Aile The Shotaが迎えた“新章”のインパクト 鋭利なエネルギーに満ち溢れた会心作『omen』から紐解く
4月19日に新たなEP『omen』を発表したAile The Shota。“予兆”をテーマに制作された4曲は、どれも恐ろしいほど鋭利なエネルギーに満ち溢れ、まさにフルスロットルの会心作と呼ぶにふさわしい。キラキラした魅力を携えた「AURORA TOKIO」でデビューを果たしてから2年余り。BMSGを代表するソロアーティストとして輝きを増す彼に今、何が起こっているのか。
Aile The Shotaが、BE:FIRSTを輩出したオーディション「THE FIRST」の出身であることを知っている人は多いかと思う。審査課題となる楽曲制作やダンスに対しては、元より行っていたアーティスト活動などで培ったスキルをセンスフルに発揮。はたまた審査を共にするチームの息が合わない時は冷静かつ包容力たっぷりに束ねるなど、兄貴分的な技量を備えるメンバーとして一目を置かれていた。そんなAile The Shotaの資質に惚れ込む形で、オーディションの主宰であるSKY-HIは「新しい時代を作る一員になってほしい」と宣言。一人の夢見るチャレンジャーは、グループではなくソロとしてデビューする道へと駒を進めることになる。
先述のデビュー曲「AURORA TOKIO」が象徴するように、Aile The Shotaというアーティストの核にはR&Bやシティポップの系譜を汲んだメロウな感覚がある。そこに、独特の丸みを帯びたボーカルやフロウ、日常の中で生まれる感情を飄々と落とし込んだリリックなどの持ち味が重なることで、まるで日曜の朝のように程よく力の抜けた幸福感が聴き手の心を満たすのだ。その方向性は3rd EPの『LOVEGO』を経て、彼が自らのルーツと話すSoulflexとのセッションが実現した「FANCITY feat. Soulflex」(2023年3月リリース)で一つの完成形を迎えたように思う。
一方で、Aile The Shotaの活動を紐解けば紐解くほど、決して一点にとどまらない人物像がおのずと浮かび上がってくる。作品ごとの所作にしても、メロウな着地こそ重点的に意識はされているものの、ネオソウルにオールドスクール調、トラップR&Bなど引き出しは極めて豊か。それどころか、KNOTT提供によるシンセポップ「IMA」やA.G.Oとの共作ディープハウス「DEEP」など、腕利きのクリエイターを交えてダンスカルチャー全般に訴えかけるようなフロアトラックにも果敢に振り切ってきた。中でも4th EPの『Epilogue』に収録された「Pandora」は、ハードコアテクノの高速ビートにまたがった新機軸で、今までのAile The Shota像をすべて脱ぎ去るようなーーすなわち、自らを容赦なく開放していこうとする彼の確固たる決意が痛いほど感じられた。『Epilogue』はAile The Shotaの第一章の区切りとして発表された作品なのだが、「Pandora」をはじめどの楽曲も自己のシリアスな側面と解像度高く向き合っており、結果的に良い意味での波乱じみた気配を彼にまとわせるターニングポイントとなった。