ゆず×ゆりやん、AKB48×ノブコブ吉村、浜崎あゆみ×熊プロ……芸人出演MVの魅力は“ギャップ”と“人間味”?
リアリティという部分では、ケツメイシの「涙」(2004年)のMVに出演したダイノジも忘れてはならない。同MVは、意気投合してお笑い芸人になることを志すふたりの若者が、満席の会場の舞台に立つまでを描いた内容。溢れ出る感情について歌われた楽曲の世界観と、ダイノジといういつまでも情熱的なイメージがある芸人像をリンクさせた名作MVである。ちなみにダイノジの大谷ノブ彦は、ケツメイシの「手紙」(2001年)を聴いた際に「自分の歌だと思っちゃった」(YouTubeチャンネル「ダイノジ中学校【エンタメチャンネル】」より)と共感したことを明かしていたが、より深い思い入れを持って「涙」のMVにも参加したのではないだろうか。
浜崎あゆみの「Just the way you are」(2023年)には、紅しょうがの熊元プロレスが出演。ここでまず言及しておくべきは、熊元が浜崎の大ファンであるということ。2023年4月5日、12日放送『かまいガチ』(テレビ朝日系)では、紅しょうがが浜崎の前でネタ披露することになったものの、浜崎を好きすぎるがゆえに熊元がネタを飛ばすなど、ガチガチに緊張して使い物にならなくなる状態に。そんな浜崎にゾッコンな熊元が、浜崎の歌をリップシンクした同曲MV。〈どうして自分は周りと違う?/どうしたらみんなと同じになれる?〉と自問自答を重ねる曲冒頭は、熊元だけではなく、さまざまな芸人たちがお笑いの道を目指すことになったきっかけや心情を言い表しているようである。また、良いところも欠点も自分らしさであると認め、信じた道を進もうとする歌詞は、大阪から東京へ進出して芸人として生きることをより強く決意した熊元の心意気と近いものを感じることができた。
とろサーモンの久保田かずのぶが出演したGADOROの「クソ親父へ」(2023年)のMVは、いつもバラエティ番組などでヒール役を演じながら、時折、人情味を窺わせる久保田の印象がうまく活かされたキャラクター設定になっていた。MVのストーリーは、とにかく不器用で、素行の悪さから妻に愛想をつかされるほどダメな親父(久保田)と息子(GADORO)の関係を映し出したもの。そんな父親が、ラッパーを目指す息子にかけた「俺にはラップは分からん、何言っちょるかも分からん」「お前が武道館に立とうと立たまいと、お前はとっくに俺の誇りだ」という言葉が出てくる後半は、“クソ親父”の生き様がにじんでいて泣けてくるところがある。ちなみに〈ジャイアンツが負けた日には/すぐに怒鳴り出す〉との歌詞も出てくるが、久保田は2022年5月31日、重鎮 オール巨人の著書に書かれていた内容に苦言を呈した流れで、Twitter(現X)に「ちなみにプロ野球は #巨人軍が好きです」と投稿していて、偶然かもしれないが、歌詞との因縁を感じてしまった。
お笑い芸人が出演しているMVは見応えがあるものが多い。その理由はまず、いつもふざけたりバカなことをやったりしている芸人たちの意外な顔を見ることができるからということが挙げられるだろう。また、プロの俳優の演技的なうまさとはまた異なり、リアルな人間味が感じられるところもお笑い芸人が出演するMVのおもしろさだと言えるかもしれない。
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