Wez Atlas、Kota Matsukawa(w.a.u)と見出したポップスターへの道 同い年の感性から生まれるクリエイティブ
Wez Atlasの“弱さ”を見せられた「Focus」
——そして「40℃ (colder)」は、シングルとしてリリースされた「40℃」のニューバージョンです。
Matsukawa:簡単に言うと「40℃」のリミックスですね。「40℃」の原曲バージョンを聴いたときに、「違うノリのトラックも合うんじゃないかな」と思って、勝手に作ったんですよ(笑)。
Wez:俺も全然知らなかったです(笑)。「40℃」をそのまま入れようかと思ってたんですけど、少しテンポが遅いかもなと思って。Matsukawaのリミックスを聴かせてもらって、「これを入れたいな」と。
Matsukawa:半分遊びで作ったんですけどね、最初は。原曲よりもちょっと爽やかだし、EPの全体像に合うんじゃないかなという話になったので、「じゃあ、仕上げとくよ」と。
Wez:キラキラしてるよね。
Matsukawa:そうだね。ちょっと古い質感のピアノのリフもそうだけど、懐かしのクラブミュージックという感じもあって。
——頼まれてないのにリミックスを作るって、普段もやってるんですか?
Matsukawa:結構やってますね。ボーカルデータだけを取り出して、全然違うトラックに乗せたり。趣味というか、制作中の息抜きでもあるんですよ。自分が携わった曲のリミックスを作ってリフレッシュしてます(笑)。
Wez:「40℃」のリミックスも、ボーカル以外は被ってないの?
Matsukawa:そうだね。リミックスするときは、原曲のデータはほぼ使わないので。
——『ABOUT TIME』の最後は「Focus」。ストリングスを取り入れたスケールの大きい楽曲だなと。
Wez:この曲、制作の最後に作ったんですよ。
Matsukawa:うん。結果的に、ほぼ作った順番通りに収録してるので。「Focus」のサウンド面で言うと、Wezにはゴスペルっぽい音が合うんじゃないかなと思って。荘厳な感じというより、開放的なサウンドを作ってみたかったんですよね。いくつかビートを作って、「これだったらポップにもアプローチできるかな」というものができたので、「どう?」って送ったら、「いい! すぐ書く!」みたいな反応が返ってきて。今回のEPの中で一番力んでたんじゃない?
Wez:コードもエモいし、感動系のトラックだったから、「いいこと言わなきゃ」みたいになってたかも。この曲もサビのメロディがパッケージで降りてきたんですよ。
——〈先が暗くて見えない、絶望しそう/踏み込むしかない、強気に行こう〉は、このEPを象徴するラインだなと。
Wez:嬉しいです。他の曲を先に作っていたから、最後に「Focus」のメッセージが出てきたんだと思いますね。
Matsukawa:さっきの初対面の話につながるんですけど、Wezはどこかで“いい人”であろうとする印象があるんですよ。それが嫌ってわけではなくて、そういう美徳が備わっている人間なんだと思っていて。でも「Focus」ではその感じが消えて、ちゃんと弱いところを見せているというか。歌が乗ったときに、感動しました。
Wez:よかった。
Matsukawa:普段のWezは「調子いいよ」「元気だよ」と言うことが、周りの人にとって良いことだと思ってる気がして。このEPの制作を通して、皮が剥けていったというか、自分の内側を見せる術を獲得してきた。その集大成が「Focus」なのかなと。
Wez:これまでの曲でも“弱さを見せる”というところはあったんだけど、「40℃」「Summit」では逆に「強さを出さなきゃ」という感じだったんですよね。「俺、なめられてるな」と思い込んで、やれるところを見せなきゃって。あとは日本語の歌詞が増えたことも関係してるかも。英語では自分の感じていることをそのまま表現できるんだけど、日本語だと伝わりすぎてしまうというか。『ABOUT TIME』の制作が始まってから自分のコンフィデンス(自信)も戻ってきて。「Focus」は肩の力が抜けた状態で、そのときの状態を歌えたと思います。
「新しいコネクションが見つかって、もっと先に進めるイメージ」(Wez)
——2025年第1弾となる「My Village (feat.Skaai)」についても聞かせてください。Skaaiさんとは以前から交流があったとか。
Wez:ちょうどSkaaiが『ラップスタア誕生2021』(ABEMA)に出た頃に知り合ったんですよ。それからちょこちょこ遊んだりするようになって、イベントに一緒に出たり、あとは出身地が同じ(大分)なんですよね。uinと3人でセッションしたこともあるんだけど、そのときは特に何もできなくて。今回「もう1回やってみようぜ」ということになりました。Matsukawaも交流あるよね?
Matsukawa:うん。最初にしゃべったのは『KOBE MELLOW CRUISE』のときかな? Skaaiはさりげなく近い場所にいる感じなんですよ。去年(2024年)の10月にSkaaiがやってるバンド(TRIPPYHOUSING)をイベントに呼んで、w.a.uと一緒にステージに上がったり。お互いにボルテージが上がってる中で、曲を作ることになったという流れですね。
——「My Village」のリリックはどんなテーマで制作したんですか?
Wez:Skaaiともいろいろ話したんですけど、「俺らって、フッド(地元)みたいなところがないよね」という話になって。Skaaiも引っ越ししまくってるし、俺も8歳からアメリカに行って、15歳で東京に来て。(アメリカと日本の)2つのカルチャーを知ってて、その中で葛藤を抱えてて……。とにかく共感できるところが多かったんですよね。俺らはたぶん日本のヒップホップの中では異質だし、この2人だからこそやりたいよね、という感じもありました。
Matsukawa:トラックに関しては「アグレッシブにしたい」と言われていて。最初に作ったのは「ちょっと攻め過ぎてる」ってことになり(笑)、その後、渋めのブーンバップみたいなサウンドになりました。リリックはWezとSkaaiがその場で書いてたんですよ。
Wez:サビは1行ずつ一緒に考えて書きました。交互にラップし合う曲にはいろんなカッコいい例があって。たとえばアンダーソン・パークとコーデーとか、エミネムとロイス・ダ・ファイブ・ナインとか、そういう感じでやってみたいなと。
Matsukawa:本当に交互に書いてたから、どっちかが止まると“待ち”になるんですよ。たぶん俺、6時間くらい休憩してました(笑)。
——そして1月24日には東京で初のワンマン、31日には大阪でリリースライブがあります。大阪公演には、Skaaiさんがゲストアクトとして出演しますね。
Skaai:はい。俺はバンドセット、SkaaiはDJセットでやる予定です。
Matsukawa:東京もゲストが何人か出るんでしょ?
Wez:うん。もしかしたらSkaaiも来てくれるかも。
——2025年のWez Atlasはどうなりそうですか?
Wez:『ABOUT TIME』でMatsukawaと短期集中で制作したことで、いい発見がいっぱいあって。結構ガラッと変わった感じがあるし、この先の音も聴こえてきてるんですよ。新しいコネクションが見つかって、「もっと先に進める」というイメージもあるので、どんどんやっていきたいですね。
Matsukawa:Wezが歌うゴリゴリのラブソングを聴いたことがないので、そういうものもやってほしいですね。
Wez:もうちょっと大人になったらやろうかな(笑)。
Matsukawa:やれることがどんどん増えている気がするので、毛嫌いせず、いろんなことにチャレンジしてほしくて。どの立場から言ってるのかわからないけど(笑)、まだ水やりされてない種というか、挑戦することでさらに芽が出てくると思うので、積極的にチャレンジしてほしいです。ポップスター的な存在になるマインドもできているはずだし、あとはなるだけというか。人前に出て、人気や視線が集まることで力が増すタイプだと思うし、ダークヒーローというより、みんなの人気者になってほしいです。
Wez:ポップスターというキーワードはあまり考えたことなかったけど、この前Matsukawaと話していて、「確かにそうだな」と思ったことがあって。俺はもともとJ. コールに憧れてラップを始めたんですよ。ドレイクやケンドリック・ラマーもそうだけど、超メインストリームのビッグラッパーが好きだったし、アメリカだとそういう人たちはスターじゃないですか。「俺もその感じが欲しいのかな」と気づいて。そういう存在を目指したいなと思い始めてますね。
◾️配信リリース情報
Wez Atlas「My Village feat.Skaai」
2025年1月15日(水)リリース
配信:https://lnk.to/gRiTxU
◾️EPリリース情報
Wez Atlas EP『ABOUT TIME』
2024年11月27日(水)リリース
配信:https://lnk.to/JQYaJS
[収録内容]
1 Intro
2 One Life
3 Glow
4 Feel It Now
5 40℃(colder)
6 Focus
◾️ライブ情報
『Wez Atlas LIVE 2025』
<東京>
1月24日(金)OPEN 18:00 START 19:00
場所:SHIBUYA WWW
with w.a.u Featuring Guests:Sagiri Sól、Skaai
<大阪>
1月31日(金)OPEN 18:30 START 19:00
場所:LIVE SPACE CONPASS
with w.a.u Guest: Skaai