GANG PARADEが更新する青春の最高地点 変化を続けて強くなる意志、新たな始まり告げた『TO BE BORN』

 11月30日にLINE CUBE SHIBUYAで開催されたワンマンライブ『TO BE BORN』。脱退を発表したテラシマユウカのラストステージにもなった本ワンマンは、12人のGANG PARADEによる全力のパフォーマンスを観客の胸に焼き付けていた。チケットがソールドアウトしたこのライブの模様をレポートする。

 ステージを覆っている紗幕に投影されたオープニングムービー。ヤママチミキ、ユメノユア、キャン・GP・マイカ、ココ・パーティン・ココ、テラシマユウカ、ユイ・ガ・ドクソン、月ノウサギ、キラ・メイ、キャ・ノン、チャンベイビー、ナルハワールド、アイナスターがひとりずつ映像内に登場。被っていたフードを外して顔を見せるたびにものすごい歓声が上がり、1曲目「Happy Lucky Kirakira Lucky」のイントロが鳴り響いたのだが――何かがいつもと違う。サウンドの厚みが明らかに違うのだ。そして、紗幕が切って落とされ、まぶしいライトを浴びた12人を包んでいたのは、バンドの生演奏だった。「今日って、バンド編成でのライブだったの!?」と驚いたが、細かいことは一旦脇に置いて素直に興奮するに限る。コールをしながら飛び跳ねる遊び人(ファンの呼称)が大量発生した客席が壮観だった。たくさんのギャンパレLEDバンドライトが揺れる風景が美しいと同時に激しい。続いて「パショギラ」と「don't forget me not」も披露された時点で、早くもライブの佳境に差し掛かったかのような熱気がLINE CUBE SHIBUYAを満たしていた。

 メンバー各々の自己紹介を経て、遊び人に無邪気に語りかけたチャンベイビー。「今日は、ホールでのワンマンライブです! 遊び人もメンバーも、まだちょっと緊張しているんじゃないですか? みんなの身体を軽くするために私がTO BE BORN体操を考えてきました! 一緒に身体を動かしてくれますか?」と言われるがままにメンバーも遊び人も巻き込まれたのは、彼女が考案したのだという「TO BE BORN体操」。「肘のボーン」「お尻のボーン」「肩のボーン」「膝のボーン」――身体の4カ所がボーンとなった気がする体操を経て、強力な曲がさらに連発された。“膝”が随所にクローズアップされるダンスが躍動した「lol」、キャ・ノンが〈声聞かせて〉と歌うと、彼女の名前を叫ぶ声が客席の全エリアから沸き起こった「シグナル」、ギャンパレの前身グループ・POPの頃から歌い継がれている「QUEEN OF POP」……ギャンパレのライブは「遊び場」と称されているが、まさしくこの呼び名がふさわしい、開放的に盛り上がれる瞬間の連続だった。

 バンド編成のライブが実現したことをメンバーたちが喜び合ったMCタイム。早く言いたくて堪らず、匂わせ発言をしてスタッフに叱られたのだというココは、「やっと言えた(笑)」と、すっきりした表情を浮かべていた。そして、「バンドのみなさんの力も借りて今日しか見られないギャンパレをお届けします。今日のために私たちも頑張りました。たくさん準備をしてきました。隅から隅まで堪能して、楽しんでください!」とマイカが遊び人に呼びかけたのち、次々に披露された4曲。メンバー各々のスタイルによるラップを満載した「Gangsta Vibes」、和テイストの旋律と煌びやかなダンスサウンドを個性的な振り付けを交えながら表現していた「躍動」、バンド演奏が抜群に合っていた「涙は風に、思いは歌に」、バイオリンの演奏が加わりながらドラマチックな展開を遂げた「Dreamer」。歌うメンバー、踊るメンバーのコンビネーションを絶えず変化させながら各曲の世界を浮き彫りにするのが楽しい。ユニゾンを多用するのではなく、メンバー各々の歌声、ダンスの個性を最大限に活かすのがギャンパレの魅力だと再確認させられた。

 このライブは、新衣装の初お披露目の場でもあった。白を基調としつつ、背面がそれぞれのメンバーカラーなのが斬新。はしゃいでいる彼女たちの姿が微笑ましかった。そしてアイナスターが、後方に控えているバンドメンバーを紹介。ドクソンによって「GANG BOYZ卍」と名づけられたバンドの5人は、JUON(Gt)、奈良悠樹(Gt)、中村泰造(Ba)、山本淳也(Dr)、半田彬倫(Key/Violin)。先日『ニンゲン観察バラエティ モニタリング』(TBS系)に出演してネットニュースになったJUONは、同番組内で歌った曲の一節を披露。半田が「情熱大陸」の一節をバイオリンで奏でた場面も、遊び人を沸かせていた。

 和やかなMCタイムを経て、ライブは後半戦へ。「エキゾチックアニマル」は、ギャンパレがアイドルグループであることを忘れそうになる曲だ。振り付けだけでなく、表情でもゴリラを表現する姿が強烈極まりない。ステージ上は、本能剥き出しの野生の王国と化していた。そして、さらに連発されたユニークな曲の数々。愚連隊の行進によって治安を一気に悪化させた「GANG PARADE」やキュートな歌声と凶悪なデスボイスの高低差が凄まじかった「Peace☆超パニック」、発射された金テープが遊び人に降り注ぐなか、全力の海老反りダンスが繰り広げられた「pretty pretty good」、12人が列車のように結合してステージ上を駆け巡った「Anything Goes!!!!」、バンドメンバー各々のソロプレイを経て雪崩れ込み、大合唱と激しいコールを巻き起こした「BREAKING THE ROAD」と、ステージから片時も目を離すことができなかった。

 「いやあ、終わりたくない時間って本当にあるんですねえ。ここまで駆け抜けてきました。右腕がもげるかと思った(笑)。苦しい時にいちばんに思い出すのがライブ。みんなの笑顔、泣き顔、見守ってくれる表情を思い出して、また頑張ろうって思います。だからこの先、また何かを乗り越えなきゃいけない時は今日を思い出します」――いつも通りの陽気なトーンで話していたのだが、途中で天を仰いだドクソン。この日はテラシマのラストステージでもある。涙を必死でこらえながらおふざけキャラのままであろうしている姿は、胸打つものがあった。ギャンパレがさまざまな試練を乗り越えながら今に至っていることを知ってこちらも、思わず涙腺が緩む。

 そして、「よし! もうこうなったら今この瞬間、今ある声、想いを全部出しきって、歌って、踊って、笑おうぜ!」というドクソンの言葉とともにスタートした「ROCKを止めるな!!」が、ライブ本編を締めくくった。メンバーと一緒に踊り、大合唱する遊び人の汗ばんだ表情が、客席内でキラキラ輝いている。ギャンパレの活動を支えている大切な風景を目の当たりにすることができた。

 アンコールを求める恒例の「まだ足りない!」という声と手拍子に応えてステージに戻ってきたギャンパレ。瑞々しいメロディが疾走する「Priority」が披露されたのち、このライブをもってグループを脱退するテラシマが想いを語った。

 「気づけば8年もの長い時間、WACKで活動してきました。私の東京生活は、たった1日でグループが解散してしまうという想像もしていなかった事件から始まって、当時は『もう立ち直れない』と思ったけど、ある人から『これは終わりじゃなくて始まりだから』と声をかけてもらって……。その言葉を信じて心折れることなくここまでやってこられました。あの時の絶望はGANG PARADEと遊び人、みんなとの幸せな時間の始まりになりました。きっとこんな特別な存在はほかでは作れないだろうし、これが最初で最後でいいって……この特別な存在をずっと抱き締めて生きていきたいです。自分で決めた道ではあるけど、やっぱり寂しいなと思います。でも、この幸せが過去になっても、みんなからもらった愛を思い出すたびに心があたたかくなるんやろうなと思うし、これからのGANG PARADEの活動を見て、その力強さに勇気づけられるんだろうな、と。そう思ったら、前を向いて自分の足で歩いて行けます。みんなのこと、本当に頼もしいし、尊敬していて、私の生涯の誇りです。みんなから貰った愛は枯れることがないけど、私のみんなへの愛も枯れることはありません。自分のすべてを懸けた8年間、もう青春でもなくて、これが私の生活で、人生そのものでした。8年間、愛しい日々を本当にありがとうございました!」――2016年に開催された『新生BiS合宿オーディション』の落選者・テラシマユウカ、ユイ・ガ・ドクソン、ココ・パーティン・ココによって結成されたグループ・SiS。お披露目ライブの翌日に活動休止という非情な出来事を乗り越えてきた彼女の言葉には、強い想いが込められていた。懸命に道を切り拓いた8年間の活動は、厳しい現実と向き合いながらも挫けずに進んできたギャンパレと鮮やかに重なる。グループにとってかけがえのない存在だったことをあらためて実感させられた。

 12人のギャンパレのラストの曲となった「Plastic 2 Mercy」。ステージに向かって届けられたコールは、まるで地鳴りのようだった。肩を組みながら飛び跳ねる遊び人の動きは激しかったが、寂しそうな様子もどことなく滲ませている。テラシマのメンバーカラーである紫色のペンライトが客席全体を染めた。歌い終えたあと、手を繋ぎ合ってお辞儀をした12人のメンバーを包んだ大きな拍手。「ありがとうございました! みんなのこと愛してるよ!」とステージのセンターで叫んだテラシマを大きな歓声が包んでいた。

関連記事