Tommy february6、フィッシュマンズ、Lamp、THE BACK HORN……海外でリバイバルヒットする国内バンド
近年、日本の70〜80年代のシティポップやアンビエント、ジャズ/フュージョンが、インターネットを通じて海外のリスナーの間で人気を博している。このムーブメントはそれまでの草の根的な広がりを背景に2020年頃から音楽配信プラットフォームやSNSを起点に一般的にも知られるようになった。しかし最近、新たにY2Kや2000年代のJ-POPアーティストやバンドの楽曲が海外リスナーの間で発掘され、再評価されているのだ。
その代表例として、まず挙げられるのがTommy february6とTommy heavenly6だ。the brilliant greenのボーカルとしても知られる川瀬智子によるこれらのソロプロジェクトは、今年に入ってからK-POP周辺や欧米アーティストのレコメンド、TikTok上でのバズにより、にわかに注目を集めている。
例えば、今年4月に開催された有名音楽フェス『Coachella Valley Music and Arts Festival(コーチェラ)』でヘッドライナーを務めたドージャ・キャットは、SNS上でTommy heavenly6の楽曲「Wait till I can dream」を紹介している。また、TWICEのNAYEONは、ソロ曲「ABCD」のMVや音楽番組のステージでTommy february6を彷彿とさせるメガネとプレッピールックで登場し、話題を呼んだ。このTommy february6の少しオタクっぽいビジュアルは、現在のファッションシーンのトレンド“ギークシック”ともリンクしていることから、その文脈でも注目を集めている。
Tommy heavenly6 - Wait till I can dream https://t.co/BjTGpzHzfj via @YouTube
— DOJA CAT (@DojaCat) March 7, 2024
また、2021年に2000年代のソニーミュージック所属時代のMVがYouTubeで公開され、海外リスナーからのコメントが投稿されるようになっていたことも、直近の再評価につながっていると考えられる。
さらにTommy february6/Tommy heavenly6の音楽性も、昨今の音楽トレンドと強く結びついている。例えば、Tommy heavenly6は、近年再評価されているポップパンクに通じる要素を持っている。一方、Tommy february6は、チャーリー・XCXが今夏大ヒットさせた最新アルバム『BRAT』でも取り入れたエレクトロ〜ダンスポップサウンドが印象的だ。実際、チャーリー・XCX自身も過去にTommy february6の影響を公言しており、2000年代のエレクトロ〜ダンスポップ自体の再評価が進むにつれて、Tommy february6の再評価もさらに進んでいく可能性が高い。
国内で長年にわたり根強い人気を誇ってきたフィッシュマンズも近年、SNSや音楽プラットフォームを通じて海外の音楽ファンに“発掘”され、再評価されている。フィッシュマンズが海外で大きな注目を集めるきっかけとなったのは、1999年にリリースされたライブアルバム『98.12.28 男達の別れ』だ。同作は、2020年に有名音楽レビューYouTubeチャンネル『The Needle Drop』のホスト、アンソニー・ファンタノによって「史上最も過小評価されたアルバム」の一つとして紹介された(本動画は現在までに160万回以上再生されている)。
これをきっかけに海外でも広く知られることになり、今ではTalking Heads『Stop Making Sense』やDaft Punk『Alive 2007』といった世界的アーティストによるライブアルバムの名盤を抑えて、アメリカ最大手の音楽コミュニティサイト『Rate Your Music』の「史上最高のライブアルバム(Top albums of all time Only include: live)」ランキングの1位に君臨し続けている(※1/2024年8月22日現在)。
また、同作にライブバージョンが収録されている「LONG SEASON 」は、オーストラリア出身の人気DJ/プロデューサーであるモール・グラブによってリミックスされ、人気DJ配信プラットフォーム『Boiler Room』で披露されたことで、さらに注目を集めた。話題になったそのYouTube動画のコメント欄には同曲がプレイされたことに対する好意的なコメントが多数投稿されており、フィッシュマンズのメンバーである茂木欣一もインタビューでこの「LONG SEASON」リミックスに刺激を受けたと述べている(※2)。ちなみに「LONG SEASON」を収録した1996年の同名のアルバムは『Rate Your Music』の「史上最高のアルバム(Top albums of all time)」ランキングで27位にランクインしており、こちらも海外で高く評価されている(※3/2024年8月22日現在)。