いきものがかり、世代や時代を超えて愛される“今” 『こんにつあー!!2024』で体現した豊かな音楽空間

いきものがかり『こんにつあー!!2024』レポ

 いきものがかりが5月25日・26日、神奈川・ぴあアリーナMMでワンマン公演『いきものがかりの みなさん、こんにつあー!!2024 〜あなたと!わたしと!みんなで!歌いまSHOW!!〜 横浜にじゅうまる公演』を開催した。本稿では26日の模様をレポートする。

 昨年12月に2人体制になって初のアルバム『〇』をリリースし、今年2月から本作を携えた約12年ぶりの全国ホールツアーを回ったいきものがかり。今回のぴあアリーナMM公演は、その追加公演となる。アルバム『〇』の収録曲を中心に、配信リリースされたばかりの新曲から、代表曲や初期のレア曲までを披露。世代や時代を超えて愛されるいきものがかりの魅力を証明してみせた。

 17時に開演すると“〇”をモチーフにしたカラフルなアニメ映像、ストリングとピアノによる柔らかいSEとともに、バンドメンバーの玉田豊夢(Dr)、安達貴史(Ba)、林部直樹(Gt)、足立賢明(Mani)、バンドマスター 本間昭光(Key)、そして、いきものがかりの吉岡聖恵(Vo)、水野良樹(Gt/Pf)がステージに登場し、客席を埋め尽くした観客から温かい拍手が送られる。

 スクリーンに「誰か」の文字が映され、水野がピアノを弾き始める。オープニングナンバーは、アルバム『〇』収録曲「誰か」。白い衣装に身を包んだ吉岡は、“ひとりじゃない、生きてほしい”という切実な願いを込めた歌詞を丁寧に紡ぎ出していく。楽曲の後半にバンドの演奏が加わり、〈なんども なんども 世界は裏切る/でもたしかに きみは生きてる〉というフレーズが広がって大きな感動へと結びついた。

いきものがかり ライブ写真(撮影=岸田哲平、深野輝美)
水野良樹

 続いて水野がエレキギターを持ち、代表曲の一つ「ありがとう」へ。吉岡は笑顔でオーディエンスに手を振り、ゆっくり客席とステージの距離を縮めていった。さらに「横浜のみなさん、今日は一瞬に楽しんでいきましょう!」(吉岡)という呼びかけから始まった「きっと愛になる」では手拍子が起き、会場全体が心地いい一体感に包まれる。メンバーの“ライブに参加しやすい雰囲気を作りたい”という思いが伝わってきた。

 「ぴあアリーナMM、満員です! 約12年ぶりのホールツアーを終えて、追加公演。本当の千秋楽です! いつも通りのライブをやるけど、“ちょっと増し”でやりたいと思います!」と水野が満面の笑顔で挨拶。吉岡の「横浜のみなさーん! こんにつあー!」の呼びかけに、観客が「こんにつあー!」というコール&レスポンスで声を出したあと、3月に配信リリースされた新曲「青のなかで」へ。ペンライトが青い光を放ち、青春を想起させるサウンドと歌が響き渡り、瑞々しいムードが広がる。

いきものがかり ライブ写真(撮影=岸田哲平、深野輝美)
吉岡聖恵

 さらにメジャー1stアルバム『桜咲く街物語』収録曲「KIRA★KIRA★TRAIN」ではポップなバンドサウンドに乗って吉岡がタンバリンを叩き、バルーンが客席に放たれる。そして『プリキュア』20周年記念ソングとして制作された「ときめき」、『映画プリキュアオールスターズF』主題歌「うれしくて」と『プリキュア』関連の楽曲を続けて披露。「うれしくて」では“LA LA LA〜”という合唱が生まれ、カラフルなペンライトが左右に振られる。水野が奏でる叙情的なピアノのフレーズも印象的。2人体制になってからは水野が(ギターだけではなく)鍵盤をステージで演奏するようになり、ライブの表現の幅は確実に広がった。「セットリストの1曲1曲、今日が最後と思うと、愛おしく演奏させてもらっています」という水野の言葉も心に残った。

 ホールツアー本編でも行っていた“ペンライト消灯式”では、水野が「上白石萌音さんのライブで“ペンライト消灯式”をやっているのを見まして、僕らもやってみようと思います」と呼びかける(前日の25日公演では上白石がサプライズで登場し、“ペンライト消灯式”を行った)。

 「今日は新しい曲もあるし、懐かしい曲もやっていきます。次の曲はたぶん15年ぶりくらいにやるのかな」(水野)、「曲をもらったとき、素敵すぎて。グッときすぎて、レコーディングで涙声になった思い出があります」(吉岡)という会話に導かれたのは、「ソプラノ」。メジャー2ndアルバム『ライフアルバム』に収録されたこの曲は、山下穂尊の作詞・作曲による切ない失恋ソング。恋の終わりの瞬間を迎えた2人の感情を生々しく描き出すこの曲に、オーディエンスはじっくりと耳を傾けていた。さらに、ギターロック然としたイントロから「コイスルオトメ」へ。吉岡のエモーショナルな歌声によって、音源とは一味違う魅力を引き出してみせた。アウトロにおける、水野の渾身のギターソロも素晴らしい。

いきものがかり ライブ写真(撮影=岸田哲平、深野輝美)
水野良樹

 ここで吉岡がバックステージに下がり、お着換えタイム。ステージに残った水野が「10代の人? あー元気ですね!」とトークを繰り広げると、10代以下の小さな子から80代まで、幅広い年齢層のリスナーがこの場所に集まっていることがわかる。2006年にメジャーデビューし、数々のヒット曲によってJ-POPシーンに大きな功績を残してきたいきものがかり。客席を見渡すだけで、「こんなにも幅広いリスナーに愛されているんだな」ということが実感できた。

 吉岡が戻り、「笑顔」からライブは再開。水野が「『みんなで!歌いまSHOW!!』なので、口ずさんでもらえたら嬉しいです」と呼びかけると、会場にゆったりとした歌声が広がっていく。続いては「YELL」。コーラスのパートを水野が担い、2人の歌声が重なり合うシーンも今回のツアーの大きな見どころだったと思う。

 さらに吉岡と山下が歌詞を共作した「月とあたしと冷蔵庫」を披露し、ここからライブはクライマックスへと向かう。『2001年宇宙の旅』のオープニング曲として知られる「ツァラトゥストラはかく語りき」(リヒャルト・シュトラウス)が流れ、なんとあばれる君が登場。そのまま、あばれる君がMVとシングルのジャケット写真に登場した新曲「運命ちゃん」へ。水野はショルダーキーボード、あばれる君はスモークマシーンを持って、この日限りのコラボが実現。さらに総勢20名の“横浜にじゅうまるダンサーズ”も加わり、エンタメ感溢れるステージが繰り広げられた。

 さらに「気まぐれロマンティック」ではお揃いの振付で盛り上がり、「じょいふる」では吉岡の「一緒に歌えますか!?」という声に応えて、タオルを回しながらシンガロングが発生。「ブルーバード」では迫力溢れるサウンドが鳴り響き、会場の高揚感はピークに達した。

いきものがかり ライブ写真(撮影=岸田哲平、深野輝美)

「横浜の駅前で路上ライブをやったこともあるし、最後の路上ライブも横浜。MVを撮ったこともあって、思い出のある横浜で新しいステージをみなさんと一緒に踏めて、嬉しく思っています」(吉岡)

「最後に、僕らのはじまりの曲を聴いてもらいたいと思います」(水野)

 という言葉から、メジャーデビュー曲「SAKURA」へ。切なく、叙情的な思いが込められた歌には、時を超えて愛され続けるタイムレスな魅力が刻まれていた。

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