NIKO NIKO TAN TAN、ツアーを完走して迎える新しいシーズン 盟友Tempalayも駆けつけた東京公演

ニコタン、Zepp Shinjuku公演レポ

 ステージ転換中は、8月リリースのメジャー1stアルバム『新喜劇』のジャケットを含め、ニコタンの新しいアートワークのクリエイティブをメンバーのDrug Store Cowboy(映像/モーショングラフィック)と共に手がけるイラストレーターYUGO.が2000年代のロックをメインに切れ味鋭いDJを展開した。

 広いステージにキーボードやサンプラーとドラムセットのみのセッティングが終了すると、シンプルゆえにここから始まるニコタンのライブに期待が高まる。暗転するとLEDビジョンには原始人に扮したOCHANとAnabebe(Dr)が『2001年宇宙の旅』へのオマージュめいた、骨を楽器に見たて音を鳴らして歓喜するモノクロ映像が流された。無邪気だが本質的な彼らの姿勢を窺わせる。そして二人がステージに現れるとアッパーな「IAI」でスタート。両サイドのLEDにも映像が映し出され、いつにも増してDrug Store Cowboyのセンスに包囲される感じだ。ノンストップで「カレイドスコウプ」に繋ぎ、OCHANはハンドマイクで自在に動きながらラップのフロウでもグルーヴを作り、Anabebeのタイトでマシンライクなビートがオーディエンスの足を止まらせない。ノンストップミックスを人力で支えている彼のビートは人力ならではのレンジの広さを誇流。「パラサイト」では鞭のようにしなやかなスネアのサウンドを堅持しつつ、ハードロックもジャズも飲み込んだドラムソロにも自然に接続し、生身の魅力が全開に。EDM的なビルドとドロップがキャッチーに展開する「多分、あれはFly」まで序盤の4曲を切れ目なく披露した。

 ロケットスタートを切ったライブにビビッドに反応するオーディエンスを見て、「やばいね」と嬉しそうなAnabebe。ステージにパワーが還流しているのがリアルにわかる。熱量を保ったまま、切ない夕暮れどきを想起させる演出で儚げな「琥珀」、水のテクスチャが音と映像で迫り、水中を擬似体験させるイントロダクションからエレクトロニックなエレジー「水槽」へと、ミディアムナンバーもキャッチーに展開していく。そして中盤のハイライトはOCHANの「俺らのお祭りソングやります」の一声から始まった「祭囃子鳴っているわ」だった。フュージョンっぽい音像と日本の懐かしい笛の音などが混交し、アフロビートが下支えするユニークなこの曲で、二人の音楽的レンジの広さを実感させてくれた。シンプルなAnabebeのドラムセットが同じものと思えないほど手数・足数の違いでジャズ/フュージョンに接近する凄みと言おうか。

 「調子どうですか? いい感じ? 俺らも!」と、フロアと交歓するOCHAN。昨日はAnabebe宅を訪問し、彼がもう10日も断酒していることを明かす。ライブに向けてストイックに追い込んでいたAnabebeはそのせいなのかなんなのか、目バチコ(ものもらい)ができてしまったせいでサングラスを着用しているという。気合十分だが、二人の会話のテンションは変わらない。OCHANが改めて多忙なTempalayとYUGO.に感謝を述べて後半がスタート。

OCHAN (Vo,Synth)

 目下の新曲で、新しい局面を見せた「No Time To Lose」が、ライブでも言葉の意味が自然に浸透。河原の側道を走り続ける車のアニメーションが曲の印象を大袈裟にしすぎないのも良く、バンドのセンスを外部に預けないことがこういうところで大事になってくるのだなと実感した。続いてはムーディだが、音選びにゲーミングミュージックっぽさもある「MOOD」、人力トライバルテクノな「恍惚と不安」が、音や歌詞の世界観に沿った映像を伴って、さらに没入感を高めていく。ステージ上の二人はパフォーマーではあるけれど、影のフィクサーめいていて、ライブハウスでレイブの擬似体験をしている感覚に。

Anabebe (Dr)

 さらにシームレスにAnabebeの確かな4分キックが鳴らされると、ライブ仕様のノンストップミックスに突入。ライブの鉄板ナンバー「Paradise」で、さらに覚醒モードが加速し、オーケストラヒットをふんだんに盛り込んだエレクトロダンス「WONDER」と続くともう誰も踊ることを止められない。そして、学園ものの若い恋愛ソングでありつつ、ニコタンの関係性も思わせる「同級生」。可愛げのあるテクノチューンな趣きで、ちょっと電気グルーヴを思い出してしまった。完璧じゃないけど、無敵でチャーミングな二人組という意味で。OCHANが「ラストー!」と叫ぶと、アグレッシヴなニコタン流アンセム「Jurassic」に全力をぶち込んで、潔くエンディングはカットアウト。本編が終了した。

 アンコール前の映像ではモノクロの無声映画風の仕立てで、アルバム『新喜劇』に伴う全国6カ所を巡るワンマンツアーを発表。東京と大阪以外は初ワンマンという意欲的な行程だ。大いに沸くファンに対して、改めてOCHANがTempalayに謝辞を述べるとともに、自身が音楽から離れそうになったとき、小原と出会っていなかったらおそらく今はないという意味の発言をした。彼がこの先進んでいくためにも必要な2マンだったことが裏付けられたのだった。

 音源ではfeat.にカメレオン・ライム・ウーピーパイのChi-を迎えた「胸騒ぎ」をOCHAN一人で歌い、ラストはTempalayに贈るという言葉と共に心のこもった「ハナノヨウ」で閉じられた。やり遂げた達成感を全身に漲らせる二人は鳴り止まない拍手に応えて両腕を挙げた。NIKO NIKO TAN TAN、新しいシーズンの始まりである。

■公演情報

NIKO NIKO TAN TAN ONE-MAN TOUR 2024 『新喜劇』
・大 阪:10月18日(金) Music Club JANUS 開場18:30 開演19:00
・名古屋:10月26日(土) 新栄シャングリラ 開場17:00 開演17:30
・福 岡:10月27日(日) BEAT STATION 開場17:00 開演17:30
・北海道:11月4日(月祝) Sound lab mole 開場17:00 開演17:30
・宮 城:11月23日(土祝) 仙台MACANA 開場17:00 開演17:30
・東 京:11月29日(金) LIQUIDROOM 開場18:00 開演19:00
チケット受付はこちら
オフィシャル先行受付(抽選)
受付期間:6月23日20:00-月/7日 23:59
受付URL: https://l-tike.com/nikonikotantan

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