斉藤和義、トリオ編成で挑んだ『青春58きっぷ』 三位一体のアンサンブルを紡いだ至極の夜に

斉藤和義、トリオ編成『青春58きっぷ』レポ

 斉藤和義がスリーピース編成で挑む全国ツアー『斉藤和義 ライブツアー 2024 “青春58きっぷ” ~Trio de Pon~』の東京公演を11月8日と9日、東京・Zepp Hanedaにて開催した。

 本ツアーは9月27日、愛知県・Zepp Nagoyaを皮切りに全国10都市15会場で行われたもの。玉田豊夢(Dr)、隅倉弘至(Ba)というメンツでプレイするのは、2018年9月に一夜限りの開催となったプレミアステージ『KAZUYOSHI SAITO 25th Anniversary Live 1993-2018 25<26 ~これからもヨロチクビーチク~ After Party at Zepp Sapporo』以来。また、全公演がライブハウスでの開催となる斉藤和義単独としての全国ツアーは、2014年開催の『RUMBLE HORSES』ツアー以来10年ぶりとなる。

 筆者が観たのは、ツアーファイナルとなった東京2DAYSのうちの1日目。定刻となり、玉田、隅倉がステージに現れるとフロアから大きな拍手が巻き起こる。遅れて斉藤が登場し、玉田によるソリッドなフィルインに導かれ、斉藤が獣の咆哮のようなフィードバックノイズを轟かせるとあちこちから歓声が上がる。タイトに刻むドラムに合わせてオーディエンスから自然発生的にハンドクラップが湧き上がる中、斉藤が「イエーイ!」と大きくシャウトし「ささくれ」(2002年『35 STONES』収録)の疾走感あふれるパフォーマンスでライブはスタートした。ステージに向かって左に玉田のドラムセット、向かって右に隅倉のベースアンプが聳え立ち、中央の斉藤を両脇からががっちりと支えるようなフォーメーションである。

左から玉田豊夢(Dr)、斉藤和義(Vo/Gt)、隅倉弘至(Ba)
左から玉田豊夢(Dr)、斉藤和義(Vo/Gt)、隅倉弘至(Ba)

 続く「劇的な瞬間」は、奇しくもアルバム『35 STONES』で「ささくれ」の次に収録されているスリリングなナンバー。真っ赤な照明に照らし出された3人が抑揚を抑えたアンサンブルを奏でると、会場のボルテージは少しずつ上がっていく。セクションによってグッとテンポを落としたり、そうかと思えばエンディングに向けて少しずつテンポを上げていったりと、「たった3人のその場の演奏を合わせているだけだからこそ、緩急自在に動き回れるんだ」と言わんばかりだ。

 2015年にリリースされたアルバム『風の果てまで』の冒頭を飾る「あこがれ」は、どこか切なくもファンタジックな楽曲。間髪入れずにファンキーなカッティングをかき鳴らし、7色の煌びやかな照明の下で「愛のソリーナ」を披露する。キメを多用したタイトなドラムにベースがしっかり寄り添い、次の瞬間にはギターリフに合わせユニゾンで応戦。ロックバンドとして最小限の編成だけに、ほんの少しでもタイミングがズレれば一瞬にして破綻してしまうようなアンサンブルを、息の合った演奏で成立させていた。

 「トリオ編成でのライブツアー、今日と明日やってファイナルです」と斉藤。「あと500本ぐらい余裕でやれそうな気もするけどね」と豪語すると、フロアからは大きな歓声が上がる。「それにしても、ここにきて急に寒くなりましたよね。なんだかイソギンチャクがキュッと萎んじゃいますけど」などと唐突に下ネタをぶっ込んでオーディエンスの失笑を買い、「ここ羽田は我々の地元でね。やっと故郷に帰ってきたような懐かしい気持ちでいっぱいです」などと口から出まかせのホラをメンバーと一緒になって言い募るなど、ひとしきりMCで遊んだあと斉藤の代名詞とも言える名曲「ずっと好きだった」を演奏。大人にならなければわからない、ほろ苦いラブソングを切々と歌ってMCとのギャップを見せつけた。

 「ワン、ツー、スリー、フォー!」とドラムがカウントを叫び、キャンディーズの「年下の男の子」を彷彿とさせる(もっと言えば、その元ネタであるトム・ジョーンズの「Somethin' 'Bout You Baby I Like」を思い起こさせる)「純風」でノスタルジックな気分に浸った後は、The Beatlesの「I Saw Her Standing There」を思わせるリフが印象的な「通りに立てば」へ。〈やっぱり裸になりましょう〉と歌ったあと、オーディエンスと〈Oh Yeah!〉をシンガロングして一体感を高めた。

 ライブ中盤は、ヘヴィなミドルチューン「レインダンス」「郷愁」を続けて演奏し、トレモロを軽くかけたギターをかき鳴らしながら、ハチロクのリズムがフィフティーズ風味の「君のうしろ姿」で一気にタイムスリップしたあとは、1997年にリリースされた斉藤の代表曲「歌うたいのバラッド」へ。たった3人のミニマムな演奏が、この曲の美しいメロディと斉藤の真っ直ぐな歌声を存分に引き立てる。曲のエンディングでは、言葉では言い表せない思いを長い長いギターソロに託してみせた。

斉藤和義

 さらに、めくるめくサイケデリアを体現した「Summer Days」でうだるような夏を呼び起こし、「いやー楽しいです。じゃあ、どんどんいきますか」と斉藤が嬉しそうにこぼした後に、スリリングな「問わず語りの子守唄」、つんのめるようなドラムの上で歪みまくったベースソロを轟かせた「マディウォーター」、そしてThe Damnedの「Neat Neat Neat」もかくやと言わんばかりのパンクチューン「FISH STORY」、弾むようなモータウンビートに乗せ歌われる名曲「歩いて帰ろう」とラストスパートをかけ、さらに高速シャッフルビートの「ベリー ベリー ストロング ~アイネクライネ~」をオーディエンスとシンガロングして本編は終了した。

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