chelmico、『ati natu ep』で届ける“暑い夏”を楽しくする3曲 新たなチームでの挑戦も

chelmico、“暑い夏”に届ける3曲

 chelmicoによる「夏曲」の新曲3曲が収められた最新EP『ati natu ep』がリリースされた。「暑い夏=あてぃ・なとぅ」と名付けられた本作は、今回初のコラボとなるやじまたくま(ザ・おめでたズ)がプロデュースを手掛け、DENIMSがバンド演奏で参加した「ひと夏の思い出」をつづる爽やかで切ない「Sunburn」や、神戸出身のヒップホップユニット・Neibissとのマイクリレーが楽しい「Summer course feat. Neibiss」、そしてアルバム『gokigen』(2022年)収録の「ISOGA♡PEACH」でもコラボしたトラックメイカー・Tomgggと再びタッグを組んだ、chelmico史上最もセクシーな一曲「Watermelon」と、さまざまなタイプの夏曲が収録されている。

 インタビューでは、RachelとMamikoが楽曲に込めた思いや制作エピソードはもちろん、今後のツアーへの意気込みや、新たな制作チームと共に取り組んだ想いについて語り合ってもらった。(黒田隆憲)

“ひと夏の思い出”と“近況報告”を詰め込んだ「Sunburn」

ーーまず1曲目「Sunburn」はザ・おめでたズのやじまたくまさんがプロデュースを手掛け、DENIMSの演奏を後から加えているんですよね。もともとやじまさんやDENIMSとは交流があったんですか?

Mamiko:いえ、ザ・おめでたズとは数回対バンしたことはあったんですけど、お会いしたのは今回が初めてでした。chelmicoは今回から制作チームが変わって、新しいディレクターさんがやじまさんと交流があったみたいで、私たちに合うかも? ということで紹介してもらいました。DENIMSとは結構前から交流があって、打ち上げの席で飲んだこともあったんです。その時とかに、「いつか一緒に曲やりたいね」みたいなことを話していました。なので、今回いい機会だなと思ってオファーしたという経緯です。

ーーやじまさんには、どんなトラックをリクエストしましたか?

Mamiko:「イントロが印象的な、夏の始まりを思い返すような爽やかな雰囲気でお願いします」とお伝えしたところ、上がってきたデモが、爽やかさはありつつも予想以上に切ない感じだったので、そこを意識しながら歌詞を書いていったら、ああいう感じに仕上がりました。

ーーMamikoさんの〈いつかまた会えたらで終わったテキスト 波の泡になって消えていくよ〉というフレーズや、Rachelさんの〈無限に感じるワンシーンだったから無下にしてきちゃったかな〉というフレーズがとても印象的です。

Mamiko:ありがとうございます。「想いを馳せる」「ひと夏の思い出」みたいな、ちょっとラブソング的な要素を入れたくて最初のヴァースはそんな感じになりました。

Rachel:ちょっと海っぽいというか、潮風を感じさせるリリックになったのは、やっぱりトラックに引っ張られたところがあったかなと。〈2人ぐったり寝転がった堤防に 置き去りのiPhone〉というフレーズがあるんですけど、これは実際にまみちゃん(Mamiko)と一緒に海に行った時のエピソードを入れてます。で、2ヴァース目は近況報告というか、今の私たちを伝える内容になっていますね。

chelmicoインタビュー写真(撮影=是永日和)
Rachel
chelmicoインタビュー写真(撮影=是永日和)
Mamiko

ーーMamikoさんの、〈あの時言ってくれた一言のおかげ〉〈音楽やり続ける意味 シミだらけになっても短い夏を描く〉というフレーズはどんなふうに思いついたのですか?

Mamiko:そこもリアル体験談ですね。デビュー前、私たちに「(音源)出しなよ!」「ちゃんとやりな?」みたいに叱咤激励をしてくださった人がいて。その一言で、私自身「やるぞ!」と火がついたところがあってここまでやってこられたと思うんです。当時は「なにくそ!」みたいな気持ちもあったんですけど(笑)、時を経て感謝を込めたフレーズになっています。

ーーRachelさんの〈いつか君の街に届いて欲しいから 相も変わらずラップしてます〉というフレーズも、実際にそういう対象がいるのですか?

Rachel:今はもう連絡も取り合わなくなってしまったけど、今の自分たちがやっていることが風の噂でも届いたらいいなと思う人はいます。それこそchelmico結成のきっかけになった、私たち2人をつなげてくれたカメラマンの方とか。いまだに「応援してます」みたいなメッセージをくれる時がたまにあって、ずっと見守ってくれてるんだなって。

Mamiko:ラッパーのGOMESSくんとかもそうだよね。今は連絡を取り合ってないけど、曲が届いてるといいなって思います。

Neibissとのコラボは「RIP SLYMEが教科書」

chelmicoインタビュー写真(撮影=是永日和)

ーー2曲目の「Summer course feat. Neibiss」は、どんなふうに作っていきましたか?

Mamiko:これはもうマイクリレーがしたくて作った曲です(笑)。

Rachel:「ライブで盛り上がる曲を作ろう!」って。

Mamiko:Neibissの2人のことはすごく好きだし、RIP SLYMEが大好きってところも共通しているので「なんか一緒に作りたいよね」って前から話してて。「ちょっとマイクリレーやらない?」とオファーしたら「いいっすよ」って返ってきました。後輩ムーブで「姉さん」みたいに呼んでくれる人たち、彼ら以外なかなかいないから嬉しくて(笑)。実際の制作もめちゃくちゃ楽しかったですね。速攻でratiffくんがトラックを上げてきてくれて。

Rachel:確か電話した翌日とかじゃない?

Mamiko:そうそう。で、カラオケルームに4人で集まってリリックを考えました(笑)。

ーーNeibissとはもともと知り合いだったんですね?

Mamiko:はい。「可愛いやつ出てきた!」「こういう曲を聴きたかったんだよ」って思っていました(笑)。

Rachel:今、なかなかこういう感じのヒップホップをやっている人たちがいないから嬉しかったんです。2人のバランスも最高で。『KOBE MELLOW CRUISE』という神戸のフェスに出た時も、終わった後に行きつけの中華屋さんに連れて行ってくれたり、その後クラブへ行ったり。その時のことが歌詞になってていいなぁと。私も思い出しながら歌詞を書きました。

ーー〈たった3分間のサマーコース〉〈フロアがクラスルーム〉というフレーズも出てくるし、学校の教室でわちゃわちゃやっているような楽しげな雰囲気が伝わってきますね。途中でメロウになるところもグッときます。

Mamiko:ちょっと大人っぽい要素を入れるのも、やっぱり「RIP SLYMEが教科書」という感じですね。ratiffくんがまさにそういう展開を作ってくれて、割とすぐトップラインも思いつきました。

Rachel:この曲、まみちゃんが最初にヴァースを上げてきたんですけど、最初に予定していたテーマと全然違ってたんです。でも、実際にあった出来事を色々盛り込んでて「めっちゃいい!」ってなりました。フロウも超かっこいいし、まみちゃんソロアルバム(2ndソロアルバム『mukuge』6月26日リリース)を作りながら、こんなこともできるんだよなって。改めてすごいなと思いました。

Mamiko:私もRachelの、2回し目のヴァースは〈ID代わりに見せるwiki〉とか全部パンチラインだなと思ってますね。

Rachel:これも実話で、クラブに行った時にお財布を落としちゃって身分証がなくて、スマホでWikipediaを検索して「chelmico」のところを見せて入ったっていう。「もう30歳だし知り合いも中にいるんで大丈夫です」って(笑)。

chelmicoインタビュー写真(撮影=是永日和)

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