いきものがかり、世代を超えて響くメッセージ 25周年に向かう2人の“らしさ”を体感できる夏に

 いきものがかりが7月17日、ニューシングル『晴々!/青のなかで』をリリースした。

 2021年夏に2人体制となり、メンバーそれぞれのソロ活動/プロジェクトを経て、2023年5月に新曲「STAR」(映画『銀河鉄道の父』主題歌)を発表し、地元・海老名ビナウォークでフリーライブ『2人体制で“STAR”トしまSHOW!!』も開催……という経緯を辿ってきた2人。昨年12月にリリースされた10thアルバム『〇』は、いきものがかりの新たなキャリアの始まりに相応しい、充実の仕上がりとなった。

 さらに今年2月から5月にかけて、約12年ぶりとなる全国ホールツアーを開催。追加公演『いきものがかりの みなさん、こんにつあー!!2024 〜あなたと!わたしと!みんなで!歌いまSHOW!!〜 横浜にじゅうまる公演』は神奈川・ぴあアリーナMM(5月25日〜26日)で行われたのだが、そのステージは本当に素晴らしかった。アルバム『〇』収録曲を中心に、代表曲、レア曲を含んだセットリスト。プロデューサーでもある本間昭光を中心としたバンドの質の高い演奏。楽曲の世界観を的確に表した映像/照明とサプライズ的な演出。そして何より、楽曲そのものを丁寧に伝えようとする吉岡聖恵(Vo)、水野良樹(Gt/Pf)の姿勢に心を打たれた。会場には小さな子供から年配の方まで幅広い年齢層のオーディエンスが足を運び、いきものがかりの世代・時代を超えた魅力を改めて証明してみせた。

 7月17日にリリースされたニューシングル『晴々!/青のなかで』からも、現在の2人の充実ぶりが伝わってくる。「晴々!」(TVアニメ『天穂のサクナヒメ』オープニングテーマ)、「青のなかで」(「三ツ矢サイダー」テーマソング)の両A面による本作の特徴は、これまで積み上げてきた“らしさ”をさらにアップデートしようとする姿勢だろう。

いきものがかり「晴々!」(TVアニメ「天穂のサクナヒメ」オープニングテーマ) ミュージックビデオ

 「晴々!」(作詞・作曲:水野良樹/編曲:江口亮/弦編曲:江口亮、石塚徹)は、瑞々しいピアノの音色、華やかなストリングスを交えたバンドサウンドを中心としたアッパーチューン。〈晴々!/咲かせてよ 雨上がりの空に〉という冒頭のフレーズが聴こえてきた瞬間、心と身体が解放されていくような心地よい感覚に包まれる。まさに“晴々”という言葉がぴったりなメロディ、そして、歌っているときの生き生きとした笑顔が浮かんでくるようなボーカルを含め、「これぞ、いきものがかりの元気ソング!」と楽しくなってしまう。

 〈もっと強く もっと弱く 生き抜け〉もこの曲のポイントだろう。大切なのは強さだけではない。自分の弱さも認めながら、しなやかに進んでいってほしいーーこのフレーズには、そんな真摯なメッセージが確かに宿っている。アニメ『天穂のサクナヒメ』の主人公・サクナヒメのイメージとも重なっているこの一節は、リスナーそれぞれの生活や状況ともつながり、しっかりと背中を押してくれるはずだ。

関連記事