Mrs. GREEN APPLE、人生の苦悩を見つめて“愛”を歌う 研ぎ澄まされたメッセージが大躍進の鍵に
とりわけフェーズ2始動以降はその歌詞に込められたテーマ性やメッセージ性もどんどん深く、核心を突くものになってきている。〈メンタルも成長痛を起こすでしょう/「無理せず自分らしくいて」/それが出来たら悩んでないよ〉と歌う「ダンスホール」も、〈ドス黒い夜に呑まれてしまう前に/縛り付けて何にも出来ないようにして/私を殺して欲しいのです〉という「Loneliness」も、あるいは〈辿り着く果てまで/苦しみは尽きぬけど〉と歌い起こされる「アポロドロス」も、とても直截な言葉で生きることの痛みや苦しみを伝えている。歌詞だけを読んでいると、心がチクリと痛むような瞬間がいくつもある。だが、いやだからこそ、ミセスの音楽はどんどん晴れやかに、ポップに、アグレッシブに広がっていった。音楽性の振り幅が大きくなり、ポップスとして、あるいはエンターテインメントとしての表現に磨きがかかっていった。人間の心の暗い部分に希望の光を照らすように、そのサウンドはますます強度を増し、華やかになっていったのである。
見つめるべき真理はどこにあるのか、それすらも抱きしめて“生”のほうへと向かうにはどんな歌を歌えばいいのか。特に『ANTENNA』以降のミセスの楽曲には、その自問自答の痕跡がまざまざと刻みつけられているように思う。苦い日々を送る人を〈いいよ〉という文字通りのマジックワードで後押しする「Magic」しかり、タイトルがそのままメッセージとなっている「ケセラセラ」しかり。〈有り得ない程に/キリがない本当に/無駄がない程に/我らは尊い。〉と最大限の肯定の言葉を投げかける「Soranji」も、〈不安だらけの日々でも/愛してみる〉と歌う「ライラック」もそうだ。ときに祝祭のように華々しく、ときに圧倒されるほど壮大に、ときに蒼々と輝くバンドサウンドに乗せて、揺るがない“前提”すらも肯定してみせるかのように、ミセスは愛を歌い続けている。
「ビターバカンス」もそうだ。色を塗りたくるようなサウンドの上で、大森は〈辛いことばっかじゃないって事を/君に教えたい 教えたい 教えたい〉〈ちょっぴり甘いくらいな/ほろ苦いが/愛じゃない?〉と歌う。人生が“ビター”であることは変わらないし変えようもないけれど、それでも“バカンス”を楽しむことはできるし、笑える日だってある――「それが生きていくということなんだ」と、この曲は言っているように思う。それは言わずもがな、「ケセラセラ」とも「私は最強」とも「コロンブス」とも共鳴する、Mrs. GREEN APPLEのメインテーマだ。
怒涛のリリースを通して伝えるべきメッセージを研ぎ澄ませてきたミセスは、来年、デビュー10周年を迎える。すでにさまざまな企画が予定されていて、その中にはバンドにとって過去最大規模のワンマンライブとなる7月の『MGA MAGICAL 10 YEARS ANNIVERSARY LIVE』(横浜・山下埠頭に2日間で10万人を動員)、韓国での初単独公演(『MGA LIVE in SEOUL, KOREA 2025』)なども含まれている。それだけを見ても、この節目にあってミセスは後ろを振り返るどころか前のめりで攻め続けていくことが想像できるだろう。表現の核となる部分をはっきりと自覚した今だからこそ、彼らはさらに変わり続けていくことができる。エポックメイキング目白押しとなるだろうアニバーサリーイヤーに今から全力で期待したい。
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