KREVA、新曲に込めた“生涯学び続ける”姿勢 20年の歩みの中での葛藤や交流も振り返る

KREVAが考えるAIを用いた制作への向き合い方

――「Forever Student」はKREVAさんの多面性が凝縮されている曲でもあるんだと思います。サウンド面に関しては、助走がほとんどないまますぐに本題に入る感じが独特ですね。

KREVA:サビから始めようとは思っていました。イントロももっと長かったけど短くしたんです。

――トラックは作る中でどのようなイメージがありました?

KREVA:イメージはなかったです。ソフトシンセを買って、「どの音がいいかな?」って探している中で最初に「おっ!」と思ったもので一気に作った感じです。トラックには衝動が詰まっていて、「これはいい曲だな」と思っていました。でも、それだけでは満足できないので、展開を増やしていったんです。

――新しい機材に向き合って、「この音で作ってみたい」と思うのは、創作の原動力として大きいですか?

KREVA:はい。買ったプラグインで最初にいいと思った音を使って勢いで作るんです。衝動をプリントするというか、「作りたい! この音使いたい!」と思った衝動を形にするのが大事なんですよね。

――プラグインはアップデートされていきますし、そういう点でもKREVAさんは今の時代にすごく合ったミュージシャンなんだと思います。

KREVA:そうですね、楽しんではいます。AIとかもめちゃくちゃ使っているし。

――どういう使い方をしているんですか?

KREVA:AIが作ったものをサンプリングでカットアップするというか、素材だけ貰うっていう感じですかね。世の中の多くの人がイメージするAIって“生成”だと思うんですけど、音楽に関しては少し違っていて、「要らない部分を勝手に取ってくれる」っていう感じなんですよ。ロボット掃除機や自動空気清浄機に近い感じ。音の必要ない部分をリアルタイムで取り除き続けてくれるんです。そういうところは便利なので、めちゃくちゃ使っています。

――AIとの向き合い方はいろいろ議論されているところですけど、使い方次第ですよね?

KREVA:俺はすごく面白いと思ってます。たとえば写真でも、「ここまで海にしてくれ」とか、すぐにできるし。“気持ち悪さ”と“快感”の中間みたいなものを作れる過渡期に今いて、それが面白いです。2年後くらいには今の感じのものは古くなっているかもしれないけど、そこも含めて楽しんでいますね。

――AIを含めたテクノロジーの機械的な処理に関しては人間技ではできない速度と精度ですから、そこは大いに活用するべきでしょうね。

KREVA:独学で音楽をやっている身からすると、本当に助かります。今、洗濯板を買って手で衣類を洗う人がいないのと同じですね。音を削っていくのって本当に難しいんですよ。「ここが要らない」っていうのは、人間の聴覚では聞こえない部分もあるので。そういうのを勝手に感知してやってくれるのは、すごく助かります。

――AIやテクノロジーの進化によって広がる創作の可能性に関しては、どのように考えていますか?

KREVA:あくまで既に存在する曲のビッグデータの中での「ここが要らない」という指示なので、まったく新しいものを生み出すためにはやっぱり「プラス人の力」が必要なのかなと思います。

――こういう新しいテクノロジーもそうですけど、面白がれることが尽きないから「Forever Student」なんですよね。

KREVA:学ぶ気さえあれば、YouTube動画にも先生はたくさんいるし、フレッシュさを感じるものがあるんですよね。

“時勢”に合わせた新しい環境でのチャレンジ

――新しいことといえば、先ほども少し話が出ましたが自分の会社を作りましたね。

KREVA:世の中の流れが変わってきている中で、自分も時勢に合わせていきたいと思ったんですよね。より、思ったことをやれるのかなと。来年の1月に『原書展』をやるんですけど、こういうことも「やる」と決めたらすぐに動いていけるから。もちろんそれと同時に「これは全部俺の責任になる」という怖さはありますね。まあ、謎に美人秘書3人雇うとかいうことを始めなければいいんじゃないですか。

――そういうの、ちょっと憧れますけど。

KREVA:要らない(笑)。

――そうですか(笑)。

KREVA:真面目に言うと、すげえイケメンの付き人が欲しいですね(笑)。

――ハリウッドスターって、ムキムキで大男のボディーガードが付いていたりするじゃないですか。ああいうのは?

KREVA:それも嫌だなあ。息苦しいじゃないですか。

――(笑)。社長になって何か変化したことはありますか?

KREVA:1曲1曲をより大事に作っていると思います。「Forever Student」もそうですね。聴く人にとっては「時間がかかった」というのは関係ないことなので、そこは面白いと同時に悩ましいところですけど。

――音楽に限らず、作った側の労力と受け手側の評価は必ずしも結びつかないですからね。

KREVA:そう。星を取ったレストランとかもそうですけど、「そこ、そんなに泡立てなくてもいいですよ」とかシンプルに焼いただけの魚が美味しかったりしますし。でも、作ってる側からすると、「こんなのでいいの?」って思っちゃう。そういう感じなのかもしれない。

――音楽に関しては、完成形が厳密にはないというのもあるのかも。日が経つと別のアプローチで作り直したくなるのは自然なことですから。

KREVA:時間的制限って大事ですよね。そういうのがなければずっとやっているので。

――活動に関する長期的なビジョンは、何か考えるようになっていますか?

KREVA:そういうものはまったくないですね。日々必死に生きていくっていう感じです。

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