『進撃の巨人』『犬夜叉』『ゴールデンカムイ』……アニメ作品の劇伴を堪能できる“オケコン”の潮流と魅力

 「その日 人類は思い出した ヤツらに支配されていた恐怖を… 鳥籠の中に囚われていた屈辱を……」――そのナレーションとともに壁の向こうから顔を出す巨人と恐怖に目を見開く住民たちの表情。アニメ『進撃の巨人』Season1(MBSほか)の第1話の、冒頭のシーンだ。画面から響くのは、澤野弘之が手掛けた壮大にして荘厳な劇伴音楽。アニメーションのみでは足りない情報を、映像やセリフの外から補い、彩り、補完していく劇伴音楽は、今や日本のみならず海外でも人気を博している。作品そのものが多くの海外ファンを惹きつけてやまない『進撃の巨人』の劇伴を奏でるオーケストラコンサート(以下、オケコン)が、2025年4月より世界20都市以上で開催されることが発表された。

進撃の巨人 | Attack on Titan OST - Ashes on The Fire[Official Live]

 アニメ第4期からはKOHTA YAMAMOTOも加わって紡いできたドラマティックなサウンドが、2021年8月に『進撃の巨人オーケストラコンサート』として神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホールで響いたことはまだ記憶にも新しい。

進撃の巨人オーケストラコンサートDIGEST

 これに限らず、昨今、海外での日本のアニメ作品の劇伴コンサートは盛り上がりを見せる一方だ。『NARUTO -ナルト-』(テレビ東京系)、『FAIRY TAIL』(テレビ東京系)の劇伴音楽を担ってきた高梨康治は、今や海外での活動の方が多いのでは? と感じさせるほど、各国で劇伴コンサートを開催し、各地を熱狂の渦に巻き込んでいる。それはロックコンサートさながらの盛り上がりで、オーディエンスの歓声が轟くフロアの熱は凄まじいものだと常々高梨本人もSNSなどで言及している。

Heaven Shaking Event / NARUTO Shippuden [ Yasuharu Takanashi&YAIBA ]

 そんな中、海外で『進撃の巨人』のオケコンの開催とあり、ファンは固唾を呑んで待ち構えているはず。『進撃の巨人』の躍動感溢れる劇伴が感動の渦を巻き起こすことは間違いない。また、海外ファンはオーケストラというフォーマットのコンサートであろうとも声を上げ、歓声を響かせるという。一大フェスティバルさながらの歓声に包まれたオケコンをぜひ体感してみたいものだ。

 日本国内でも劇伴コンサートは開催されてきた。筆者が初めて訪れた劇伴コンサートは、久石譲のコンサートだったと記憶している。そしてゲーム『ファイナルファンタジー』シリーズのオケコンにも足を運んだ。ジブリ音楽をはじめ、様々な劇伴を世に放ってきた久石や『ファイナルファンタジー』シリーズの音楽の生みの親・植松伸夫は、多くの劇伴作家に多大な影響を与えた存在であり、彼らを目指して劇伴作家になったと語る者も多い。これらのオケコンは、アニメ/ゲームファンのみならず、幅広い層のファンが訪れていた印象がある。

ファイナルファンタジーXコンサート|WDRラジオハウス管弦楽団|ベニヤミン・ヌス

 また、“フィルムコンサート”と呼ばれるコンサートも時折開催されている。これは映画などの映像作品をスクリーンに映し出し、その映像に合わせてオーケストラが生演奏をするという、映像と音楽を楽しむことのできるコンサートである。もともと映画の音楽制作手法として、映像に合わせて演奏されたオーケストラの音を録音するものもあり、オーケストラと映像との親和性は元来高いものだった。そして今、アニメの劇伴音楽のオケコンはその数を増しており、主題歌以外の背景音楽として扱われていた音楽が、作品の一部として“当たり前”に聴かれるようになったことの証のように感じる。

 熱狂的な盛り上がりを見せる海外のオケコンとは違い、日本ではクラシックコンサートのように静かに演奏を聴き、演奏の後には拍手を送って楽しむ節があるが、それは国によって千差万別なのだろう。どちらも“正解”。しかし、日本にも海外のように熱狂して楽しむ劇伴コンサートがあってもいいじゃないか! と劇伴作家・林ゆうきが立ち上げた(※1)のが劇伴音楽フェスティバル『京伴祭-KYOTO SOUNDTRACK FESTIVAL-』だ。

『京伴祭 -KYOTO SOUNDTRACK FESTIVAL- 2024』ミニダイジェスト 林ゆうきさんver.

 コロナ禍の最中にあった2022年に、無観客での“エピソード0”として1300年以上の歴史を誇る古都京都からアニメの劇伴音楽のコンサートを発信した林。『僕のヒーローアカデミア』(読売テレビ/日本テレビ系)や『ハイキュー!!』(MBS/TBS系)の音楽を担う彼が声を掛け、『NARUTO -ナルト-』の高梨、『SPYxFAMILY』(テレビ東京系)の宮崎誠と立ち上げた『京伴祭』は、2022年以降毎年京都で開催し、2023年と2024年には『東京伴祭 -TOKYO SOUNDTRACK FESTIVAL-』として東京でも開催された。着々とアニメファンの注目を集めており、2025年9月の開催も発表されたばかりだ。このイベントは国内初の劇伴による音楽フェスとして、ロックフェスと変わらぬ熱気を目指している。劇伴好きの読者は参加してみてはいかがだろうか。

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