でんぱ組.inc、16年の歴史のとても潔く美しい幕引き 7人が明るく全力で走り切ったエンディングライブ

とても潔く、美しい幕引きだった。
16年の歴史を紡いできたでんぱ組.incが、1月4、5日に幕張メッセ イベントホールにて行った「でんぱ組.inc THE ENDING『宇宙を救うのはきっと、でんぱ組.inc!』」をもってエンディングを迎えた。本稿では5日公演の模様を記したい。
秋葉原にあるライブ&バー・秋葉原ディアステージにて、古川未鈴の意を汲み結成されたアイドルグループ、でんぱ組.inc。紆余曲折を経て2011年に6人体制になると、それまでのグループとは一線を画したパフォーマンスや電波ソングが注目を集め、幕張メッセや日本武道館、さらには海外公演など様々なステージでのライブを経験。その後、秋葉原を出身とするコアなオタク精神を持つ初期メンバーと、でんぱ組.incに憧れてアイドル界に飛び込んだメンバーによる7人体制として、2025年に至った。
そんなでんぱ組.incのエンディングが執り行われたステージには、約400着もの過去衣装がずらりと並べられ、大きなサイリウム型の光るモニュメントがこれまでと現在のメンバーを足した数である15本鎮座。舞台の片隅には秋葉原ディアステージから運んできた、ペイントの施されたシャッターが設置されていた。

ライブは、ステージの横幅ほどもある大きなスクリーンにて放映されたオープニングムービーから始まった。「THE ENDING」の文字が大きく映されると、宇宙船に乗ったメンバーが映し出され、一人ひとりが紹介される。秋葉原ディアステージ前に炎をあげながら着陸すると、堂々たる足取りで7人が歩いてくる、そんな壮大なオープニングだ。
すっかりお馴染みのSEでメンバーが登場し、ライブ定番曲「ギラメタスでんぱスターズ」でいよいよライブが開幕。歌いだしからアクセル全開の勢いに、最後のライブが始まってしまったと感傷に浸る暇もない。でんぱ組.incの代表的な衣装の一つ、アルティメットセーラーを思わせるデザインに、卒業式を彷彿とさせる首元のファーや、正月や祭りを思わせる装飾があしらわれた衣装をまとう7人は心から楽しそうな笑みを浮かべ、それでいてスクリーンには覚悟に満ちた瞳がキラリと光る様が映し出される。すべての歌詞が決め台詞に聴こえるような存在感とキラキラとしたオーラを放ちながら、「破!to the Future」、「でんぱれーどJAPAN」と、矢継ぎ早にアッパー楽曲を繰り出していく。
激しい振り付けの中の歌唱にもかかわらず、各々の歌いまわしのバリエーションはより多様になっており、その安定感が抜群に増していることにも驚かされる。でんぱ組.incの歴史の全行程を走り切った古川未鈴の存在感のある歌声、安定した高貴な歌声が炸裂する相沢梨紗、パワフルなパフォーマンスながらブレることのない藤咲彩音はもちろんのこと、鹿目凛の気品と自信を備えた歌声、小鳩りあのキュートながら圧巻の歌唱、どんな雰囲気でも自身の表現に昇華する天沢璃人、貫禄も無邪気さもお手のものの高咲陽菜、7人それぞれの強みが際立ち、エンディングまで走り切った説得力に満ち溢れていた。
2時間半を超える公演中、定番の自己紹介以外のMCはほぼ設けなかったことも、鮮烈なエンディングとなった理由のひとつだった。短く行った自己紹介にて、でんぱ組.incに多大な憧れと夢を抱いて加入した高咲が「最高の夢をでんぱ組.incと一緒に見ましょう!」と叫び、天沢は新衣装となぞらえながら「我々の晴れ姿をとくとご覧あれ!」と話し、藤咲は「でんぱ組.incの歴史を一緒に作るんだぞ!」と声を張り上げる。そんな頼もしい言葉たちに、彼女たちの成長を感じざるを得ない。
メドレーを含め本編だけで30曲を披露した彼女たちは、ここからフルスロットルとばかりに楽曲を連発していく。でんぱ組.incの聖地を舞台にした楽曲「Dear☆Stageへようこそ♡」をシャッター前で歌い出し、最上もがの在籍した2011~2017年の楽曲「ちゅるりちゅるりら」、「バリ3共和国」、「でんでんぱっしょん」、根本凪、鹿目凛が加入してからの「愛が地球救うんさ!だってでんぱ組.incはファミリーでしょ」や「おやすみポラリスさよならパラレルワールド」、2021年からの10人体制以降の「プリンセスでんぱパワー!シャインオン!」、「千秋万歳!電波一座!」など、これまで様々なメンバーで発表してきた楽曲を、走馬灯のように次々と繰り出していく。前日の公演にて、集まった歴代メンバーがスクリーンに映し出され、8年越しに最上もがの卒業式が執り行われたことは、現在のでんぱ組.incがそれまでの歩みに敬意を抱いていることを強く感じさせたが、2日目公演となるこの日も、様々な時代を思い起こすセットリストは過去にでんぱ組.incに所属し、その歴史を懸命に紡いできたこれまでのメンバーの物語をも思い起こさせるようなものだった。


そして、そんなベスト版とも言えるセットリストを、最後まででんぱ組.incの歴史を紡ぎ切った今のメンバーによる真骨頂のパフォーマンスで披露されたことは、何よりも贅沢なことだっただろう。豊かな表情と磨き上げられた表現力で繰り広げられる楽曲の数々を観、聴きながら、この日のパフォーマンスへの感嘆とそれまでのグループの思い出が交互に心を染め上げた。