BEGIN、「勝手にシンドバッド」カバーから「涙そうそう」まで 音楽の街=茅ヶ崎を彩る極上の宴

 10月2日にアルバム『ビギンの盆マルシャ』をリリースしたBEGINが9月28日、神奈川・茅ヶ崎市民文化会館で『茅ヶ崎FM感謝の開局一周年、怒涛のありがとう企画!BEGINコンサートin茅ヶ崎』を開催。茅ヶ崎FMのオフィシャルアプリでも、その模様が生中継された。

 今回の公演は、コミュニティFMステーション・茅ヶ崎FMの開局一周年を記念して行われたライブで、前日の27日には同局の『EBOSHI RADIO STATION』内「エボラジFRIDAY!!」にゲスト出演し、茅ヶ崎に来たのは初めてだったというが、BEGINの故郷である石垣島と茅ヶ崎には“音楽の街”であるという共通点があり、シンパシーを感じたことなどを話していた。

 会場となった茅ヶ崎市民文化会館の前にある市役所前広場では、この地の出身である加山雄三の金色の立像が出迎えてくれたほか、茅ヶ崎市がハワイのホノルル市・郡と姉妹都市協定の締結から今年で10周年を迎えたことから、“ALOHA”と書かれたアルファベットのモニュメントが飾られ、隣接する公園ではハワイをテーマにした催し物が開催されていた。ライブでは石垣島/沖縄、茅ヶ崎、ハワイ、さらにはBEGINが提唱するブラジルのリズム・マルシャも加わり、“世界の音楽”がひとつに鳴らされたライブになった。

比嘉栄昇(Vo)

 通常のツアーとは異なる特別なライブ。メンバーがステージに登場すると、大きな拍手と歓声、沖縄独特の指笛が彼らを出迎えた。「この場に合うような選曲をしてきたので、自分の家のリビングでくつろいでいるような気持ちで楽しんでください」と、比嘉栄昇(Vo)。古くからの熱心なファンやラジオのリスナー、さらにはファミリー層など、実に多彩な層の観客が会場を埋め尽くし、泣く子どもがいればそれをたしなめ、トイレに立つ観客には優しく言葉をかけたりなど、歌と演奏以外でも大忙しだったメンバー。コンサートやライブと呼ぶよりも、お祭りや宴と呼ぶのが相応しいとも思えるステージを展開した。

 特別だったのは雰囲気だけでなく、選曲もそう。1曲目に代表曲「恋しくて」を披露する大サービス。ブルージーなサウンドに、スキャットやフェイクを乗せ、会場を南の島の海辺のバーにいるかのようなムードへといざなった。続いて俳優の桐谷健太による「海の声」のセルフカバーを繰り出すと、会場にはあたたかな手拍子が沸き起こった。

島袋優(Gt/Vo)

 茅ヶ崎にちなんだ楽曲のカバーコーナーは、地元のファンはもちろん、幅広い世代の観客を楽しませた。まずは神奈川出身のメンバーを中心に結成されサーフミュージックを日本に広めた、ザ・ワイルドワンズの「思い出の渚」。BEGINの3人は、中高生の頃によく聴いていた楽曲とのこと。ゆったりとした横揺れのサウンドに、体を揺らしながらリズムに合わせて手を叩いた観客。メンバーはビーチボーイズのようなコーラスで美しいハーモニーを聴かせ、MCではザ・ワイルドワンズのキーボーディストの故・渡辺茂樹とツアーを回った思い出を語る場面もあった。

 続いて、BEGINが沖縄で開催している『うたの日コンサート』のエピソードとともに、加山雄三の「お嫁においで」をカバー。島袋優(Gt/Vo)がボトルネック奏法で、ハワイアン特有のスチールギターを再現するなど演奏でも魅せていく。また茅ヶ崎で忘れていけない、サザンオールスターズからは「Ya Ya (あの時代を忘れない)」をカバー。3人は高校時代にサザンオールスターズをよくカバーしていたそうで、同曲を歌うのは高校3年の時以来だという。曲名にちなんで高校時代のバンド活動の話に花を咲かせた3人。まるで桑田佳祐が降りてきたかのように、ハスキーな歌声を聴かせた最後には、上地等(Pf/Vo)が学生時代に組んでいたバンドの名前(パンパース)を叫んで会場を沸かせた。

上地等(Pf/Vo)

 BEGINらしい独自の視点による楽曲も好評で、一曲につき1エピソード、ユーモアあふれるトークで会場を和ませながら進行した。ヘルシーで女性に人気のアサイーボウルを題材にした「アサイーボウル」では、ハワイで人気のメニューだが実はブラジル発祥であることを口にし、沖縄のお菓子・サーターアンダギーの石垣島での呼び名を歌にした「砂糖てんぷら」、そして「竹富島で会いましょう」では島の名物でよく小瓶に入って売られている“星砂”に触れ、「あれは虫の死骸なんですよ」とぶっちゃけコメントで笑いを誘った。時にはアコースティックギターをウクレレに持ち替え演奏し、透明感のある優しい歌声を聴かせた比嘉。歌と演奏とトークによる極上のエンターテインメントを観客は楽しんだ。

 またBEGINのライブでは欠かせない、「オジー自慢のオリオンビール」が始まると、観客は総立ちになってエイサー(沖縄の踊り)を踊り、指笛を鳴らし、客席のあちこちでペンライトならぬ“オリオンビールの提灯”が掲げられ、親戚や近所が集まっていつの間にか宴が始まったかのような雰囲気に。楽曲の途中では、この日のサポートドラマーで“HoRookies”というバンドでも活動している比嘉の長男・舜太朗にスポットを当て、HoRookiesの「結の唄」が歌われる場面も。「おまえ、TBSの『モニタリング』(『ニンゲン観察バラエティ “モニタリング”』)に出てたそうやね」など父親たちに茶化され、どこか恥ずかしそうな、しかしうれしそうな表情で、親譲りの美しく澄んだ歌声で同曲を披露した舜太朗。その様子を比嘉はどこか誇らしげに見つめ、観客もあたたかな気持ちで見守った。そんなほっこりとした展開で忘れていたが、まだ「オジー自慢のオリオンビール」の途中。舜太朗に対する大きな拍手とともに、再びリズムが打ち鳴らされ、楽曲はさらににぎやかさを増していった。

関連記事