いきものがかり×SUPER BEAVER、繋がりと共鳴から実現した初ツーマン リスペクトを示し合う特別演出も

いきものがかり、今日限りの特別な1曲を披露

 いきものがかりのライブの時間になると、「どうも、いきものがかりです!」と吉岡聖恵(Vo)と水野良樹(Gt/Pf)が登場。2人は「SUPER BEAVER、熱すぎない?」(水野)、「カッコいい……!」(吉岡)、「正直なこと言ってもいい? すごくハードルが上がった(笑)」(水野)と飾らずにトークしていて、フロアもグッと和む。ロックバンドとしてバシッとキメるSUPER BEAVERとはライブの入り方が真逆だ。ライブのスタイルも、音楽性も、普段活動しているフィールドも近くはない2組だが、しかし何か通じるものがあると明らかになるのが対バンの面白さだろう。1曲目の「ありがとう」は、この日に限り、ライブ出演のオファーに応えてくれたSUPER BEAVERへの感謝の歌として歌われた。

いきものがかり

 いきものがかりのセットリストはアッパーチューン中心で、2人編成になってからは鍵盤を弾く機会が多かった水野もエレキギターに専念。特に「青のなかで」は、水野のロックなフレージングと吉岡の伸びやかな歌声のコントラストが鮮やかで、聴き応えが抜群だ。サポートメンバーによるキレのあるプレイや、SUPER BEAVERのライブを経てすでに温まっていたフロアとの掛け算によって、ライブハウスらしい熱気が生まれていった。また、タオル回しが定番の「じょいふる」では、勢い余ってタオルを落としてしまった吉岡が、前方の観客から借りた[NOiD]のタオルを掲げる場面も。双方の文化のクロスオーバーを象徴する素敵な場面だった。

吉岡聖恵(いきものがかり)
水野良樹(いきものがかり)

 いきものがかりが2006年より所属しているソニーミュージック内のレーベル・エピックレコードジャパンは、SUPER BEAVERが2009年に一度目のメジャーデビューを果たしたレーベルでもある。ライブの終盤では、水野がSUPER BEAVERとの関係について「(SUPER BEAVERが)平坦じゃないストーリーの特に深いところにいた時に、話をする機会をたまたまもらって」と改めて説明。続けて「あの時苦しかった人たちが、肯定の嵐のようなライブをしていることに心を打たれました」と先ごろのSUPER BEAVERのライブに対する感想を語った。

 「返事ってわけじゃないけど、今日だけの特別バージョンで」と、いきものがかりがラストに演奏したのは「コイスルオトメ」……と思いきや、SUPER BEAVER「人として」を組み込んだマッシュアップバージョンだった。「コイスルオトメ」のイントロを経て、吉岡が「人として」のAメロを歌い始めるというサプライズに、フロアからどよめきが上がる。そして2番に入るタイミングで「コイスルオトメ」に戻る構成。「人として」の部分を歌う吉岡のボーカルからは、毅然としていられる時もそうでない時もひっくるめて、全体を包み込む優しさが感じられた。“私はこうありたい”という強い意志に貫かれた、聴く人の心を目覚めさせる力を持つ渋谷の歌とは違う良さがある。

 2組の重なりによって音楽の楽しさが何倍にも膨らむような、「一緒なら、もっと楽しい!」をまさに体現したシーンとともに、ライブは終演を迎えた。バンドとして人生を歩む中で見つけたピュアな感情を音楽に落とし込み、生身の姿でリスナーに問いかけるロックミュージシャンとしてのSUPER BEAVER。作り手個人の物語から離れたところで、音楽がリスナーの人生と響き合う瞬間に意義や素晴らしさを感じるポップミュージシャンとしてのいきものがかり。2組のスタンスは明確に違っているが、受け取った“あなた”が主役であるというメッセージは両者共通のものだろう。そんな共通項がライブを通して伝わってきたという意味でも、十数年前から繋がっていた2組のドラマが回収されたという意味でも、いいツーマンだった。また何年後かに共演が観られたら嬉しい。

『〜一緒なら、もっと楽しい!〜三ツ矢140th SPECIAL LIVE』
アーカイブ視聴:https://youtu.be/1QkNHm9A2HA
(期間限定公開)

いきものがかり オフィシャルサイト
SUPER BEAVER オフィシャルサイト

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