三枝明那が音楽を介してリスナーと深めた団結力 初ワンマン、生涯一度しかない特別なステージを観た

 ライブもいよいよ後半戦に。「次、みんなが聴きたい曲やります」と告げ、始まったのは「ダーリン」(須田景凪)。リクエストの多かった楽曲だということもあり、客席からも歓喜の声が上がる。さらに「心做し」(蝶々P)では全身で訴えかけるような、そして聴く者の魂をゆさぶるような歌声を響かせていく。打って変わって客席に優しく呼びかけるような優しい歌声で歌われた「はんぶんこ」と、多彩なジャンルを次々歌い上げていった。

 その表現力が最大限に発揮されたのは、「Funeral」だろう。夜明けの映像を経て始まったこの楽曲は、一つ一つ歌詞を噛みしめるように歌われていく。澄んだ歌声が続いて、サビにかかると感情で貫くような強いボーカルへシフトチェンジする。彼のもつエネルギーの強さと、聴く人に寄り添いながらも時に鋭さを見せる繊細な表現だ。

 ライブ終盤には、「エゴロック」(すりぃ)、「ララバイ」とトロッコで会場を移動しつつファンに囲まれながら歌い上げた。広い会場ならではの、観客を誰一人置いていかない演出に客席も笑顔があふれた。

 バンドメンバーを含め客席との記念撮影の後、自身の過去の悩みや苦しみに触れ、「これは“僕”の曲なんです。僕のこれまでとこれからの曲。みんなに対しての祈りとして歌わせてもらいます。これからもいっぱい笑いましょう!」と語った本編最後の曲は「prayers」。曲中に「俺はここにいるぞ! 必ずここにいます」とシャウトしたとおり、音楽によって個性を確立した三枝。音楽によって彼とファンの心が解放されていく様を見ているようだ。歌詞のとおり再会を約束し、最後には「どうか皆さんの明日が幸せでありますように!」と言葉を残した。

 アンコールでは、共通衣装で登場し「大好きな曲を歌わせていただきます!」と「曖昧劣情Lover」(こより)を披露。まだまだエネルギーに満ち、音楽を楽しんでいる姿が印象的だ。最後に重大発表として、ライブ翌日に新曲がリリースされることが発表された。さらに当日にMVが公開されるという発表に大歓声が巻き上がる。「これで終わりじゃない、これからも続いていく」という意味のオープニングソングだと語り、その新曲「UNITY」がステージで初披露された。実はライブタイトルこそ新曲のタイトルだったというサプライズもあり、会場の熱量も最高潮のまま、初のライブは大成功を収めた。

 何度もファンの声を求める姿や、MCでのコール&レスポンスといったファンとのコミュニケーションから感じられたのは、ライブでしか味わえない双方向性や温度感を彼自身が誰よりも待ち望んでいたということだ。

 幾度となく感謝を告げ、「あらためてすごいことだね」と感慨深げに会場を見渡し、「こんな楽しいこと経験しちゃうとまたやりたくなる」と語っていたが、今後彼の活動において、ライブという場がさらに特別なものになっていくだろう。

 事実、初の単独ライブとは思えないほど、ライブアーティストとして堂に入っており、人々を楽しませるショーマンとしても、心をゆさぶり熱くさせるボーカリストとしても、配信や音源とは一味違う魅力を存分に見せていた。今後の三枝明那がどのようなステージを作り上げていくのか。彼の次なる一手が楽しみになったライブだった。

<Saegusa Akina 1st Solo LIVE 'Unity' セットリスト>
1. あさが来る!
2. うぇいびー
3. ラブヘイト
4. シャロウ
5. 終末じゃない(カバー)
6. テレキャスタービーボーイ(カバー)
7. 浮遊感(カバー)
8. マーシャル・マキシマイザー(カバー)
9. アナザーシェード
10. RED
11. リテラシー(カバー)
12. ダーリン(カバー)
13. 心做し(カバー)
14. はんぶんこ
15. Funeral
16. エゴロック(カバー)
17. ララバイ
18. prayers

アンコール
1. 曖昧劣情Lover(カバー)
2. UNITY

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