「ヒビカセ」「ECHO」から10年 ボカロシーンのエレクトロサウンド隆盛の原点、2014年投稿曲を振り返る

 さらに長年活動し続けるピノキオピーやDECO*27といった、熟練のクリエイターによる2014年投稿曲を聴くとその傾向はより顕著になるだろう。ピノキオピー「すろぉもぉしょん」、DECO*27「ストリーミングハート」などは、それぞれバンドサウンドとエレクトロサウンドを絶妙に織り交ぜたアレンジで、シーンのサウンド潮流がまさしく過渡期に差し掛かっていることを如実に表していたという点も非常に興味深い。VOCAROCK一強時代が終盤に差し掛かり、多様性をもって新たな時代を迎え始めたボカロシーン。当時こそ、いち早くそこに頭角を現したのはポップスであったものの、エレクトロサウンドという現代の一大勢力も、10年前のこの時代から確かに萌芽し始めていたのである。

DECO*27 - ストリーミングハート feat. 初音ミク

 翌2015年もn-buna・Orangestarの二強時代は続く一方、これまでのVOCAROCKとはやや毛色の違うダンサブルなバンドサウンドを強みとするナユタン星人、そして従来のシーンにはなかった明らかな異質さを持つエレクトロサウンドが特徴的なMARETUらが躍進し始めた年でもある。

ピノキオピー - 頓珍漢の宴 feat. 初音ミク / Tonchinkan Feast

 重ねて、「頓珍漢の宴」「チャンバラジョニー」等のヒット作を同年にも生み出したピノキオピー・DECO*27の両名も、そのサウンドは明確にエレクトロ色が強まり始めたと言っていい。その後も2018年まではダンスロックへの支持を優勢としつつも、Gigaやぬゆり、八王子Pらによって着々と固められていったボカロエレクトロの土壌。それらが2019年前後にsyudouやjohn、すりぃ、Ayase、wotaku、柊キライといった面々によって一気に花開き、現在の確固たるジャンルの人気が形成されたというわけだ。

 現シーンのムードとも地続きとなる10年前に投稿された名ボカロ曲の数々。その功績に思いを馳せつつ、アニバーサリーイヤーともなるこの機会に、当時のVOCALOID文化を彩ったナンバーを改めて一聴してみてはいかがだろうか。

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