VΔLZ 弦月藤士郎・長尾景・甲斐田晴 1万字インタビュー 三者三様の想いが詰まった『三華の樂』制作を語り尽くす

“VΔLZらしさ”を念頭に置いた楽曲制作

【オリジナル楽曲】VΔLZ - SHOOTING DELTA(VΔLZ 1st LIVE「一唱入魂」Special Edit Ver.)

ーーそうやってVΔLZとしての活動ビジョンがさらに広がっていったわけですね。その1stライブで「SHOOTING DELTA」や「No Reason.」といった新曲を披露されましたが、VΔLZとしての楽曲を制作するときはどんなことを意識していますか?

甲斐田:「VΔLZらしさ」というのが自分の中では大きいです。僕らは割と平坦ではない道を歩いてきた部分があるので、そういう要素をポジティブでもネガティブでもいいので楽曲に散りばめたいと思っていて。例えばライブ後に発表した「扉」はポジティブ方面の曲ですが、「No Reason.」はがむしゃらにやっている感じがVΔLZらしくていいなと思っていて。あと自分が作詞する場合、弦月と長尾が「これは自分のことかな?」と感じてくれたら嬉しいなと思いながら制作しています。

長尾:俺は逆に2人が何も考えないで楽曲を作るなんて絶対にないから、「これはどういう意味だろう?」ということをずっと考えながら楽曲と向き合ってレコーディングしていますね。やっぱり3人曲はそういうことを考えるよね。

ーー3人で歌う意味も含めて制作されているんですね。

甲斐田:VΔLZの楽曲ってVΔLZメンバーが歌う事前提な部分が強くて。「浮世の演舞」はまさにそうで、世界観を含めて歌った時にVΔLZっぽさみたいなものを一番出せるのはVΔLZなのかなと。言葉にするのが難しい話なんですけど(笑)。

弦月:キャラソンを他のキャラが歌う、みたいな感じになるのかも。

長尾:完全にオーダーメイドで作られてるからね。

VΔLZ - No Reason.【オリジナル楽曲】

ーー自分たち以外の誰かに楽曲を作ってもらう場合も、VΔLZらしさを意識して作ってもらうわけですか?

甲斐田:はい。例えば今回のミニアルバムでは、じんさんに「SOUP」という楽曲を書き下ろしてもらったのですが、曲を作ってもらう前に自分たちの考えを長時間ヒアリングしていただいて、パーソナルに沿ったものを作ってもらいました。他にも「DAY BY DAY」は日常を切り取ったような楽曲なんですけど、それも「VΔLZはこういうことするだろうな」という内容になっていて。VΔLZらしくない感じは歌詞や曲調にも反映されないように作ってもらっています。

ーー1stミニアルバム『三華の樂(さんかのがく)』には、じんさんのほかにも豪華クリエイター陣が参加した全7曲を収録しています。お三方それぞれのオススメ、お気に入り曲を教えていただけますでしょうか。

長尾:俺は「ムーンウォーカーズ」ですね。この3人の中だと俺の声質はちょっと違うんですけど、もしかしたら俺の声に宛てて作ってくれたんじゃないかな?と思うくらい歌いやすくて。サビが本当に気持ち良くて「みんなも一緒に歌おう!」って思うし、(歌を)録るのがめっちゃ楽しかったです(笑)。

甲斐田:自分が入れ替わりで収録だったんですけど、終わった後、めっちゃ楽しそうな顔してたよな(笑)。長尾は太めの声質で腹から声が出ている感じというか、押し上げるようなパワーがあるので、それがこの曲にハマったんだと思います。

ーーパワフルかつダークな雰囲気のアップナンバーですが、皆さんの歌声からはいろんなニュアンスが感じられました。

甲斐田:たしかに。サビのメロディがかなり跳躍するので難易度が高い曲なんですけど、疾走感がありつつもクールさを維持する雰囲気を出したくて、そういうニュアンスを上手く作り上げられた気がしています。

長尾:サビの中だけですら、歌い上げとクールさの両方を出し入れして表現しないといけないっていう。

甲斐田:サビの“僕ら流星”という歌詞はハモリが3声なのですが、僕が担当している上のハモが本当に高くて、ファルセットじゃないと出せないようなキーだったんですよ。でもそれだとパワー感が出ないので、無理やり地声で歌いましたね。青筋が立っているんじゃないかというくらいでした(笑)。

弦月:この楽曲を書いてくださったbuzzGさんは、それこそボカロシーンの最前線で活躍している方で、もともと“ダークなサウンド”という枠組みだけが決まっていたときに、甲斐田と「buzzGさんにお願いできるといいよね」という話をしていたんですよ。buzzGさんらしいダークでヘビーなサウンドだし、それだけでないクールさも感じさせる“陰っている光”のような楽曲で、「みんなで歌う」というよりも各々が色を出して歌えるところが楽しかったです。

甲斐田:Aメロで僕らの歌を左右に振っていただいたり、いろんなアプローチが入っていて飽きない楽曲になっていると思います。

ーー弦月さんはどの曲がお気に入りですか?

弦月:僕は1曲目の「Treasure Believer」ですね。大好きなfhànaの佐藤(純一)さんに楽曲を書いていただいたのですが、ミニアルバムのオープニングでありつつ、自分の中ではエンディング感もある楽曲だなと感じていて。明るい歌詞だし、日常のいたるところに大事なものがあることが描かれていて、本当に「ワンダフル!」って絶賛したくなる曲調と歌詞なんですけど、ちょっと寂しさや寂寥感も感じさせるところがあるんですよね。それこそVΔLZの歩みも、幸せなことと乗り越えなくてはいけないつらいことの両方がたくさんあったけど、そういうものを全部抱えて走って行かないといけないんだなっていう。そういう気持ちを簡潔かつ包み込むように表現してくれていて、最後はネバーエンディング感があるところも素敵な楽曲だと思います。

甲斐田:fhànaさんが歌っていてもおかしくないくらい、本当に佐藤さんらしい楽曲で、途中の転調しまくるところもそうですし、終わり方もすごくfhànaさんっぽいんですよね。実はANYCOLORの制作チームから、このアウトロを変えてもらう案が出ていたのですが、「いやいや、これがfhànaさんらしさなので!」ってそのままにしてもらいました(笑)。

ーークリエイター側に対する愛情も深いんですね。

甲斐田:楽曲は作ってくださる方にとって子供みたいなものだと思いますし、作曲家さんや編曲家さんに「こうしたかったんだけどな……」という気持ちをあまり持ってほしくなくて。もちろん楽曲のコンセプトや雰囲気に沿ったものにするのが前提のもとですが、やっぱり一緒に作っているので、そういう部分は大事にしたいですね。

弦月:自分たちらしさを出しつつ、作詞家さん・作曲家さん・編曲家さんの色も出していただいて、それのマリアージュによってどの楽曲も飛ばすことなく「聴きたい!」と思ってもらえる作品にする。そこは今回のミニアルバムのコンセプトのひとつだと思います。

ーー甲斐田さんのおすすめの楽曲はどれでしょう?

甲斐田:1曲選ぶのが難しくて迷うのですが、今回は「SOUP」を挙げさせてください!さっきお話しした通り、この曲はじんさんに莫大な時間をかけてヒアリングしてもらったうえで作っていただいて、僕が一番好きな「作家さんにパーソナルな部分とどういう楽曲にしたいかをしっかりと聞いてもらったうえで自由に曲を作っていただく」という制作をすごく体現できた曲になりました。ただ、デモが届いたとき、サビが3声になっていたことは本当に驚きました。「これはライブで歌うのが大変だよ……」と思って(笑)。

弦月:びっくりしたよね(笑)。

長尾:やってくれたよなあ(笑)。でもすごくいい曲だよ。

甲斐田:逆に言うと「VΔLZならこの曲もライブで歌えるでしょ」という、じんさんからの信頼や評価を感じられて嬉しかったですね。レコーディングもハモやコーラスを含め大量に録ったので大変で。それと歌割りもじんさんが考えてくれたんですけど、ラスサビ前の“そうだね 別に晴れなくても良かったよ”という歌詞は僕が歌うパートになっていて、自分が“晴”という名前なので粋だなあと思いましたね。

長尾:この曲は歌詞カードを見ながら聴いてほしいですね。2人が“どうして同じ言葉で泣いたんだろう”と歌っているところで、俺は“どうして僕は泣いたんだろう”と歌っていたり、追っかけもあるので。なんなら楽曲を聴く前に歌詞を読んでから聴いてもいいくらい、歌詞も大事に楽しんでもらえればと思います。

弦月:逆に楽曲を先に聴いて、自分の聴こえ方を楽しんだ後に、歌詞カードを見て答え合わせするのもいいだろうし、いろんな楽しみ方ができるよね。この楽曲は個人にクローズアップしつつ、VΔLZ全体のことも描いた歌詞だと感じていて。VΔLZに対する解像度がすごく高い。

長尾:俺も「じんさんってVΔLZの4人目のメンバーだったっけ?」って思った(笑)。

甲斐田:じんさんはすごく感情が豊かで、いろんなことに対していろんな感情を持つ方だと思うし、それが色濃く出た曲だと思います。ぜひ大学のアカペラサークルとかでこの楽曲を歌ってほしいですね。

長尾:たしかに合いそう(笑)。

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