Ken Yokoyamaが音楽で埋め尽くした2時間 ロックンロールと戯れた『Indian Burn』ツアーファイナル

 圧巻だったのはMCも挟まず9曲連続で駆け抜けた中盤だ。中には30秒で終わるレア曲「Nothin’ But Sausage」やスプリット盤収録曲「Support Your Local」があり、かつてシリーズで続いた「Ricky Punks」も全部入っていた。誰もが知る代表曲ではないが、メンバーにとっては大切な曲。客が求める定番や今すぐ聴かせたい新曲を重視していけば、長いキャリアの中でこぼれ落ちていく曲。ほぼノンストップでそれら9曲を演奏したあと、「別に誰にわかってもらえなくてもいい。そんな高尚なもんじゃない」と言い切り、「でも、まだまだやりてぇなと思った」と語る姿も妙に格好よかった。メッセンジャーとして震災のことを語り続けたかつての姿にも嘘はなかったと思うが、『Indian Burn』を作った今、余計な言葉はまったく必要ないのだろう。なぜなら。

〈Oh,Yeah It’s Alright It’s gonna be OK〉

 新曲の中でも最も強い曲だと自負する「These Magic Words」、「I Won’t Turn Off My Radio」や「Let The Beat Carry On」と同じゾーンに配置されたこの曲は、どこまでも説明不要の歌詞だけで構成されている。ただの楽観ではないことは、彼の大切な仲間がもうこの世にいないこと、その数も一人や二人ではないことを考えれば、いちいち説明されなくても理解できる。それでも、やる。やれる限り、やる。そういう段階に来たから歌える〈It’s Alright〉でもあるだろう。言葉で啓蒙するより大好きなギターを一秒でも掻き鳴らしたいと思うのは当然。あと一曲だけ、と言いながら、結局は時間の許す限り4曲も演奏していたラストは忘れ難い光景になった。悲壮感があったからではない。なんというか、終わり方がやけによかったのだ。

(写真=岸田哲平)

 最初にあと一曲だけ、と語っていたのは、ファンに感謝を伝える「While I’m Still Around」。これが締めでも感動的ではあるが、新作『Indian Burn』を聴いてしまえば、最速ナンバー「Heartbeat Song」も欲しいところだ。ようやくその熱い魂が飛んで来たかと思えば、明るい気持ちで最後は歌ってくれ、とカバー曲「You Are My Sunshine」が登場する。そして最後の最後、本当の締めとなったのはインストの「Indian Burn」なのだ。やけに呑気なGS風のダンスナンバー。しょうもないコーラスに沸きまくるフロアを見ていると、先ほどまでのエモさが、非常にバカバカしくも前向きな気持ちにすり替わっていくのが自分でもよくわかった。言葉じゃない、インストだからできることもある。すかっと笑いながら強く思った。まだまだこのロックンロールと戯れていたい。

Ken Yokoyama オフィシャルサイト
https://kenyokoyama.com/

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