木村カエラ、デビュー20周年で繋いだ“縁” 奥田民生~ME:Iまで巡り巡る人生の出会いを振り返る

木村カエラ、20周年で繋いだ縁

原点を振り返るきっかけになった『PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS』

ーーそして、15周年を迎えた2019年にリリースした10枚目のアルバム『いちご』以降、女性アーティストとコラボするようになりました。これはどんな心境の変化があったんですか。

木村:きっと若いときは、女性アーティストをすごくライバル視していて。周りの女子に勝たないと、みたいな。あまり関わってなかったし、もともと私は女性にも男性に負けない強さがあることを証明したくて歌い始めてるから。とにかく男の人と一緒にやることが自分にとっての大事なバランスだったんだけど、何年もやってきて、自分の中で余裕が生まれたし、強い女性たちと一緒にやる楽しさも知って。15周年を過ぎたあたりから、もう私は私みたいな気持ちができあがっていたし、不安があまりなかったというか。そこからかな、女性のアーティストとやるようになったのは。でも、やっぱり楽しいですよね。

ーーCHARA、AAAMYYY、あいみょん、iriといった女性アーティストと一緒にやってますが、特に印象的な出会いはありましたか?

木村:今、挙げてくれた方たちはみんなそうだけど。AIちゃんはすごいなと思います。ほんとに神様みたいなんだもん。たまにプライベートでもメールをするんだけど、すごく温かい人だなって思いますね。悪いことを絶対に言わないし、彼女と知り合って、話して、嫌な気持ちになる人ってきっと1人もいないと思う。本当に神様にそういう使命を与えられてる人というか。AIちゃんが持ってるものがすごく好きです。一緒にやれて、本当に良かった。ただ、そこに辿り着く直前というか、10周年から15周年くらいまでが、自分の中ではスランプの時期だと思っていて。本当に苦しかった5年間だったんですよね。

ーーそれは歌詞を書くことに対してのスランプですか?

木村:いや、木村カエラとして。もう全てが辛かった。生きるのが辛いのではなく、自分から出てくるものがなくなってしまったことが辛かったんです。それまではずっとアイデアが止まらなかったのに、常にやりたいことばっかりを考えてた人が、止まってしまった時期だったんです。これは悪い意味ではなくて、子供を産んだからだと思う。自分の時間を置いといて、命を守ってたから、自分と向き合ってなくて、おそらく空っぽになってしまったんだと思うんですよね。

ーーそれは、仕方のないことではありますよね。

木村:目の前に大切なものがあったから、しょうがないなと思ったんだけど。これまでは、例えば、こういう服を着てライブがしたいみたいなアイデアが常に出てきていた。でも、その時期は何にも浮かばなくなって。なんでもいいや、別に……みたいな感じになっちゃったときに、歌に失礼だし、お客さんに失礼だと思ったんですよ。その時期に1回やめようと思ったんだけど、タイミングよく、絵本を書きませんかというお話をいただいて。本当に真っ白な紙から、自分で黒い線を書いて、ここが赤に見えたら赤に塗ろうみたいな、全部自分の直感で絵を描くという作業をリハビリみたいにやって。その頃にあいみょんに出会ったんです。

ーーあいみょんの曲は、カエラさんの楽曲としては珍しく、歌詞も彼女が描いてます。

木村:元々歌詞は私が書くつもりだったんだけど、あいみょんは歌詞と歌が同時に出るから、歌詞も書きたいと言ってくれて。ただ、私も歌詞を書いてる人間だから、書いてほしいことを伝えたんですね。今迷っているという話をして。歳を重ねながら葛藤している今の私をありのままの形で歌いたいと伝えた上で作ってくれたのが「Continue」だったんです。そこで、「あ、これは頑張らなきゃ駄目だ」と思って、葛藤から抜け出せた感覚がありました。だから、あいみょんとの出会いもすごく大事ですね。あのときにあの歌詞を書いてくれたおかげで、自分が思っていたネガティブなことが少し吹っ切れました。

ーーそして、直近の話で言うと、オーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS』の国民プロデューサー代表として、デビューを目指す子たちを見守るという経験をしてます。

木村:原点に戻ることができましたね。自分が夢を追いかけてきたときのことをものすごく重ね合わせながら彼女たちを見ていて。こういうときはネガティブな気持ちになるよなと思うと、見事にみんなそうなっていく。私もこの悩みは知ってるって。だから、それを全てサポートしてあげないとと思いながら参加していました。彼女たちが全力だから、自分も全力で向き合わなければいけないと思って。20周年を目前に、自分自身が夢を追いかけてたときのことを思い出させてもらえたのは、すごくいい機会でしたね。「そうだ、私、歌が好きなんだ」とか、「あのときの気持ちはこうだった」っていうのがすごく蘇ってきました。

ーーこれからはどう考えてますか。「CIRCLE」では〈デアイ ワカレ クリカエシ/キット カギヲアケル〉と歌っていますが、どんな扉の鍵を開けていきたいですか。

木村:とにかく、自分を信じていいんだなみたいな感覚があります。今までやってきたことを踏まえた上で、完全にゼロというか、新しいことをしたい、新たにスタートしたいという気持ちもあって。あとは、やっぱり今は感謝の気持ちが強いかな。20周年は自分にとっての新しいスタートだけど、これまで出会ってくれた人たちがいたからこそ今の私がいる。ほぼ私の力じゃないんですね。私は好きなことをやってきただけ。だからもう、全員に感謝を伝えたいし、たくさん喧嘩した人とのわだかまりも全部取っておこうと思ってて。人の縁って、ずっとぐるぐる回るものだと思うんですよ。誰かを思ったら、その人からまた返ってきて、全てがぐるぐる回ってるっていう考えがあって。繋がっていく人とは自然に繋がっていくし、会えなくなってしまった人のことは心の中で大事にしていればいいと思う。その人が幸せであればいいなって自分の中で思えていればいいんだと思うし、これからも、この人といると気持ちいいなとか、この人といると楽しいな、力をもらえるなって思う人といるべきだし、そういう方々とたくさん出会っていきたいですね。

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