ONE OK ROCK、Ado、iri、平手友梨奈、水曜日のカンパネラ、平井大……注目新譜6作をレビュー
平手友梨奈「ALL I WANT」
変態紳士クラブのメンバーであり、様々なミュージシャンの作品を手がけるGeGがプロデュースを担当したミディアムバラードだ。ゆったりと濃密に流れるグルーヴ、重心低めのトラックのなかで平手は、官能と諦念を交えたようなボーカルを心地よく聴かせる。特に低音、中音域の声の響きが素晴らしく、シンガーとしての新たな表現を切り開いたと言っていいだろう。〈子供には真似は出来ない君との恋をして〉に象徴される、大人の恋愛シーンを生々しく映し出すリリックも20代中盤に差し掛かった彼女の佇まいを際立たせている。平手自身のキャリアにとっても、ひとつのポイントになる楽曲と言えるだろう。(森)
水曜日のカンパネラ「動く点P」
ドラマ『【推しの子】』(Amazon Prime Video)第7話主題歌となる書き下ろし新曲。ダークに入り組んだ原作のストーリーと、水曜日のカンパネラが持っているぶっ飛んだユーモアセンスはどのようなコラボになるのだろうかと思っていたら、公式サイトのコメントには「アクアとあかねの二人の境遇や心情を、数学の問題に出てくる『動く点P・Q』になぞらえて作ってみたものです」(※1)との弁が。なるほど、こういう方向の飛躍なのかと膝を打つ。前半はマリンバ、途中からピアノが入ってくる楽曲はドラムンベースを基調としたもの。〈頂点Aと頂点B間〉〈小数点も円周率も〉なんていう言葉が飛び出すポップスも珍しいが、最終的には聴き手をさりげなく肯定するメッセージソングになっている。(石井)
平井大「Christmas Wish」
リードトラックの新曲に、平井大自身がセレクトした既存曲、iPhoneで一発録音されたデモ音源などを収めたEPを連続リリースする企画「LUCKY BAG」。第8弾となる『Christmas Wish』の表題曲はタイトル通り、聖なる夜に願いを込めた楽曲だ。まず聴こえてくるのは、美しい鈴の音〈I wish for you on this silent night〉というコーラス。軽快なテンポを刻むビート、クリスマスソングの王道とも言えるコード進行のなかで奏でられるのは、今は離れてしまった“キミ”への想いを描いた歌詞。ポップで華やかなメロディと切ないシチュエーションを対比させることで、幅広いリスナーが共感できる楽曲に仕立て上げている。EPに収められた「Starbucks, Me and You」「冬の予感」などとともにクリスマスシーズンを楽しんで。(森)
※1:https://wmg.jp/wedcamp/news/89705/