Homecomings『see you, frail angel. sea adore you.』レビュー:4人のドラマーを迎えた新境地、仲間との別れの後も続く旅

 大学で出会った4人が結成したバンド、Homecomings。それから10年以上経ち、メジャーデビューしてからも、彼らの音楽は夢見るようなみずみずしさを感じさせた。それは学生気分でいるわけではなく、仲間と一緒に音楽をやる楽しさを手放したくない、という強い意志を感じさせて、彼らは夢を見続ける努力をしてきた。そんななかで、今年2月、ドラマーの石田成美がバンドを卒業。メンバーは畳野彩加(Vo/Gt)、福田穂那美(Ba/Cho)、福富優樹(Gt)の3人になった。石田の卒業がスムーズに行われたのは、いつかこういう日が来ることを、彼らが予感していたからかもしれない。だからこそ、オリジナルのドラマーがいなくなるという大きな出来事があったにもかかわらず、バンドは前作『New Neighbors』から1年半というスパンで新作『see you, frail angel. sea adore you.』を完成させた。

 本作の収録曲のうち6曲でサポートドラムとして参加したのは、すでにHomecomingsのライブでサポートを務めていた元CHAIのYUNA。今年9月14日にBillbord Live TOKYOで行われたストリングス隊を迎えた"Homecomings Chamber Set"でのライブで、YUNAを加えた演奏を観たが、YUNAの全身を使ってビートを刻むようなパワフルなプレイが記憶に残っている(このライブの模様は新作のCD+Blu-ray盤のBlu-rayに収録されている)。本作にはYUNA以外に、元メンバーの石田成美、THE NOVEMBERSの吉木諒祐、Laura day romanceの礒本雄太が1曲ずつ参加。4人のドラマーがバンドを支えた。

 アルバムはダンサブルなビートを刻む「angel near you」で幕を開ける。曲が進むにつれてなだらかに変化していくギターサウンド。バンドの代表曲「Cakes」を思わせる彼ららしいナンバーだ。続く「slowboat」は、椎名林檎やスピッツなど様々なアーティストの楽曲を手掛けてきた亀田誠治が編曲とプロデュースを担当。荒々しいギターと力強いドラムを全面に押し出しつつも、そこにゆったりしたベースと柔らかなシンセの音色が乗ることでHomecomingsらしい優しさが曲から伝わってくる。

Homecomings - angel near you (Official Music Video)
Homecomings - slowboat (Official Music Video)

 バンドを卒業した石田がドラムを叩く「Moon Shaped」は、映画『三日月とネコ』の主題歌として制作された曲。きらめくようなギターの音色をちりばめながらドラムが曲を引っ張っていく。欠けた月はいつか満ちていく、という歌詞が、1人欠けて3人になったバンドのことを思わせたりもして、石田がバンドに残した置き土産のような曲だ。

Homecomings - Moon Shaped (Official Music Video)

 そして、4曲目「blue poetry」でギアチェンジ。ドラムは激しいビートを刻み、轟音のギターに畳野の歌声はかき消されそうになりながら、3分間足らずの短い時間をバンドは一気に駆け抜ける。そこからシューゲイザー色が強い「luminous」へ。幾重にも重ねられた分厚いサウンドがドラマティックに展開していく。さらに、骨太なバンドサウンドを核にドリームポップ的な叙情性を感じさせる「ghostpia」。吉木諒祐が参加した「recall (I'm with you)」の重量感溢れるバンドサウンドを聴いて、こんなにもスケールの大きな音を鳴らすようになったのかと圧倒された。

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