爽やかに空を舞うエレキギター。このまま疾走系ロックナンバーが始まることを予感させるが、次の瞬間から音数は一気に激減し、歌をメインにじっくりと展開。一度オフにしておいたエネルギーがBメロで次第に高まっていき、ようやくサビのカタルシスへと到達するのだ。華麗なる一族に巻き起こる資産争い。ハラハラドキドキのドラマ内容を示唆するためにアレンジを練り上げたのだろうが、愛憎劇とは一線を画すのが彼らの流儀。あくまでも開放的なムードをキープしているから余韻はどこまでも心地よい。(石井)