鈴木真海子、気心の知れた仲間たちとの音楽空間 『mukuge』恵比寿ガーデンホール公演

 後半は、バンドメンバーのソロバトルを披露した「空耳」から。息の合ったアンサンブルにフロアから大きな歓声が上がる。ファンとのやり取りで、自分が偶然口にした「どっかの土曜日にインスタライブをやるね!」という言葉をヒントに書き上げたという、その名も「どっかの土曜日」はテンションノートを多用した浮遊感たっぷりのメロディが心地よい。途中、掛け合いのフレーズをオーディエンスと合わせて一体感を高める。さらに、レイドバックしたリズム隊ととびきりクールなエレピのコントラストが「真海子流ネオソウルチューン」とでもいうべきき「judenchu」と、前作『ms』からの楽曲を4曲続けて披露した。

 続く「紀尾井茶房」は、仕事の合間に真海子が偶然入った喫茶店にインスパイアされ出来た曲だ。前作で「山芍薬」を共作したshinobu achihaとともにトイ楽器をふんだんに使用し、ryo takahashiが主にトップラインを担当。テンポが忙しなく変わる、どこか細野晴臣や大滝詠一を思わせるコミカルかつエキゾティックなムードが印象的である。「この日のために買った」と言うグロッケンシュピールを叩きながら歌う真海子の姿に、会場からは大きな声援が飛んだ。

 再び『ms』から「untitled」を、TiMTのギターに乗せてしっとりと歌い上げた後、「ここから少しだけ、ほんの少しだけ(テンションを)上げます」と言って披露したのは、『mukuge』収録のスウィングジャズ曲「からから」。ライブ仕様にアレンジされたパワフルな演奏で、オーディエンスのボルテージもどんどん上がっていく。

 

 沼澤のオーボエをフィーチャーした「秘密の楽園」は、イントロが鳴り響いた瞬間にフロアのあちこちから歓喜の声が上がる。この曲も「5月のうみ」同様、ラップとメロディのコントラストが印象的だった。さらに、ロックなアレンジが施された壮大な「Lazy river」でフロアを沸かし、〈明日世界が終わっても/ずっと一緒にいよう〉というフレーズが印象的な、真海子のレパートリーの中でもひときわストレートで情熱的な歌詞、だけどサウンドは涼しげなラブソング「in a bubble with u」で本編は終了。アンコールでは、「Blue」「Contact」と1stミニアルバム『Deep Green』から2曲をピックアップし、自身の「原点」を確かめる形でこの日のライブを締めくくった。

 chelmicoとソロ名義の活動を行き来しつつ、信頼できる音楽仲間を増やしながらアーティストとして着実に成長し続けている鈴木真海子。彼女の「現在地」を確認するような、充実した夜だった。

鈴木真海子が切り取る日常の情景 心の揺らぎにも向き合った2ndアルバム『mukuge』を語る

chelmicoのMamikoこと鈴木真海子が、2ndソロアルバム『mukuge』を自身の誕生日である6月26日にリリースした。…

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