VΔLZ 弦月藤士郎・長尾景・甲斐田晴 1万字インタビュー 三者三様の想いが詰まった『三華の樂』制作を語り尽くす

VΔLZ ロングインタビュー

 弦月藤士郎、長尾景、甲斐田晴によるユニット VΔLZが、初のミニアルバム『三華の樂』(さんかのがく)をリリースした。同作には、VΔLZ公式YouTubeチャンネルにて展開中のストーリーコンテンツ「桜魔大戦譚 ~相対するモノたちへ~」テーマソング「黎明の轍」をはじめ、DOES 氏原ワタルやfhàna 佐藤純一、じんなど豪華制作陣の提供曲、メンバー自らが作詞作曲した曲を含めた全7曲が収録されている。

 メンバーそれぞれがバーチャルライバーとしてソロ活動を行うVΔLZだが、音楽活動においては三者三様の歌声でジャンルレスな楽曲を表現。細かなディテールにまでこだわり抜いて制作されたという『三華の樂』には、VΔLZの歌の魅力はもちろん、彼らの歩んできた歴史、エモーショナルな心情までが詰め込められている。

 本インタビューでは、それぞれのルーツや『三華の樂』の制作について話を聞いた。彼らがどれほど真摯に音楽と向き合い、一つひとつの楽曲を大切に作り上げていったのか。作品への並々ならぬ思いを体感してほしい。(編集部)【最終ページに読者プレゼントあり】

VΔLZに対する想いが強くなった1stライブ『一唱入魂』

VΔLZ - 浮世の演舞(VΔLZ 1st LIVE 『一唱入魂』Special Edit Ver.)

ーー最初に各メンバーの他己紹介をお願いしたく、それぞれにキャッチコピーを付けていただけますでしょうか。

甲斐田晴(以下、甲斐田):いきなり大喜利かあ(笑)。まず弦月は博識という共通認識がありつつ、暴走し始めると止められないところがあるんですよね。一度スイッチが入るとずっとしゃべり続けるタイプで。

長尾景(以下、長尾):自分で楽曲を作るときも、ノッているときは1日で作ってくるけど、ノッていないときはマジで全然あがってこなかったりして。推進力があるときとないときの差がすごくある。

甲斐田:弦月をひと言で表すなら“博識暴走特急”ですかね。「きかんしゃトーマス」のゴードンみたいになっちゃったけど(笑)。

弦月藤士郎(以下、弦月):半褒め・半けなしみたいなのはやめてよ(笑)。

甲斐田:長尾は性格や話し方的に脳筋に思われがちなんですけど、実は理論派なんです。ファンの皆さんもそういうギャップが好きなのかなと思っていて。

弦月:エンタメ脳筋みたいなところがあるよね(笑)。あと行動に移すのが早い。旬をキャッチするのは甲斐田のほうが得意かもしれないけど、企画を形にするスピードとか、どのアプローチが一番近道かを考えることに長けていて。「こうしたらおもしろくなるのでは?」という思考の回転が速いから、瞬発力もあるし、かつロジカルに動けるっていう。

甲斐田:フットワークが軽いので“フッ軽ロジカル脳筋”かな。

長尾:それは“ロジカル”と“脳筋”のどっちなんだ?(笑)。まあ、大体合ってる気がするけど脳筋だけは納得いかないなあ。

甲斐田:いや、そういう部分はあるよ。

弦月:意図的に脳筋したほうがおもしろい場面でスイッチできるイメージがある。

長尾:なるほどね。甲斐田も弦月と同じで“暴走列車”なところがあって。弦月がずっとアクセル踏みっぱなしだとしたら、甲斐田は最初は慎重なんだけど、だんだん早くなって止まらなくなるんですよね。楽しくなってきちゃうと止まるに止まれなくなる。

弦月:たしかに。等加速度直線運動みたいなところはあるかもしれない(笑)。

長尾:ただ“キャパシティお化け”でもあるので、やりたいことが5つくらいあったら、それを同時進行で進めていける力がある。

甲斐田:まあ、ひいひい言ってるんですけどね...…(笑)。

弦月:自分で推進力を付けるのが上手いから、進みたいと思ったら自分で石炭を投下して、エンジンを燃やしていくみたいな。だから“力(ちから)”とか“〇〇力(まるまるりょく)”みたいなイメージがある。“〇〇”のところにいろんな単語を当てはめられるくらい、どこに行ってもパワーを出してくれるので。

長尾:俺はそこにサブタイトルで“(ちょっと休んでね)”って付けてあげたいよ(笑)。

甲斐田:結果、ユニット内に“脳筋”と“力”と“暴走列車”が揃っているっていう(笑)。でもエネルギッシュな部分に関しては3人とも共通しているかもしれないですね。

弦月藤士郎
長尾景
甲斐田晴
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ーー皆さんは普段、個人のライバーとして活動されていますが、VΔLZの3人で音楽活動を始めたのにはどんなきっかけがあったのでしょうか。

甲斐田:3人とも歌や楽器、音楽が好きというのが一番大きかったですね。VΔLZとしての音楽活動が動き出したのは、(にじさんじのライバーとして)デビューするときに「みんなで1曲作りたいよね」という話をざっくりとしていたら、弦月がポンと曲を作ってきて、「これはイケるな」ってなったのが始まりで。

長尾:俺もあの瞬間に「俺たちは音楽活動するんだな」って思った。

ーーそれが皆さんのデビュー配信で披露されたVΔLZ初のオリジナル曲「浮世の演舞」(2020年)だったんですね。弦月さんは自分で楽曲を作るほか、さまざまな楽器を演奏できる印象がありますが、どんな音楽がルーツにあるのでしょうか。

弦月:周りの人によると、子供の頃から歌が好きでよく知らない曲を歌っていたらしいんですけど、自分で楽曲を作るようになったのは、ボーカロイドと呼ばれるジャンルの音楽を聴き始めたのがきっかけでした。当時はいろんな人が自由に音楽を作って動画サイトに投稿するのが盛り上がっていて、ソフトも手頃なグレードのものが出て気軽に曲を作れるようになったんですね。その頃、自分と同世代の椎名もたさんというクリエイターの方が大好きで、その人に触発されて自分も曲を作るようになりました。そこからいろんなジャンルを聴くようになって。楽器の演奏に関しては大きくなってから独学で習得したものが大半ですね。

【オリジナル曲】浮世の演舞 -Full ver.-/VΔLZ【甲斐田晴/弦月藤士郎/長尾景/にじさんじ】

ーー甲斐田さんもご自身で作詞・作曲をしたり、ギターの弾き語りもよく披露されています。

甲斐田:僕の音楽のルーツで言うと、母がピアノを弾く人間だったことが大きいですね。休日にピアノを弾いている姿を見たり、横で一緒に歌う経験があったなかで、自分もピアノを習ってみたいと思ったのが、僕の音楽の根幹にあるものです。そこから年を重ねて、10代の頃に『けいおん!』や『Angel Beats!』といった音楽もののアニメや、ボカロや歌い手さんのようなインターネットシーンの音楽が好きになるなかで、バンドや歌をやってみたい気持ちが出てきて。当時、佐香智久さんがメジャーデビューする前に弾き語り配信されていたのを観て、自分もアコギをやりたいと思ったのがギターのルーツです。それと自分が作る楽曲が結局バンドサウンドに寄ってしまうのは、当時聴いていたAqua TimezさんやUVERworldさんの影響が色濃く出ているからだと思います。

ーー長尾さんはどんな音楽がご自身の活動の影響源にありますか?

長尾:最初に音楽に触れたのはロックやバンド系だったのですが、今の自分を形成しているのは、ステージ上の音楽、例えばミュージカルやダンス、表現するうえでの音楽だと思います。音楽自体も自己表現のツールのひとつにすぎなくて、それに付随するダンスや演出、お客さんがどう感じるか、そのすべてを合わせてステージ上で表現するものだと考えていて。その意味でブロードウェイのミュージカルはステージ上のものがすべて連動して動いているのがすごくおもしろくて、刺激を受けています。有名どころで言うと「アラジン」や「ディア・エヴァン・ハンセン」が好きですね。あと最近はK-POPのアイドルがすごいなと思っていて。TikTokで踊ったりするのですが、ダンスのレベルが尋常じゃないと思いますね。Stray Kidsさんをよく聴いています。

ーー長尾さんは昨年、配信の企画でベースの演奏を練習していましたよね。

長尾:ベースはすごくおもしろかったです! 歌を歌うなかで、ベースの音は掴むのが難しいと感じていたのですが、自分で弾いてみたことで、どういう役割があるのかに気付くことができて。弦月と甲斐田はクリエイター気質で楽曲を自分で作るので、自分には拾えていない音が聴こえていることがわかって、世界が広がりましたね。

ーーそんなお三方がVΔLZとしての音楽活動を本格化させたのが、2023年6月9日に開催された初ワンマンライブ『VΔLZ 1st LIVE「一唱入魂」』でした。このライブ以前と以後で、3人での活動に対する意識にどのような変化があったのでしょうか。

長尾:『一唱入魂』より前、デビューしてから3年くらいは、個人の活動に精一杯で、まず自分たちがどういう活動をしていきたいかを模索していたところがあって。それが固まりだしたときに、やっと3人でまとまって活動していこう、という流れができていきました。

甲斐田:ケンカじゃないんですけど、一度、3人で腹を割って話し合ったことがあって、そのときに「VΔLZを本気でやりたいし、一緒に頑張ろう」という話になったんです。それをANYCOLORのスタッフさんたちにも伝えたら、いろいろと手を差し伸べてくれたことがすごく大きくて。「3人でのVΔLZ」から「チームVΔLZ」になったのが、自分が『一唱入魂』前後で感じている変化です。

長尾:あの3人での話し合いはターニングポイントだったと思うな。

弦月:そうだね。

甲斐田:最初に話していた通り自分はキャパシティをオーバーしがちなんですけど、VΔLZの他にも個人や別ユニットでの活動があるなかで、「キャパシティ的にはきついけど、2人が本気でやりたいというのであれば自分も頑張るよ」という話をそのときにして。あの瞬間というのは、3人それぞれ思ったことが違ったと思うんですけど、自分としては覚悟を決めたタイミングでした。

弦月:各々がやりたいことをある程度整理できたタイミングで話し合って、2人の覚悟を改めて確認できたことが大きいと思っていて。それからライブを開催することになったのですが、そうなるとリハや練習で集まる機会が増えて、さらにVΔLZに対する想いが強くなっていきました。みんなで集まって「こういうこともやりたいよね」という話をしていると、どんどんやりたいことが増えていく。そこで大きな目標だけではなく、小目標みたいなものもたくさんできたことで、「今回のライブではキャパ的には難しいから次の機会に」みたいな感じで、みんなのベクトルが同じ方向に向いていって。すごくいい流れでした。

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