『ぼざろ』『ガルクラ』などに見るガールズバンド作品の再興──劇中バンド×音楽シーンのクロス現象が鍵に

 近年のアニメシーンにおけるガールズバンド作品への注目度の高さはもはや周知の事実だろう。2022年放送の『ぼっち・ざ・ろっく!』(TOKYO MXほか)に始まり、2023年放送の『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』(TOKYO MX/ABEMA)、そして2024年放送の『ガールズバンドクライ』(TOKYO MXほか)。この潮流に、2010年前後の『けいおん!』シリーズ(TBS系)によるムーブメントや、さらに遡ればアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』(チバテレビほか)内の文化祭ライブシーンが注目を集めた時代を思い起こした人もきっと多いはずだ。

2000年代以降に広がるガールズバンド×アニメの多様化 『けいおん!』~『ぼっち・ざ・ろっく!』に至る歴史を紐解く

この秋から放送スタートしたTVアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』が、回を重ねるごとに高い注目を集めている。同作は、高いギターの腕前を…

 時代は巡る。様々なカルチャーでリバイバル現象が近年勃発する中、いわゆるアニメにおいてもガールズバンド作品の再流行が起こっていると見ていいだろう。だが、過去のブームと異なる点として、今回の注目度の高まりには現実の邦楽バンドシーンとの異文化交流とも呼べる動きが間違いなく大きな要因のひとつとなっている。

 特にブーム牽引の筆頭となった『ぼっち・ざ・ろっく!』は、そのクロスカルチャー要素から人気に大きく火がついた一面もあるだろう。作中の随所に散りばめられたASIAN KUNG-FU GENERATIONにまつわる要素や、八十八ヵ所巡礼や筋肉少女帯をモチーフとした作中バンド。また楽曲制作陣をはじめ、作品内のライブハウス・STARRYにも、現実の下北沢ライブハウスシーンに関する要素が多々盛り込まれている。

【LIVE映像】結束バンド「あのバンド」LIVE at STARRY / 「ぼっち・ざ・ろっく!」劇中曲

 そんな実在バンドや現実の邦楽シーンとのクロス要素に加え、実際のライブハウス事情やバンド/音楽活動におけるリアリティある描写など。それらの要素がアニメファンのみならず、邦楽バンドリスナーや今なおシーンの第一線で活躍するミュージシャンまでをも魅了し、作品は現在の絶大な人気を獲得するに至っている。

 作中バンドである結束バンドの『JAPAN JAM 2024』『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024』といった国内のロックフェスへの出演も、そういったアニメと現実の音楽シーンによるクロスカルチャーを象徴する現象のひとつだろう。

【LIVE映像】「あのバンド」from『結束バンドLIVE-恒星-』|TVアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」劇中曲

 確かに過去のガールズバンドアニメブームの際も、当時一世を風靡した『けいおん!』の作中バンドである放課後ティータイムは、その後も様々な音楽フェスへ出演を果たしている。だが、原則として、やはりその実績はアニメ/アニソンを軸とするイベントが大半だった。その点でも、放課後ティータイムなどと同じく音楽活動を主としない声優によるバンドが本来異なるカルチャーの土俵であるロックフェスへ出演することが、いかに異端な事象かが窺える。しかしそれは同時に、結束バンドがアニメファンのみならず、邦楽バンドリスナーからも支持されている証左でもあるだろう。

 とはいえ、こういった現象は単発ではただの特異点として扱われるにすぎない。その点でも、アニメ『ガールズバンドクライ』作中バンドのトゲナシトゲアリが『ATF25th presents BAYCAMP 2024』出演で音楽フェス進出の面においてそれらに追従しているのは、このようなケースが今後ひとつのスタンダードとなる可能性をより色濃くしたとも言えるだろう。

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