THE YELLOW MONKEYが放つ新しい宝石 『Sparkle X』最速試聴会でメンバーが語った“挑戦”の真実
5月10日、THE YELLOW MONKEYが、10枚目のオリジナルアルバム『Sparkle X』(5月29日発売)の最速試聴会&合同メディアインタビューを開催。『Sparkle X』について、また先月27日に開催した東京ドームでのライブについて、メンバー4人が語った。
制作には、のべ5年の年月が費やされたという『Sparkle X』の方向性が見えてきたのは、今回の東京ドーム公演『THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2024 "SHINE ON"』の日程が決まってからだという。「バンド史上に残るライブになったと思う(廣瀬洋一/以下、HEESEY/Ba)、「これまでの東京ドーム公演のなかでいちばん楽しめた」(菊地英二/以下、ANNIE/Dr)、「(観客と)過去イチ一体になれたと思う」(菊地英昭/以下、EMMA/Gt)と、メンバーにとっても思い出深い一夜になった本公演。
吉井和哉(Vo/Gt)にとっては、病気治療後初の本格的なライブだったゆえ、不安もあったと本音を語ったのち、「(こういう)切羽詰まった状態がロックには必要だと思う。これからもっと切羽詰まった人生でいきたい」と笑顔を見せた。バンド最大の逆境を「ロックには必要なこと」と、身をもってポジティブに変換してみせた吉井。この変換の思考はアルバムの楽曲制作にも活かされた。己の声の状態を鑑み、「この声を活かすには自分の得意なところで作るしかない」と、バンドのルーツである70年代〜80年代のロックに原点回帰。「あとはメンバーの演奏で華やかにしてもらいました」と語る。2016年に再結成して以降、“イエモンにとってのロック”が、メンバー間でも度々話題に上がる課題だったと語り、新しいことにもチャレンジしてきた。そんななかで、ロックのフォーマットを見つめ直して、「(自分たちにとっての)ロックの原点」で勝負したのが、10枚目のオリジナルアルバム『Sparkle X』である。
すでにデジタル配信されている収録曲「ホテルニュートリノ」は、スカのビートに挑戦しており、「たしかに、これまでのTHE YELLOW MONKEYにはなかったパターン」と分析しながらも「……と言ってもMadnessですからね(笑)。70年代ですから」と会場を笑わせると、「“これまでやってなかったよね?”みたいな話になって」と、原点回帰することでまだチャレンジしていなかったルーツも出てきた、それが新しさにもなったと、メンバー全員が声を揃えた。
その4人の様子は、まるで学生バンドの放課後のようで、THE YELLOW MONKEYというバンドが、現在非常にいいムードにあることを想像させるに十分だった。吉井が「EMMAの男らしさが出た曲。この独特の男らしさは今後のイエモンにすごく必要」と言ったのは、EMMAが詞曲を手掛けた「Make Over」。アルバムのなかでもシンプルで子どもでも口ずさめるようなポップなメロディが印象的な「ラプソディ」は、吉井が通りすがりの親子の会話のとある言葉から曲のフレーズが浮かんだものの、その言葉があまりにインパクト大で替わる言葉が見つからず、最も歌詞に苦戦した一曲。歌詞が出来上がった際には、「テンション高い感じで“できた!”って」と、吉井がバンドのグループLINEに歓喜の報告をしたエピソードも披露し、取材陣を笑わせた。
彼らの“原点回帰”は、前述したほかにも、アルバム『Sparkle X』に大いなる魅力をもたらしている。メンバー全員のDNAに刷り込まれた共通のルーツは、いい意味で肩の力の抜けた演奏につながり、それぞれがTHE YELLOW MONKEYで音を鳴らすのを楽しんでいることがわかる。ベテランが放つタイトでしなやかなバンドアンサンブルのなかに、嬉々として楽器で会話を楽しむメンバーの姿が浮かんでくるのだ。作品全体を通してリズムが跳ねていることも、そう感じさせる一因だろう。バンドサウンドが楽しそうに弾んでいるのだ。さらにイントロの入り方、アウトロ、曲の終わり方などを聴くと、ギターのネックのスライド音、ベースの弦を触る音、アウトロ終わりでドラムスティックがリム(ドラムの縁)に触れた音なども残っており、実にライブ感がある。東京ドーム公演、すなわち、ライブを目標に制作したゆえに出てきた作品性だとも思うが、その理由はほかにもある。これまでは、何曲かプリプロし、固まってから一日のうちに数曲、場合によっては10曲まとめてレコーディングする方法だったという。これは、一般的なレコーディング行程と言っていいだろう(さすがに一日10曲は過酷だとは思うが)。それが今回は1曲ずつプリプロし、レコーディングしていったのだと言う。もちろんTHE YELLOW MONKEYにとっても初の試みだ。結果論としての初挑戦になったのかもしれないが、この初の試みがサウンドにフレッシュさをもたらしたのだと思う。バンドで音を鳴らす喜び、THE YELLOW MONKEYとして音を鳴らせる嬉しさ、そんな初期衝動が一音一音に滲み出ているのだ。この“彼らの喜び”はきっと聴く人のエネルギーになると思う。